英語力アップを志す社会人に足りないのは、圧倒的に「質より量」。ガリ勉は最高にカッコいい!

2017年3月に発売する書籍 『英語力はメンタルで決まる』 (アルク刊)からエッセンスをひと足 先に ご紹介。第2回は、英語学習は「質より量」を紹介します。

英語力はメンタルで決まる
 

効率的な学習を求め過ぎると、かえって非効率的になる

『たった○×だけで~』『わずか□○△で~』……書店の英語学習書コーナーには、魅力的なネーミングの本が並んでいます。これらの本を使って学習すれば、超効率的に英語を学べ、わずかな時間で英語力が一気に伸びるのではないか、ついそんな気持ちにさせられます。

毎日忙しい社会人が「効率的な学習」を強く求めるのは当然でしょう。しかし、 果的な学習を求めるあまり、いつまでたっても「効果的な学習」ができない人がたくさ んいるようです

典型的なものに、 量より質を求め過ぎて、結局学習そのものが非効率になってしまう というパターンがあります。量が足りないのに質を求める。すると結果が出ないので、また質を求めてしまう。このような「負のスパイラル」に陥ってしまっている英語学習者は、私の見る限り相当数います。

量より質を求め過ぎて、負のスパイラルに陥りがちな人の特徴としては、「同じような内容の英語学習書を何冊も持っている」「英語学習のハウツー本が大好き」などが挙げられます。これらに当てはまる人は注意が必要です。

ただし「質など考えなくても良い」と言っているわけではありません 。英語学習においては、質も量も両方とも大切なことは、揺るぎようのない事実です。しかしながら、社会人の方々の英語学習法を見ていると、学習の質に問題がある人がほんのわずかなのに対して、学習の量に問題がある人はかなりいます。

学習の質と量は相互依存の関係にあります。 いくら質の高い学習をしても、ある程度の量を確保しなければ、質と量の相互依存はうまく作用せず、学習の効率性は上がりません 。学生と比べて、社会人の学習者は、この学習量が 不足 しているケースが圧倒的に多いようです。

今日から、英語学習の質ではなく、量を追求してみましょう。まずは量を増やすことで、質の向上、ひいては学習の効率性をアップさせていきましょう。

人はなぜ量より質を求めてしまうのか?

ところで、人はなぜ、量より質を求めてしまうのでしょうか。少しヒンシュクを買ってしまうかもしれませんが、率直に言うと、私は次の二つの間違った考えが 原因
になっていると考えています。

① 自分のことをどこかで「頭がいい」と思っている。だから、ちょっと勉強すれば何とかなると思っている。

② ラクして英語を高めたいと思っている。

①について見てみましょう。実は、英語学習に頭の良さは関係ありません。

私はこれまで日本の高校で20年間、学級担任として進路指導をし、教科担当として英語を教えてきました。何千人もの高校生たちに接してきた経験から言うと、偏差値30の大学に進学する生徒も、偏差値70の大学に進学する生徒も、英語学習においては同じように結果を出せる 可能性 を秘めています。

ここで「英語学習において」と書いたのは、もしかしたら他の教科においては、どれだけ質と量のバランスの取れた学習をしていても、なかなか結果が出せない場合もある かもしれない と思うからです。

しかし、少なくとも英語学習においては、頭の良さはまったく必要ないと言えます。

次に②についてですが、時間のない社会人は驚くほどこの考えに飛び付きたがります。確かに、仕事が忙しい人が「時間がなくて勉強できない」という日常と「英語力をなんとか上げたい」という願望を両立させるには、②の方法はうってつけに見えます。だから、②を実現させてくれそうな英語学習書や英語学習法が世の中に溢れているのです。しかし、残念ながらそんな「うまい話」はありません。 ラクして英語を身に付けた人など、どこにもいません

「ガリ勉」は超カッコいい

学生時代の期末テスト当日の朝。こんな会話をしたことはありませんか。

Aくん「昨日どんだけやった?」

Bくん「全然勉強してない、ヤバイわ」

Bくんは目の下にクマを作り、明らかに昨日はテスト勉強で一睡もしていません。それでも、Aくんに「全然勉強してない」と答えるのです。

今から20年ほど前、現在30、40代の社会人の方々が学生時代を送っていたころ、勉強というと暗いイメージを帯びていました。ひたむきに勉強する姿は「ガリ勉」と、否定的なイメージで表現されました。

高校球児が甲子園を目指して必死に練習する姿には爽やかなイメージがある一方、机に向かってがむしゃらに勉強する姿には暗いイメージがあるのはどうしてでしょうか。最近でこそ、アイドルや芸能人が資格試験や入学試験に挑戦する企画番組が多く放送されるようになりましたが、それでも脇目もふらずに勉強する姿はマイナスに取られがちです。

日本という国では、勉強のプライオリティが低すぎる と私は思います。高校生たちを見ていてもそうです。あるテストで同じくらいの点数の場合、普段から熱心に学習していた生徒より、あまり学習していなかった生徒の方が、なぜか周囲から高く評価されるのです。また、友達との遊びを断るときに「勉強があるから」はNG。勉強は短時間でやった方がスマートでカッコいい、そんな残念なイメージがあります。

そして、いまだにこの学生時代の感覚を持っている社会人学習者を散見します。「全然勉強してない」がカッコいいという考えは大変危険です。

「TOEIC800点を目指して勉強している」「毎朝五時に起きて勉強している」と、 同僚 や友人に胸を張って語るべきです。 毎日ガリガリと音が出るくらい勉強をしている自分の姿をカッコいいと思う のです。ガリガリ勉強すれば、少なくとも勉強の量は確保できます。

ガリ勉はもっと称賛されるべきですし、英語学習者の方々ももっとプライドを持って、堂々と「ガリ勉」になっていただきたいと思います。

英語学習は「質より量」のまとめ
  • 英語学習においては、質を追求する前に、まず量を確保しよう。
  • 英語学習に必要なのは、頭の良さではなく、勉強の量。「ガリ勉」はカッコいい。
  • ラクして英語力を高められる魔法は存在しない。
ご紹介した本はこちら
英語力はメンタルで決まる
 

西田大(にしだまさる)
1973年生まれ。関西大学文学部英文学科卒業。TOEIC990点(満点)、英検一級、全国通訳案内士。23年間にわたり県立高校教員として勤務した後、通訳、英語講師として独立。通訳としての技量は高く評価され、国際会議や各国の大臣クラスの通訳にもアテンド。英語講師としては、TOEIC・英検等の検定試験から実用英語まで、幅広い分野の英語学習に精通し、その学習法・対策法は注目を集めている。著書に『 「音読」で攻略TOEIC(R)L&Rテストでる文80 』(かんき出版)、『 英語力はメンタルで決まる 』(アルク)、『 TOEIC(R)テストに必要な文法・単語・熟語が同時に身につく本 』(かんき出版)など。

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