「今聴いてほしいアーティスト」と関連楽曲を、音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと併せて渡辺志保さんが解説します。
今月のアルバム
イートのセカンドアルバム『2 Alive』を紹介します。
メキシコ人の父とルーマニア人の母を持つ、アメリカ出身のラッパー、イート。2015年から音楽活動を始め、2018年に初EP『Deep Blue Strips』をリリース。2021年の楽曲「Sorry Bout That」がTikTokを中心にバイラルヒットしたことを きっかけ に、世界で注目を集める。独自のセンスで時代の新たなトレンドを生み出す、新進気鋭のラッパー

どの言語にも、若者言葉や流行語が存在し、辞書や教科書には載らないスラングとして時代の文化を形成している。現在、SNSや音楽チャートでじわじわと存在感を増しているラッパー、Yeat(イート)は、独自のセンスで言葉を「発明」し、そのユニークさによって人気を集めている若手アーティストだ。例えば、彼の楽曲タイトルにもなっている“tonka”という単語は「かっこいい車」を指す。“twizzy”は「双子(twin)」をイート流に変化した単語で、双子そのものを指す他、「双子のように親しい、仲の良い親友」という意味も併せ持つ。
イートの面白さは、もちろん言語センスだけではなくそのサウンドにもある。シンセサイザーの音色がバシバシと響くトラックに、ランダムにつぶやかれるようなフローやメロディーはヒップホップがさらに進化した 先に あるもの。カナダ出身のアーティスト、ドレイクも既にイートのことを評価しており、2月に発売されたアルバム『2 Alive』はビルボードのアルバムチャートでもトップ10入りを果たした。彼の言語的特徴の一つに、“e”は必ずウムラウト付きの“e”として表記されるというルールもある。こうした決まり作りもまた、ファンたちが「イート語」にハマるポイントなの かもしれない 。
ちなみに 、人気ラッパーのガンナも今年に入って“pushin P”というスラングをはやらせた。そのまま訳すと「Pを押す」となり意味不明だが、このPには“power” や“paper(金)”などさまざまな意味が内包されており、転じて「気合を入れる」とか「本気でやる」とか「かっこよくキメる」などの意味を指すスラングとして広まっている。常にイノベーティブなラップミュージックだが、次に飛び出すのはどんな自由なスラングだろうか。
新たなトレンドを生み出す楽曲5選
今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。2022年、新しい言葉やトレンドを生み出す楽曲を聴いてみよう!
- Luh geek
イートのアルバム
「EJ Culture Music」で取り上げた楽曲をSpotifyで公開中!
これまで『ENGLISH JOURNAL』の連載「EJ Culture Music」で取り上げてきた楽曲をSpotifyで公開中です。次のURLからご利用ください。
EJ最新号をぜひご覧ください!
アルクの本
ロックスターの生インタビューや80年代の洋楽で英語を学ぼう!
※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年6月号に掲載した記事を再編集したものです。渡辺志保 音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビュー経験もあり。block.fm『INSIDE OUT』をはじめ、ラジオMCとしても活躍中。
「ChatGPT」スキルブックシリーズ
生成AIを使いこなす!山田優さんの英語学習・活用シリーズ
ChatGPTなどの生成AIを、翻訳や英語学習、英会話にどう生かすか。AI翻訳研究の第一人者・山田優さんが、AIを上手に活用するための考え方と実践的なノウハウを紹介する3冊です。
ChatGPT翻訳術――AIを活用して英語を使いこなす
AI翻訳を効果的に使うために必要な言語スキルと、ChatGPTへの指示(プロンプト)の工夫を解説。メールやプレゼン、広告、レポートなど、さまざまな場面で使える翻訳の実践テクニックを紹介します。購入者特典としてプロンプトテンプレート集も用意されています。
ChatGPT英語学習術――AIを自分だけの学習パートナーに
生成AIを英語学習のパートナーとして活用するための思考法と実践術を解説。TOEIC対策やビジネス英語、ライティングなどの具体例を通して、AIの力を引き出しながら、自分に合った学習を進める方法が学べます。
今日からはじめるChatGPT英会話――AI相手に話す力を鍛える
ChatGPTなどの生成AIの音声モードを使って、気兼ねなく英会話を練習できる一冊。日常会話やビジネス、雑談など100の場面を収録しています。AIから添削やアドバイスを引き出しながら、一人でも実践的なスピーキング練習に取り組めます。
SERIES連載







