英語で伝える力を維持するため、バイリンガルアナウンサーで英語朗読家の青谷優子さんは、日々どのようなトレーニングをしているのでしょうか。詳しくご紹介いただきます。
ネットのニュースサイトをチェック
NHK時代は毎日ニュースを読んでいたので、時事英語を自然と学ぶことができたのですが、現在はなかなかそうもいきません。
今は、SNSに登録しているテレビ局や新聞社などの投稿をチェックし、隙間時間に2、3記事は読むようにしています。可能であれば声を出して読みます。
少しでも「?」と思う点があれば、あとで同じような内容の日本語の記事を探して読みます。辞書を引くよりも内容がわかりやすく、専門用語を日英 同時に 覚えることができるからです。
経済・政治・スポーツなど、ジャンルの異なる記事を意識して選ぶことも大切です。
私は「BBC」「Reuters」「CNN」「 Economist 」「The Guardian 」「The Japan Times」「Financial Times」「The Wall Street Journal」などのページをブックマークして、いつでもどこでも時事英語トレーニングができるようにしています。
ニュースの背景を知っていると、英文の記事を読むのがぐっと楽になるので、日本語でもニュースチェックは欠かせません。
オーディオブック・歌詞
文章を読む練習をする際におすすめなのが、オーディオブックの活用です。
洋書はたいていオーディオ版もありますので、本と音声の両方を入手して音声の「お手本」を参考にすると、文章の区切り方はもちろん、表現に必要な「間」や「強調」をどのように使っているかを実際に聞くことができます。
俳優が朗読しているオーディオブックは、パフォーマンスとしても素晴らしいので、耳で聞きながら「情景が見えてくる」という朗読ならではの体験ができます。
私はランニングやウォーキングをしながらオーディオブックを聞くことが多いため、わからない単語が出てくると、何分何十秒ごろにその単語が出てきたかをスクリーンショットで残し、あとで調べることにしています。
自分の単語力を試すトレーニングとしては、歌を聞きながら「同時通訳」をするということも行います。
日本語の歌を聞きながら英訳する、英語の歌を聞きながら和訳するといった具合です。歌詞なので、直訳というよりは「詩」的な表現になるように考えながら訳します。
小説やドラマ、映画で使われれていた表現を、ここでなら使えるかも…。こんな比喩(ひゆ)はありかな?などと考えながら訳していると、あっという間に時間がたちます。ランニングやウォーキングをしながらなので、日々の運動 不足 も解消できます。
チェックと本番
一人で勉強することは大切ですが確認 作業 も重要です。
私は毎月1回、ナレーションの先生に朗読チェックをしてもらっています。特に収録前やライブの前は、自分なりに作り上げたものが観客にきちんと「伝わるか」「大げさでないか」「勘違いしていないか」を確認してもらう必要があるので、この先生チェックは欠かせません。
もちろんダメ出しもあって落ち込みますが、聞き手に楽しんでもらえないものは朗読としては失敗なので、 修正 の場はどうしても必要なのです。独りよがりの朗読ほど聞いていてつらいものは無いので、第三者のプロの耳は私にはなくてはならないものです。
さらに、「本番」を設けることも、自分が成長するには必要なことです。
場数が多ければ多いほど緊張しなくなりますし、多少の緊張も味方にできるようになっていきます。本番での実力を知ることで、次なるトレーニングの方向性が見えてきたりもします。
私の場合は朗読ライブが一番の舞台ですが、セミナーや講演なども「本番」です。
原稿を作り、鏡の前で練習したり、音声を収録したりして時間調整をし、内容を刈り込み、面白いエピソードを入れ、どう表現すれば最後まで飽きずに集中して聞いてくれるかなどを考えて、リハーサルを繰り返します。
準備と練習は必ず、自信と「本番」の成功につながります。
青谷優子の英語読書 Vol. 5
今回も私にとって思い出の英語本を一冊、紹介します。
David Copperfield by Charles Dickens
あまりにも有名な作品なため、映画などで内容は知っていたのですが、本を手に取るたびにその分厚さ(ペーパーバックで800ページ以上)にげんなりし、挑戦しては挫折する連続でした。
ある時これではいかん!とRichard Armitage という英国俳優が読んでいるオーディオブックを購入しました。さすが役者さんです。
この作品は、主な登場人物だけでも20名ほどいるのですが、Armitage は見事にそれぞれの声を使い分けています。声とキャラクターが巧みに結びついて愛着を感じるほどです。女性の声も見事で、なかでも継父の姉の声が秀逸!意地の悪さが声ににじみ出て笑ってしまうほどです。
私は日課のウォーキングで聞いていたのですが、黙読ではありえない「たたみかけ」「息づかい」「感情のほとばしり」に夢中になり、ついつい長く歩いてしまうほどでした。オーディオブックで36時間半のこの大作を心から楽しめたのは、文豪 Dickens の力はもちろんですが、Armitage のパフォーマンスに大いに助けられたのは間違いありません。
いつの日か、このような朗読ができるようになったらいいなぁと憧れる、お手本中のお手本です。
- 著者: Charles Dickens
- 出版社: Penguin Classics
- 発売日: 2005/01/28
- メディア: ペーパーバック
- 作者: Charles Dickens、Richard Armitage(朗読)
- メーカー: Audible Studios on Brilliance audio
- 発売日: 2016/10/11
- メディア: MP3 CD
こちらもおすすめ!
- 著者: 青谷優子
- 出版社: アルク
- 発売日: 2017/12/25
- メディア: 単行本
文:青谷優子(あおたに ゆうこ)
幼少期をロンドンで過ごす。上智大学を卒業後、NHKに入局。リポーターやキャスターを担当した後、NHK国際放送局(NHKワールド)のニュース番組『NHK NEWSLINE』のメインアンカーとして活躍。並行して英語文芸の朗読番組『Listening Library』の演出・制作・出演を務め、日本文学を海外に紹介した。2015年2月に独立。朗読家、バイリンガルアナウンサー、英語コミュニケーション講師として活躍中。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
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