「英語のアウトプット力に自信がない」?それなら、日々の英語学習にスピーキングテストを取り入れるのがおすすめ!『TOEICテストスピーキング/ライティング総合対策』など数々の著作を持つ浅場眞紀子さんが、英語スピーキングテストの種類や特性、テスト対策法を紹介します。
目次
英語学習にスピーキングテストを取り入れよう!
英語学習を頑張っていらっしゃる皆さん、こんにちは。
今回から全6回の連載で、「英語スピーキングテスト活用術」についてさまざまな観点からお話していきたいと思います。
これを読んでいらっしゃる皆さんは、「どうやったら日本にいながら英語力(特にスピーキング力)を上げられるのだろうか」ということに興味をお持ちのことと思います。そして多くの方は、「英語圏に留学したり住んだりすれば、英語を簡単に話せるようになるに違いない」「外資系で働けば、英語で困らなくなるに違いない」と思っていらっしゃるかもしれません。
でも実は、英語(スピーキングも含めて)の本当の上達に「場所」は関係なく、 むしろ日本国内でできることが大変多い ということをこの連載でお伝えしていきたいと思います。
第1回目の今回はまず、「英語圏ではないけれど英語環境(アメリカンスクール)で3年間勉強して」「外資系にも10年間務めた」けれど、スピーキング力がさほど上がったとは思えず、英語環境では常にコンプレックスまみれだった私自身の話からスタートしたいと思います。
私は、「正しい英語力の伸ばし方」という点では、ひどい遠回りをしてやっと今ここにいます。今から学習する皆さんにはそのような遠回りをせず、なるべく最短距離で上達していただきたいと思い、この連載の執筆を決めました。
「100%英語環境=英語ペラペラになれる」は本当?
打ちのめされたアメリカンスクール時代
私は、高校1年の夏に父親の転勤でタイのバンコクに行きました。小学校1年から3年の間も父の仕事の都合でタイの日本人小学校に通っていたので、2度目のタイでした。
高校は義務教育ではないので日本人学校はなく、現地の高校かアメリカンスクール、フレンチスクールの3択でした。
当然、言語が少しは分かる(はずの)アメリカンスクールを選び、当時女子校に通っていた私は「どんな夢のような高校生活だろう」「 すぐに 英語がペラペラになってたくさん友人を作って」と、高校入学までワクワクドキドキと期待に胸を膨らませていました。
日本でそれなりに恵まれた環境で英語学習を頑張っていたので、少し努力すれば すぐに 対応できると思っていました。ところが、私を待ち受けていたのは「聞こえない、分からない」「周りの発話のスピードについていけない」「(理系科目はまだしも)文系科目でのディスカッションに全くついていけない」状況でした。
自信喪失していた私を更に打ちのめしたのは、同じタイミングで入学したヨーロッパ出身の同級生たちの驚くほどの英語の上達ぶりでした。ドイツ人、イタリア人、オランダ人、デンマーク人・・・彼らはほんの数カ月であっという間にネイティブのようになっていってしまいました。
「英語も含むヨーロッパ言語同士は共通の語彙も多く、大変近いので、日本語に比べれば英語に対してずっとアドバンテージがあるのだ」と少しでも知っていたら私の気持ちも違ったかもしれませんが、当時は「自分だけが上達できない」ということにあまりにも落胆してしまい、ほんの数人だけいた日本人の友人たちと一緒にいる時間がだんだんと増えていきました。
そのようなわけで、私は日中100%の英語環境を与えられながら、英語で発言したり、意見を言ったりすることに消極的で、大きな英語コンプレックスを抱いたまま日本の大学に進学しました。すっかり英語に怖気づいていた私は、大学でも英語学習は最低限しかやりませんでした。
外資企業に入社し海外転勤するも、英語への苦手意識は消えず・・・
卒業後は「女性が将来にわたって長くつとめるには外資のほうがよさそうだ」と考えてアメリカの会社に入りました。ただ、日本にある外資系企業なので、一部の社員(特にトップ)だけが外国人で、他はほとんどが日本人でした。毎日の業務は主に日本語で行っていたため、英語を自発的に学習する時間はほぼゼロでした。
その後アメリカに研修と実務のために転勤しましたが、ここでも日々の業務と専門資格の試験勉強に追われ精一杯だったのと、仕事の現場ではある程度の専門用語が使えればなんとか対応できてしまったので、英語自体を基礎から学びなおすということはありませんでした。
このように 「13年近く間ほぼ100%英語環境」だった にもかかわらず 、自分の英語と真剣に向き合わなかったため、話すことに対する苦手意識が拭えず、 (その場の対応力は多少ついたかもしれませんが)「英語力」という意味では甚だ怪しい、というのが実情でした。
英語の資格試験を受けるべき理由
私がついに重い腰を上げ、「 長年のコンプレックスである英語の基本を克服しよう 」と決めたのはそれから更に15年後、日本で3人の子育て真っただ中の専業主婦だった時でした。
自分の英語力を根本から見直し、確実に上達するにはどうすればよいのか、当時の私が自分なりに考えて出した結論が「 英語の資格試験をとにかく受けまくろう 」でした。
理由は単純で、「時間がなかったから」です。3人の子育てや家事などに追われる中で捻出できる時間は、午前中の数時間と家族全員が寝た後の数時間しかありませんでした。
資格試験の利点は、求められる能力の 基準 がはっきりしていること です。ただ 漫然と話したり聞いたりしているだけでは、言語の上達はとても限定的で遅い です。
しかし、資格試験は一般的な英語試験、海外の大学などに入るための英語試験、ビジネスのための英語試験など、目的と求められている能力がはっきりしているので、 英語学習に取り入れることで、自分の努力の方向を 明らかにする ことができます 。
日本のような「英語が外国語である環境」において、時間がない人や効率的に英語力を上げたい人は、(個人指導をしてくれる優秀な指導者につく以外は) 英語資格試験を最大限に活用すべき でしょう。
振り返ってみても、あの時の 判断 は間違っていなかったと思っています。
現在の私は、英検1級(優秀賞)、ケンブリッジ英検CPE、TOEIC Listening & Reading 990(満点)、TOEIC Speaking & Writing 400(満点)、IELTS Speaking 8.0、TOEFL Speaking 28など、多くの英語資格試験の合格証とスコアを持っています。
今はIELTSのSpeakingを8.5に上げたいと学習中です。スコア自体よりも、 これらのスコアを達成する過程で学んだ内容やスキルが今の自分の大きな力になっている と感じています。
まずは「どんな能力を伸ばしたいのか」を決めよう
こういった資格試験は、四技能、もしくは二技能をテストされるものが大半で、スピーキング能力だけを単独で測ってくれるテストは選択肢が非常に限られます。現行では Versant 、 TOEIC Speaking 、 TSST 、 GCAS 、 CASEC SPEAKING 、 E-CAT などがあります。
ほぼ全てのテストを受験したことがありますが、それぞれ目的や試される能力(レベル)はかなり異なっています。
皆さんは「スピーキング力を上げたい」と考えた時に、 「スピーキング力が高い」ということに対してどのようなイメージを持っていらっしゃるでしょうか 。「ペラペラと流ちょうに話す」能力でしょうか、「ディベートなどで相手に勝つ」能力でしょうか、「仕事のプレゼンが人前でできる」能力でしょうか、それとも「きれいな発音で話す」能力でしょうか。
これらの全ては、「スピーキングの能力」の一部です。
そして、四技能のうちで スピーキングは最も複雑な認知能力を求められる技術 だと言ってもよいでしょう。
前述の通り、スピーキングは目指す方向も決めずになんとなく練習しても上達しません。スピーキングのトレーニングは、まず学習者本人が 「どのような内容を」「どれくらいの構文レベルで」「どの程度の語彙を使って」「どの程度流ちょうに」話したいのかを明確に意識するところから始まります 。高い目標を掲げてそれに必要な準備にじっくり時間をかけるのもよいでしょう。また手近なところから目標をクリアしながら最終目標に向けてレベルアップしていくのもよいでしょう。
登山と同じで、山頂に至る道は数知れずあります。その時に マイルストーン=標高をある程度示してくれるものがスピーキングテストのスコア だと考えていただくと 取り組み やすいのではないかと思います。
そして各スピーキングテストはそれぞれその山容が異なります。同じ標高にたどり着くのにも岩登りなのか、ハイキングなのか、トレイルランなのか、手段や対策は異なるでしょう。
ご自身の目標を明確にし、各スピーキングテストで求められる能力をしっかり理解し、必要なものをご自身の学習ルーティンに組み込むことで、日本にいながら英語力をしっかり上げていくことができます 。頑張りましょう!
次回は、 具体的に 各スピーキングテストの特徴や求められている能力について お話したいと思います。
第2回記事は2021年10月6日(水)公開予定!
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浅場眞紀子 慶應義塾大学卒業。コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL)修士号取得。外資企業2社に計10年間勤務後、 ビジネス英語研修会社Q-Leap を愛場吉子と設立。企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスン、グループ研修を手掛けている。共著『TOEICテストスピーキング/ ライティング総合対策』(旺文社)、共著 『話せる英語ドリル300文』 (アルク)など著書多数。
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