英語は「母音」の発音が難しいと言われます。その母音の読み方のルールが分かれば、もっと会話や読み書きが楽になります。発音記号やふりがなに頼らずに英語が読めるようになる方法を、mpi松香フォニックス名誉会長の松香洋子さんに教えていただきます。
フォニックスって何?
皆さん、フォニックス(Phonics )をご存じですか。発音と文字の関係を扱うルールのことで、日本語に訳すと「音声法」となります。言語の音声面だけを扱う「音声学」とは違って、英語の文字と音声との関係を、英語圏の子どもに分かるように開発された学習法です。
英語圏の子どもたちが、自分で聞いたり話したりできる英語を、読めるように書けるようにする実践的な学習法なのです。
英語の発音がうまくできない、文字はだいたい読めるが通じるように言えない、暗記した単語しか読めない、読めるけれど書けない――。多くの日本人が抱えるこんな悩みを解消することができる学習法がフォニックスなのです。
音のない母音「サイレント e」のルール
このルールは、英語の単語の中にとてもよく出てきます。知らず、知らずにこのルールを使いこなしている人も多いと思います。
一方、中学生のころ、単語の読み方が分からず、make は「マケ」、take は「タケ」などと言った経験はありませんか。そのような苦労をした人にこのルールは「なるほど〜。そんなルールがあったのか!」と感じると思いますよ。
「サイレント e 」って何?
母音+子音+ e
例えば、What’s your name? という英文中の name は、「子音+母音+子音+ e」の並びで構成されています。
「n(子音)」+ 「a(母音))」+ 「m(子音)」+ 「e」
この単語 name の最後の 「e 」を「サイレント e」と呼び、つまり発音しない「e 」なのです。さらに、最後の「 e」 が前の母音の 「a 」をアルファベット読みに変えているのです。
たとえば、win(勝つ) という単語には / i / という短母音が入っていますが、語尾に 「e」を付けるて wine(ワイン) になると「 i 」の読み方が変わりますね。
このように、語尾に「e 」が付くことで、手前にある母音の読み方が変化する単語を「変身単語」と言います。子どもたちに教えるときには、「サイレント e マン」という名前の魔法使いを登場させて、「魔法使いの e マンが来ると単語が変身するよ!」と楽しく教えます。
これらが「変身単語」です
- cap → cape (帽子 → ケープ)
- tap → tape (軽くたたく → テープ)
- hop → hope (ぴょんぴょん跳ねる → 希望する)
- not → note(〜でない → ノート)
- pin → pine (ピン → 松の木)
「変身単語」を、1つ1つの文字の音を出しながら、はっきりゆっくり読んでみましょう。最後の e は発音しないので、発音する代わりに軽くうなずいたり、口を手で押さえたりしてみてください。e の手前ある母音はアルファベット読みになりますよ。
- t ・・ a・・ k・・e take (〜を取る)
- e ・・ v ・・e eve (イブ、前夜)
- r ・・i・・ d ・・e ride (乗る)
- b・・ o・・n・・e bone (骨)
- c ・・u ・・t‥ e cute (かわいい)
今日のチャレンジ
次の英文を、太字の部分の発音に気を付けながら、通じるように読んでみましょう。
I like online games.
私はオンラインゲームが好き。
I can bake some fun cakes.
私は面白いケーキを焼けます。
You have a cute smile.
君はスマイルがかわいい。
This bike is mine.
この自転車は私のだ。
I’ll go home at five o’clock.
5時に家に帰るよ。
フォニックスクイズ
次の文中に、いくつ「サイレント e 」の入った単語が入っているか、見つけてみましょう。見かけは同じでもこのルールにはまらないものもあるので、注意が必要です。
クイズ
Q2.色の名前当てクイズ。「サイレント e」のルールが当てはまる色の名前は何色でしょうか?(blue は、「母音+子音+ e」の「サイレント e」のルールには当てはまりません)
Q3.数字当てクイズ。1から10までの間の数字を英語で言うとき、「サイレント e」のルールが当てはまる数字が2つあります。それはどれとどれですか?(three は、「母音+子音+ e」の「サイレント e」のルールには当てはまりません)
Q4.動詞当てクイズ。「サイレント e」のルールが当てはまる動詞を2つ挙げてください。
Q5.食べ物、飲み物当てクイズ。「サイレント e」のルールが当てはまる食べものや飲みものの名前を2つ挙げてください。
答えはずしも4文字でなくても構いません。単語を作成したら発音してみましょう。答えは、さまざまなバリエーションがありますので、母音を入れ替えて試してみましょう。
最後に
今回のフォニックスチャレンジはいかがでしたか?
このルールをマスターすると発音がよくなり、読み書きも早く正しくなりますよ。これまでよりも、少し意識して、はっきり発音をする、書くときには音を意識しながら書くことを続けていると発音に自信が付いてきますよ。
次回は、「礼儀正しい母音」というルールを紹介します。お楽しみに!
クイズの答え
Q1.June
Q2.white
Q3.five、nine
Q4.例:like、use、hate、make、note など
Q5.例:ice cream、cake、chocolate、rice crackers、milkshake など
松香洋子(まつか ようこ)
株式会社mpi 松香フォニックス名誉会長。「J-SHINE小学校英語指導者認定協議会」理事。放送大学教員免許更新講習講師。
編集:増尾美恵子