教育のあり方を変革するAI学習システム?話題の「atama+」を徹底取材!

教育のあり方を変革するAI学習システム?話題の「atama+」を徹底取材!

AI(人工知能)を駆使した学習サービス「atama+」(アタマプラス)は、駿台・Z会といった大手を含め1900以上の塾・予備校に導入され話題を呼んでいます。現在のところ学習塾のみに向けたサービスということですが、生徒のつまずきの根本原因を迅速に把握し、弱点を克服するための的確なカリキュラムを提案してくれるというAIがとても気になる!ということで、atama plus代表取締役の稲田大輔さんにお話を伺いました。

atama+はどのように生徒の「弱点」を見つけるのか

―atama+とはどのようなサービスでしょうか?

atama+は、塾や予備校で中高生に新しい学びを提供するサービスです。現在は中学生向けに「英語」「数学」「理科」の科目と、高校生向けに「数学」「英語」「物理」「化学」の科目があります。塾で支給されるタブレットや個人のパソコン・スマホを使って利用できます。

AI先生の「アタマ先生」が生徒のつまずいている部分を解析し、そのつまずきに合わせた最適な教材や学習順序を提案するので、生徒は自分専用のレッスンを受けることができます。

さらに、生徒一人ひとりの進捗や生徒への声掛けの提案などが講師に通知されます。これによって、今まで講師が担っていた「ティーチング」(教えること)と「コーチング」(生徒の目標に伴走しながら褒めたり励ましたり指導したりすること)を、AIはティーチング、講師はコーチングという形で分担でき、「AIと人のベストミックス」を実現しています。

―例えば英語だと、どのように学習が進むのでしょうか?

英文法で、「Didn't you study English yesterday?」という文の意味がわからない生徒がいるとしますよね。この生徒は疑問文がわからないのか、過去形がわからないのか、それとも否定形がわからないのか、どの部分につまずいているかをAIが解析し、次に学習すべき教材を提案します。

提案される教材は講義や演習問題、復習問題などさまざまで、生徒が1問解くごとに提案も変わっていきます。これまでのようにまとまったテストを終えてから復習するというのではなく、常にテストと学習を繰り返すので、リアルタイムで自分の強みや弱みを把握しながら学習が進められます。また、学習時間の大幅な短縮にもつながります。 

atama+_最短コース

「atama+」の画面。AI先生の「アタマ先生」が一人ひとりの理解度を解析、今学ぶべき教材や順番を提案してくれる

 ―英文法はイメージしやすいですが、読解問題などはどうですか?さまざまな要因が絡まっているので、どこでつまずいているか突き止めるのは難しそうですが。

「この単元を習得するのにこれだけ時間がかかった」、「この問題で不正解が出た」といった、その生徒個人が今まで進めてきた学習のデータと、「同じ部分でつまずいた生徒はこういう傾向があった」というほかの生徒の学習データを総合して弱点を解析します。生徒が学習するほどデータは増えていくので、日々精度が上がっていきます。

―「AIと人のベストミックス」ということですが、「人」によってAIの使い方が異なるということでしょうか。

はい、導入の仕方は塾によってさまざまです。「AI講座」を開設し、既存の授業を置き換えて活用するケースや、講師が時間割を作りながら家庭学習に活用するケース、入塾時に弱点を分析してオーダーメイドの講座を作るケースなどがあります。

新型コロナウイルスの感染拡大前は、塾の教室に生徒が集まり、決められた時間中タブレットを用いて学習し、講師がatama+の通知を見ながら声掛けをしていました。ちなみに、このときは生徒の学年も学ぶ教科も単元もバラバラです。

授業終了後には宿題が生徒のスマホに配信され、生徒は家でスマホを使って宿題を解く。そしてその宿題の進捗データを反映した教材を次回の授業で学ぶ、という流れが一般的でした。

感染拡大後は塾や学校が閉校になったので、atama+を使って家庭学習の時間を全面的にサポートする塾が出てきました。生徒は自宅のPCやスマホで学習し、講師はその状況を把握しながら電話などを用いて遠隔でコーチングしています。今後もこうした学習形態は広がっていくのではないかと思います。 

atama+ COACH 生徒詳細(学習タイムライン)

講師向けアプリ「atama+COACH」の画面。生徒の学習状況がリアルタイムに通知され、適切なコーチングにつながる

atama+ HOME 英単語トレーニングイメージ

宿題用アプリ「atama+HOME」の画面。スマホでできるので学習のハードルも下げられる

これからも進化していくatama+

―今年の夏には、大学受験生を対象にしたオンライン模擬試験「駿台atama+共通テスト模試」を開催するんですよね。

はい、期間中(7/27~8/9)はいつでもどこからでもパソコンで受験できます。初回となる今回は無料です。

これまでの模試は受験から結果が通知されるまでの期間が長く、結果が届く頃にはもう内容を忘れてしまっていて、学習につながっていないという問題意識がありました。

そうした問題意識の下で、去年頃から駿台予備学校とatama+での学習と連動させた模擬試験を作れないか話していましたが、今般の新型コロナウイルスの影響で、会場での模試実施が困難になり、受験生の学びに影響が出る事態も相まって、急きょサービスの提供開始を早め、急ピッチで開発を進めてきました。オンライン模試は受けると即時採点ですぐに結果がわかる上に、おすすめの学習内容も提案されるので、学習に結び付きやすくなっています。

ただでさえセンター試験から共通テストに切り替わって大変なところに、新型コロナウイルスの影響で模試が中止になったり、学校や塾が閉校になったりと、今年の受験生が抱えている不安は計り知れません。オンライン模試「駿台atama+共通テスト」は駿台生でなくても受験できるので、ぜひ多くの受験生の学習に役立ててほしいです。

 ―今後新たに開発していきたい分野はありますか。

今はユーザーからの要望が多い教科からリリースしていっていますが、今後は教科を増やしていきたいです。さらに中高生だけでなく大学生や社会人、海外のユーザーに向けた商品も開発していきたいですね。

―塾などの教育現場を見ていて、英語学習について感じられることはありますか。

中高生、特に中学生の中には、目の前のテストで点を取るために意味もわからずに例文や単語を丸暗記している子が多いと感じます。私自身、海外で仕事をしてきて、義務教育で多くの時間を割いているにもかかわらず、なぜ英語を話せない日本人がこんなに多いのかと疑問に思っていました。留学などひたすら英語を浴びるという環境に身を置くことも効果的ですが、それが難しい日本で英語を学習するには、やはり基礎の英文法をしっかり身に付け、土台を固めることが重要だと強く感じています。

atama+を導入した塾に行ってみた

実際にatama+を導入している塾はどう感じているのでしょうか?2020年3月末に、それまでの基幹事業だった「城南予備校」から、atama+を活用した「城南予備校DUO」に全面移行した株式会社城南進学研究社の村上潤さん(教育事業本部事業企画部部長)と、村上寛さん(城南予備校DUO 蒲田校校舎長)にお話を伺いました。

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―城南予備校DUOでは現在どのようにatama+を活用されているのでしょうか?

従来の個別指導やテキスト、プロ講師による指導と併用する形でatama+を活用しています。生徒が事前に教室を予約し、予約した時間に来れば教室に用意されたタブレットを使用して学習が始められるようになっています。

1教室に2~3人の講師がつき、「atama+COACH」を参照しながら声掛けや学習指導をしています。この講師は、実際に教室に来た生徒に加えて、自宅などで自分のスマホなどを使ってatama+の学習をしている生徒にも遠隔で指導を行っています。

atama+を使った授業は週2コマから使い放題までプランがあります。「atama+」の学習状況を見ながら、例えば「この生徒は家だと解説を読み飛ばしていることが多いようだから、塾に来て学習させよう」「この生徒は家でも学習できそうだ」などと判断して、学習の方法を決めています。

atama+を使って学習する際は、必ずノートを取るように指導しています。タブレット内で完結する学習よりも、ノートを取りながらする学習の方が定着率が良いためです。 

―実際に導入した感想はいかがですか?

導入した頃は、あまりにも生徒がシーンとして取り組んでいるので、楽しんでやっているのか不安に思っていましたが、実際アンケートを取ると、9割以上が「面白かった」「よかった」という好意的な回答でした。

atama+は、学習履歴から解析してその生徒ができるかできないかのギリギリの問題を出題するので、生徒も学習の喜びを感じながら熱中して取り組んでいるのがわかります。

教えなくてもサクサクと操作していて、さすがデジタルネイティブだなと感じます。最初は、むしろ保護者の方から「そんなもので勉強できるのか」という不安の声が出ていましたが、結果を見たら納得されます。

本格的な導入の前に試験導入して検証した結果、参加した74名の約80%が成績向上に成功しました。約1カ月で30点近く向上した子が複数出て、中には40点以上向上した子もいます。

1人の講師が指導する生徒の数が増えたので、講師の人員不足が解決できましたし、たくさんの生徒と関わることで講師も大変やりがいを感じているようです。定期的に生徒と講師で行っている面談も、atama+を使えば生徒の学習進捗を一覧した上で始められるので、以前より質が向上したと実感します。

atama+を使っていて感じるのは、「本当に『教える』ということは必要だったのか?」ということです。これまで、私たちは個別指導などで生徒から「この問題がわからない」と言われれば、必ず側について教えていました。ただ、それは「生徒の代わりに問題を解いてあげている」ということに過ぎなかったのではないかと思うのです。

atama+は、「わからないのなら、その問題は今解くべき問題じゃない。その原因になっている学習に戻ればいい」というスタンスなんですよね。そもそも教えるということは何か?という、根本的な部分についても深く考えさせられました。 

―atama+を導入する上で、人間の講師にしかできない部分はどこにあると感じられますか?また、atama+を導入しているほかの塾との差別化はどのように図られていますか?

人間の講師にしかできない部分としては、生徒の「学習フォーム」を作る、つまり生徒の学習への取り組み方・向き合い方を作る部分です。また、個別の入試傾向への対応や直前期の積み上げも現状では講師による対応の方が優れている部分です。

城南予備校DUOでは、生徒の「学習フォーム」を作る部分は講師のコーチングの質向上に注力し、また個別入試傾向への対応の部分は城南予備校以来のプロの予備校講師が個別に対応する形で他塾との差別化を明確にしています。 

取材後記

城南予備校DUO蒲田校の教室では、コロナ対策で間隔の空けられた机で、生徒がノートを取りながら黙々と学習を進めていました。どの生徒もとても集中していて、受け身の生徒が1人していなかったのが印象的でした。

講師はatama+の画面で生徒の学習進捗をチェックしつつ、教室を行き来しながら積極的に生徒に声を掛けています。受験生の頃、先生の声が響く集団授業を経験した私にとっては驚きの光景でしたが、教室は静かながらも能動的に学びを進める生徒の熱気であふれていました。

atama+は、生徒の学習時間の短縮だけでなく、講師の教える時間の短縮や人材不足解消、地方格差の解消など、あらゆる問題解決に一役買っているようです。今後の教育現場そのものを大きく変革していく可能性を秘めたatama+。私が学生のときに出会えていれば・・・!と思わずにはいられません。いつか忙しい社会人が英会話を最短で身に付ける、なんてサービスも開発されるのでしょうか?今後の展開が楽しみです。

atama plus株式会社

「教育に、人に、社会に、次の可能性を。」をミッションに、テクノロジーを活用して「基礎学力」の習得にかかる時間を短くし、「社会でいきる力」を養う時間を増やすことを目指す。現在は、教育を一人ひとりに最適化するAI教材「atama+」を全国の塾・予備校1900教室以上(7月9日時点)に提供。

「atama plus」詳細はこちら