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大谷翔平選手が初選出!米誌TIME「世界で最も影響力ある100人」を英語で読む

TIME誌100

@Reuters

アメリカの「TIME」誌が「世界で最も影響力ある100人」の2021年版を発表しました。 100人は「Icons(象徴)」「Pioneers(先駆者)」「Titans(巨人)」「Artists(芸術家)」「Leaders(指導者)」「Innovators( 改革者)」の5つのカテゴリーで発表されています。日本からは「Icons」分野にて、メジャーリーグ、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手が初選出され、またテニスの大坂なおみ選手は3年連続で選ばれています。世界で大きな影響力を持つ日本人の活躍を見てきましょう。

大谷翔平選手を生んだフランケンシュタイン?

アメリカの有力誌TIMEは15日、2021年の「世界で最も影響力のある100人(The 100 Most Influential People of 2021)」を発表しました。

日本人からは、メジャーリーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手や、女子テニスの大坂なおみ選手、さらに、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となった新国立競技場の設計を手掛けた建築家の隈研吾氏が名前を連ねています。

今回が初の選出となった大谷選手を推薦したのはニューヨーク・ヤンキースのレジェンドで、メジャー通算696本塁打を放ったアレックス・ロドリゲス氏。彼は推薦文のなかで、大谷選手を以下のように賞賛しています。

He’s the modern-day Bambino—and yet even Babe Ruth wasn’t stealing 20-plus bases, hitting 40-plus homers and throwing 100 m.p.h. in the same season. Only Shohei can.

彼は現代の「バンビーノ」ですが、あのベーブ・ルースでさえ、一つのシーズン内に20以上の盗塁を決め、40以上の本塁打を打ち、約161キロの速球を投げたりすることはできなかったのです。それができるのは翔平だけです。

童顔であったことから「バンビーノ(坊や)」の愛称で親しまれた、野球の神様ベーブ・ルース。彼でさえ「一つのシーズン内に20以上の盗塁を決め、40以上の本塁打を打ち、161キロの速球を投げたりすることはできなかった」と、野球史における大谷選手の偉大さを綴っています。

1918年レッドソックス時代のベーブ・ルース以来103年ぶりとなる、同一シーズンでの「2桁勝利、2桁本塁打」の快挙が期待されている大谷選手ですが、既に盗塁などの記録も含めると「ベーブ・ルースを越えている選手」と評価している米メディアもあるようです。

先述の推薦文の続く部分では、そんな「神様」をも超える大谷選手の「怪物」っぷりが、“Frankenstein”という単語で描写されているのが興味深いですね。

If you were to Frankenstein every unique talent into one player, you’d get Shohei Ohtani. He has the power of Bryce Harper, the pitching of Max Scherzer and the speed of Trea Turner.

大谷はあらゆるユニークな才能をたったひとりの選手へと合成させたような存在だよね。パワーはブライス・ハーパーで、ピッチングはマックス・シャーザー、スピードはトレイ・ターナーのようだ。

“Frankenstein”といえば、イギリスの小説家であるメアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』に登場する主人公の科学者の名前です。“If you were to”に続く部分に、突如として人物名が登場して困惑した方もいるかもしれませんが、実は“Frankenstein”には、動詞としての用法が存在していることをご存じでしょうか。

生命の謎を解き明かしたいという野心に取り憑かれたフランケンシュタイン博士が、研究の末、墓場から盗み出した死体を使い「理想の人間」を作り出そうとする小説のエピソードが転じて、“Frankenstein”という名前は、今では「~を修繕する、集める、結び付ける」という動詞としての意味をもつようになっています。

パワフルな打撃で有名なブライス・ハーパー選手と、剛腕ピッチングで知られるマックス・シャーザー選手、そしてMLB最速とも言われる俊足トレイ・ターナー選手、この3人をまるで結び付けたような、「理想の選手」として大谷選手は評価されているのですね。

ちなみに、固有名詞が転じて動詞としての意味をもつ例は、英語ではしばしば見られます。例えば、「〔本などから不適切な部分を〕削除する」という意味をもつ“bowdlerize”という言葉は、シェークスピアの作品のなかで道徳的に不品行だと考えた部分に検閲を加えて、"Family Shakespeare"と題して出版したイギリスの医師Thomas Bowdlerの名前に由来しています。

また最近の例では、片付けコンサルタントとして大人気の近藤麻理恵さんから転じて、「(ときめきを感じないもの)を捨てる、片づける」という意味で“Kondo”という言葉が、英語として使用されているのも、同じパターンだと言えますね。

世界をくぎ付けにする大坂なおみ選手

一方で、今年の全豪オープンを制し、東京五輪では最終聖火ランナーを務めた大坂なおみ選手は、2019年から3年連続の選出。推薦文はNFLシアトル・シーホークスの名クォーターバックとして知られるラッセル・ウィルソンが執筆しています。

Naomi Osaka’s humility and dedication to others has been spectacular to watch. It’s incredibly meaningful that she has been able to talk honestly about struggling with her mental health and share with us her vulnerability.

大坂なおみが他者に対して謙虚で献身的であることは、見る人の目をくぎ付けにする。自身が苦しむメンタルヘルスについて正直に語り、弱さを私たちに見せられることは、極めて大きな意味を持っている。

他者に対して謙虚で献身的な姿が、見る人の目をくぎ付けにしていると綴ったウィルソン選手。この背景には、「ブラック・ライブズ・マター」への連帯を示した2020年の全米オープンでのパフォーマンスなど、社会的不公正や人種的不平等の問題の向き合い、正義を求めて戦ってきた彼女の姿勢があります。

さらに、大坂なおみ選手がメンタルヘルスの問題に悩まされてきたことを打ち明けたことについては、 「自身が苦しむ精神状況を正直に語り、弱さ(vulnerability)を私たちに見せられることは、極めて大きな意味をもっている」 と、リスペクトの念を示しています。

ここでウィルソン選手が言及している“vulnerability”という概念は近年、さまざまな場面で見ることが増えた言葉ですが、これをいわゆる「強さ(strongness)」の対義語である「弱さ(weakness)」と混同しないようにしておきましょう。

“vulnerability”は、日本語に訳すのが難しい言葉ですが、しばしば「脆弱性(ぜいじゃくせい)」や「傷つきやすさ」とも訳されます。この語には、人間が不可避的に持たざるを得ないような「もろさ」という含意があり、そこから転じて、このような本来的な自己の弱さから目をそらさずに向き合うことは、勇気ある行為なのだという価値観が生まれてきます。

したがって、ここでウィルソン選手は、大坂選手の苦しみは彼女が勇気をもって困難と闘い続けている証拠であり、また苦しみを隠さない彼女の姿は、多くの人に訴えかけ、社会を変えていく力となるだろうと賞賛を送っているのです。

その他にも、隈研吾氏やヘンリー王子夫妻、ミュージシャンのビリー・アイリッシュ、テスラCEOのイーロン・マスク、俳優のケイト・ウィンスレットなどなど、「世界で最も影響力ある100人」に選ばれた人々に対する推薦文は、TIME誌のウェブサイトから確認できます。皆さんも気になる人がいれば、ぜひのぞいてみてくださいね。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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