Black Lives Matter を強く訴えるラップ・ソング【EJ’s Playlist】

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「今聴いてほしいアーティスト」と関連する楽曲を音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと合わせて渡辺志保さんが解説します。

今月の1曲

YGの「FTP」を紹介します。

FTP [Explicit]

FTP [Explicit]

  • 発売日: 2020/06/03
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

YG(Young Gangstaの頭文字)は、2009年に「Toot It and Boot It」でデビュー。今年5月に警察官に殺害されたジョージ・フロイド氏の事件を受けて、警察を痛烈に批判したメッセージソング「FTP」がBlack Lives Matter ムーブメントで話題となっている。

警察を痛烈に批判したメッセージソング

2020年5月25日、アメリカ、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性であるジョージ・フロイド氏が白人警察官によってその命を奪われるという事件が起こった。偽札を使用した容疑をかけられたフロイド氏は、事件現場にいた警察官の膝で首元を押さえ付けられ、I can’t breathe.(息ができない)と訴えながら公共の道路の上で死に絶えたのだった。それ以降、#BlackLivesMatter(黒人の命は大切だ)というハッシュタグを用い、このフレーズをスローガンとした抗議運動が全米に、そして全世界に広がりを見せている。

このフレーズはもともと2012年に黒人男子高校生だったトレイボン・マーティン氏が地域の自警団に射殺された事件に端を発して作られたもの。人種差別は今も色濃くアメリカ社会に暗い影を落としているということが浮き彫りになった事件でもあった。また、こうした事件を受け、現状に抗議するラップ・ソングがいくつも発表された。西海岸を拠点とするラッパーのYGは、2016年にドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが接戦を繰り広げた大統領選の際に「FDT」という楽曲を発表し、当時は候補者だったトランプ氏を痛烈に批判して注目を集めた。今回は警察官への批判を込めた「FTP」を発表(タイトルが何の頭文字を表しているかは、曲のサビを聴いて確かめてみてほしい)。MVには自らが率いた10万人規模のデモの様子を収めた映像を用いた。

また、若手ラッパーのリル・ベイビーも「白や黒だけの話じゃない、もっと大きな問題だ。ここから始めなきゃ」と「The Bigger Picture」という新曲の中で語ってみせた。そして1989年に「Fight The Power」を発表したパブリック・エネミーは、ナズやラプソディーらを招き、その内容を刷新した2020年版を音楽アワードの舞台で披露。原曲から30年以上が経過しても事態が改善されていないことを憂い、力強く問題提議してみせたのだった。

Black Lives Matterを受けて発表された曲4選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。

  1. The Bigger Picture by Lil Baby
  2. Perfect Way To Die by Alicia Keys
  3. I Can’t Breathe by H.E.R.
  4. Pig Feet by Terrace Martin feat. Denzel Curry, Daylyt, Kamasi Washington, & G Perico

文:渡辺志保(わたなべ・しほ)

音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビュー経験もあり。block.fm『INSIDE OUT』をはじめ、ラジオMCとしても活躍中。

編集:ENGLISH JOURNAL編集部

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年10号に掲載した記事を再編集したものです。