サムライ・ギタリストMIYAVIさんインタビュー。英語は、世界で勝負するための最低限のマナー

本日、12月5日に最新アルバム『SAMURAI SESSION vol.3 -Words Collide-』をリリースし、国内外を問わず多くのアーティストとコラボレーションしているサムライ・ギタリストのMIYAVIさん。このたびGOTCHA!では、MIYAVIさんが現在の活躍につながる英語力を手に入れるまでのお話や、日本人として、表現者として大切にしていることなどをうかがいました。

MIYAVIさんってどんな人?

MIYAVIさんは「サムライ・ギタリスト」の異名をもつアーティストです。エレクトリックギターをピックを使わずにすべて指で弾くという独自の「スラップ奏法」で世界中から注目を集めています。

近年では俳優、モデルなどにも活動の幅を広げ、2017年にはUNHCR *1 親善大使に就任されました。常に挑戦を続けてワールドワイドに活躍し、今最も期待のおける日本人アーティストの一人です。

25歳で決意の渡米

――現在、日本だけでなく、海外でもご活躍されていますよね。ご自身で、英語でコミュニケーションを取っていらっしゃる姿も拝見しました。その英語力は、どうやって手にされたのですか?学習を始めたキッカケを教えてください。

元々、10代の頃から、海外でライブをするようになってからですね。僕たち音楽家は、音で会話ができる。だけど、やっぱり、面と向かって想いを伝えたり、コミュニケーションをとりたい。そこではじめて英語が話せないもどかしさを感じました。コミュニケーションが取れないと、同じ土俵にも立てない。

世界には共通言語として英語がある。 世界に出て行く上で、英語で話せることは最低限のマナー だと僕は感じました。

だから、本当は英語を10代の頃から始めて、20歳までにはマスターしようと思ってはいたんですけど、やっぱり忙しくて。

なので、25歳のときには正直もう遅いかなとも思いました。「ここから先、30歳、40歳になって、同じような思いを感じていたいのか」と考えたら、それは違うな、と。25歳からでも、35、40歳なら、まだ10年あるわけじゃないですか。だったら今からでも、遅くない。やるなら今だ、と思って、そのときにマネージメントやレコード会社などに無理を言ってまとまった時間をもらい、渡米しました。

――アメリカでの生活は、どのような感じで過ごされていましたか?

最初にしたことは 日本人とつるまないこと (笑)。友達でもガールフレンドでも、とにかく英語を喋らないといけない状況を作る。あとは寝るときも英語のニュースをつけたままにしてましたね。

それから、ロサンゼルスでストリートパフォーマンスもしつつ、語学学校で、ブラジルや韓国からの移民のおばちゃんたちに混ざって勉強してましたね。余計、変なアクセントがつくんじゃないかっていう(笑)。

――ご自身で意識して「英語を浴びる環境」を作ってきた、ということですね。

そうですね、それ以外にない状況でした。

実際、ロサンゼルスにも日本人のコミュニティーはたくさんありますが、そこで過ごすなら日本にいてもいい、というか。

英語を習得したいなら、 とにかく自分を後戻りできない環境に置くこと かな、と思います。

――帰されてからは、その学習環境をどう維持したのでしょうか?

アメリカにいられたのは3カ月だけで、それじゃ足りなかったので、アメリカで作った友達を日本に呼んで、自分の付き人みたいにして、四六時中ずっと行動を共にしていました。レコーディングするのも、クラブに行くのも、食事も、トレーニングするのも全部一緒にいて、常に英語で会話をするっていう日常を作りました。

英語を話せない「もどかしさ」との戦い

――英語が話せるようになる前、話せないことで何か悔しさを感じた経験はありましたか?

世代的に、当たり前に英語が備わっている人たちの中で「自分だけ英語が話せない」という状態が、出遅れている感じがしていてずっともどかしかったですね。

特に僕の世代、僕の妻の melody. にしてもハワイで生まれ育っているので、当たり前に英語がインストールされています。そこと比較したときに、自分の英語の能力、世界に出たときのコミュニケーションスキルの低さをすごく感じていました。

ロサンゼルスで英語を勉強しているときも、本来ならば音楽や創作活動に時間を当てられるわけじゃないですか。その時間を語学の勉強に割り当てていることが悔しくて、実際泣きながらやっていました。

自分はまだ、スタートラインにも立てていない。

これは非常に大きなデメリットだと思いました。

僕だけの問題ではなくて、日本という国としても、「世界で勝負する、ビジネスする、世界にコミットする」という点において、語学がインストールされていないというのは大きな損失です。たとえ優秀であっても言葉が話せないだけで、世界では勝負の場に立てない。これは非常にもったいないことだと思います。

英語の習得には2倍、3倍の汗をかくわけですが、逆に「日本語を話せる」ということを武器にしていかないと、とも思いました。というか、武器にする以外にない。「世界にコミットする」という視点で、日本語を話せることや、日本人としての価値観が無駄にならないようにしようとも思いました。

――英語を身につけたことで、得られたこと、プラスのことは何だと思いますか?

「世界で戦う」という一歩を本気で踏み出せたことですね。

――それがその先のクリエーションに繋がっている?

そうですね。実際は言葉が通じなかったとしても、自分たちの作るもの、つまりはギター、音楽、演技、ファッションといったものが、すべてを語ってくれる。言葉を持たずしても、作品が語ってくれるし、人とつながることはできる。

でも、僕の場合は、応援してくれるファンと直接コミュニケーションを取りたいし、ミュージシャンとしてもアクターとしても、今まで日本人が行けていなかった領域まで行きたいと思っているので、そのためには英語でのコミュニケーションスキルは必須だと感じています。

日本人だけが持つ「狂気のホスピタリティー」

――日本語を武器に、という話もありましたが、海外でも活動する上で、日本人として大事にしていらっしゃることはなんですか?

狂気とホスピタリティー、ですね。これは完全に世界に負けない、日本人、アジア人としての強さだと思います。

狂気「と」ホスピタリティーなのか、狂気「の」ホスピタリティーなのか。世界のどこに行っても、もの作りに対しての信念と、熱。「一つのものにかける執念」というのは負けていないと思います。

ホスピタリティー、というところで言うと、「島国のメンタリティー」があります。人と共存していくことを 前提 とした民族性ですね。

悪く言えば、「なあなあで流される」「周りを見ながらものを決める」。ただ、それが団結したときの強さでもあり、人を受け入れる「おもてなし」ですよね。

世界中どこを探しても、お尻を洗ってくれる機械を作る国は、日本だけでしょう(笑)。

それが本当に必要かは別として、その根本的なおもてなしの姿勢はこの国が世界に誇るべきものだと僕は思います。

だって「日本が嫌い」っていう人にはあまり会ったことがない(笑)。そこは僕たち日本人、全員が誇りに思っていいんじゃないかな、と思っています。

MIYAVIさんの英語でのインタビューはENGLISH JOURNALで!

アルクの月刊誌『ENGLISH JOURNAL』ではなんと、MIYAVIさんに英語でのインタビューも敢行!最新アルバムの制作時のお話や、日本と世界の音楽性の違い、そしてMIYAVIさんのギタリスト以外の幅広い活動についてもおうかがいしました。

2019年2月号(2019年1月5日発売)にて、力強い英語で話す姿を、音声付きで掲載します。

CD付 ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2019年2月号
 

MIYAVIさんの最新情報はこちら!

『SAMURAI SESSION vol.3 -Worlds Colide-』、12月5日リリース!

「サムライ・ギタリスト」MIYAVIがジャンル/キャリア/国境さえも越えたアーティストと真剣勝負を繰り広げる対戦型コラボレーション・アルバム「SAMURAI SESSION」の第3弾!サミュエル・エル・ジャクソンや三浦大知といった、国内外の豪華アーティストが参加。ギターミュージックの宇宙旅行が今、始まる。

SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -(初回限定盤)(DVD付)
 

『何者かになるのは決してむずかしいことじゃない』発売中

MIYAVI初のエッセイが11月に刊行。ギタリストとして、UNHCR親善大使として、ハリウッド俳優として、移動し続け、挑戦し続けるMIYAVIの「魂」の遍歴がここに。

何者かになるのは決してむずかしいことじゃない
 

構成・文:ENGLISH JOURNAL編集部 江頭茉里
ENGLISH JOURNAL編集部員。夢は自分が編集した本ばっかりの本棚を作ること。 熱しやすく、冷めにくい。好きなもの・趣味が多すぎるのが悩み。

写真:田村充 編集:GOTCHA!編集部 末次志帆
*1 :国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)。1950年12月14日に設立された、国際連合の難民問題に関する機関。-Wikipediaより

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