演劇のメソッドを使う、英語らしい発声をするための筋肉の鍛え方とは?

「夢中になるから英語が話せる」をモットーとする「英語芸術学校マーブルズ」(東京都江戸川区)を主宰する小口真澄さんは、幼児から大学生、英語の先生、企業の方々まで幅広い層を対象に、演劇・ミュージカルを通して英語を教えています。そんな小口さんに、演劇のメソッドを取り入れた発音矯正術を教えていただきます。

英語が通じず苦労した語学留学

みなさんは、海外に行ったときに次のような経験をしたことはありませんか?

私は高校2年の夏に、語学留学のためにドキドキしながら初めてアメリカに行きました。

ファーストフード店でのハンバーガーや映画館でのポップコーンの注文など、列に並んでテンポよく頼まないといけない場面で、とても緊張したのを覚えています。

ある日、バニラアイスクリームを注文したときのこと。手渡されたものは、何度味わってみてもバナナアイスクリーム!! “Vanilla, please.”と言ったつもりでしたが、なんと“Banana, please.”に聞こえてしまったのですね。

今となっては笑い話ですが、「アイスクリームもまともに頼めないのか~っ」と落胆したのを覚えています。

ショックなことはさらに続きます。

“Where is the bus stop?”と聞くと “Bath?”と聞き直される。

レストランで“Club Sandwich, please.”と注文すると、店員が“Club Sandwich or Crab Sandwich?”と聞かれる。

“Club!”と何度言ってもわかってもらえず、揚げ句の果てにはカニの格好をして聞いてくるので、「いや、“ Crab ”(カニの格好をしながら)ではなく…“Club Sandwich”と、体を張って必死の注文!注文を 完了 したときには、ほかのお客さまから大きな拍手!!

皆さんのなかにも、似たような経験をした方がいるのではないでしょうか。

英語を発声するための筋肉を鍛えましょう

英語の発音をクリアにしようと思ったら、まずは英語発音の筋トレが必要です。才能や海外経験は必要ありません。ただ単に、英語の発声をするための筋肉を鍛えればよいだけです。

練習すれば誰でも必ずできます。

さあ、始めましょう!

腹式呼吸の習得法

日本人は胸呼吸で話すことが多い民族ですが、英語の場合は腹式呼吸が基本です。腹式呼吸を体得するにはさまざまな方法がありますが、手っ取り早いのは次の方法です。

  1. ジャンプする。
  2. 着地するタイミングで「ハッ」と声を出す。
声はへそのあたりから出すイメージです。

ジャンプして着地するタイミングで“Ha!”と声に出す。これを何度か繰り返せば、腹式の発声の仕方がわかると思います。

子音に「魂」を込める!

子音の発音に徹底的にこだわりましょう。食べたいバニラアイスを手に入れるため、ここでは /b/ と /v/ の発音を見てみましょう。

/b/ はしっかり唇を閉じて発音

上唇と下唇をきちんと閉じずにこの発音をする人が多いです。/b/ の音はしっかりと唇を閉じ、そこから息を一気に吐き出して発音します。専門用語では「破裂音」と呼ばれています。

では、私がよくやる練習法を紹介します。

皆さんは唇を閉じ、息を吐きながら唇を震わせて音を出すことができますか?これで唇の筋肉を鍛えます。

さあ 唇を合わせて~♪ 「キラキラ星」を歌ってみましょう!!音は全部、唇を合わせてでるバイブレーションの音!
唇をブルブル震わせながら「ド・ド・ソ・ソ・ラ・ラ・ソ…」とできましたか?

今度は /b/ を発音しながら、同じメロディーを歌います。

今度は唇を合わせて /b/ の音だけで~♪「キラキラ星」を歌いましょう~~
ちょっと間抜けに見えるかもしれませんが、ただ練習するよりずっと楽しいはずです。

できれば一人でではなく、仲間と一緒にやるのがいいですけど!!

この練習での注意点は、日本語の「ブ」の音にならないようにすることです。/bu/ ではなく /b/。子音だけです。

/b/ だけに命を懸けてくださいね!!

/v/ は下唇の内側をかんで発音

次は /v/ の音の練習です。

手で下唇を少し前に引っ張ってみましょう。そこに上の歯を当てます。

下唇の裏側に上の歯が当たっている状態のまま、声を出しながら息を吐きます。専門用語では「摩擦音」といいます。

初めて英語を習ったときに「下唇をかんで!」と言われ、そればかりが印象に残っている人もいるかもしれません。確かに下唇はかみますが、かんでいるのが唇の外側だとこの音は出ません。

ポイントは「下唇の内側をかむ」です。

今度は /v/ の音だけで「Happy Birthday」を歌ってみましょう♪

~~ to you~~のところは、/v/の摩擦音を出しながら、リタルダンド♪ 音を思いっ切り伸ばしちゃいましょう!

このやり方で、ほかの気になる子音も練習してみましょう。

つまり「簡単な歌をまるごと、その音だけで歌ってみる」です。

重要単語に思いを込めましょう

ミュージカルソングを聞くと、最後の子音がはっきりと、いわば命がけで発音されていて、私はいつも感銘を受けます。

熱い思いは文章の最後まで持ち続け、最後の子音で締めくくる!!です。

もちろん母音で終わるときもあります。そのときは、その母音を強調します。

そして、全部をはっきり言おうとするのではなく、その文章の中で一番大切なのは何かを考え、その単語に思いを込めます。

思いの伝え方が参考になるミュージカルソング

たとえば、今、大人気となっているミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』。この主題歌「This is me」は、今年のゴールデングローブ賞で最優秀主題歌賞を受賞しました。

サビの部分の歌詞を見てみましょう。
I am brave, I am bruised

I am who I'm meant to be , this is me.

(私は勇敢で 傷ついている それが 私が私であること)

あなたならどの単語に命をかけますか?

私なら brave、bruised、me。特に、最後の子音や母音を強調して歌います。

そうするときに、口先だけで歌っていても思いは伝わりません。体全体を使うことが大切です。この3つの単語の時は 思い込めて拳を振ってみましょう。

めちゃくちゃ盛り上がります。

そして慣れてきたら次の部分を練習します。

I am who I’m meant to be
ここは少し早口ですよね。全部をうまく言うことができなければ、who と be だけはっきり言います。腹式呼吸でお腹の底からのパワー!!!「おへそに口」です。

歌で伝えるときに大切なこと

歌を歌う場合は、リズムにきちんと乗ることが特に大切です。

全部をきちんと言おうとしすぎてリズムが崩れると、どんな歌なのかわからなくなります。

また、リズムと雰囲気だけを重視してなんとなく歌っていても何も伝わりません。

だから、とにかく、重要単語だけをリズムに乗せてください。

重要なのは

♪brave
♪bruised
♪who
♪be
♪me

ここをはっきりと歌います!

まとめ

今回紹介したような練習を繰り返していると、あなたの英語発声筋肉は、楽しくいつの間にか鍛えられているはずです。

1週間もすれば、あなたの英語はより伝わりやすくなっているでしょう。

そして、さらによいことに、重要単語の子音や言葉の最後の音に意識を向けていると、自然にリスニングの力も付いてきます。より鮮明に英語が聞き取れるようになっているはずです。

発音 に関して お話してきましたが、それより大切なのはあなたの思いです。伝えたいことがしっかりあることが大切。伝えたいことがあって初めて、言葉が意味を持ちます。

あなたの「夢中」を探しながら、英語の勉強を続けていきましょう!

 

小口 真澄(こぐちますみ)
英語芸術学校マーブルズ 主宰。米カリフォルニア州にある演劇学校「アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ」で演劇を学び、現地の子どもたちにミュージカルのコースなどを教えた経験を持つ。
英語芸術学校マーブルズ 紹介動画: https://youtu.be/7sfasFxB53U
各種ワークショップ開催中: https://marbles1008.net/

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