気持ちが言葉になる英語の音読法 コール&レスポンスで練習しよう

い歌声を聞きながら、英語の発音を磨いていきましょう。第3回は、ゴスペルの歌詞を使って、気持ちを乗せる「音読」の方法を紹介します。

世界で活躍するゴスペルシンガー、ボイストレーナーのNOBU(のぶ)さんが教える、英語の発音と発声のトレーニング法の連載です。甘くて力強

今回の記事は、5分で読めます。でも、少なくとも今から20分かけてゆっくり実践しながら読み進めてください(笑)。

思いが込められた言葉は、人に届くものです。

私たちは日常、人と会話しています。あまりにも当たり前過ぎて、深く考えたことはないと思いますが、少し立ち止まって、発話のプロセスについて考えてみましょう。

身近な例として、例えばAさんが、友達とファミリーレストランへランチに行ったとします。焼き魚定食を頼んだら、小鉢に大根おろしが付いてきました。

「しょうゆをかけたい」

Aさんはそう思ったものの、しょうゆは手の届く範囲にはなく、友達の近くにありました。そこで、友達に声を掛けました。

「しょうゆを取ってくれない?」

至ってシンプルですが、発話するまでに2つのプロセスが見られます。

  1. Aさんは「しょうゆをかけたい」と思った=思い・感情
  2. その結果Aさんは「しょうゆを取ってくれない?」と尋ねた=発話
イラスト:NOBU

まず思いがあり、ある一定の音やリズムの付いた言葉が発せられます。しかし、「しょうゆ」という単語や、「取ってくれない?」という言い方を知らなければ発話することもできません。そこで、歌や英語のトレーニングでは、「発話:単語や言い方を知る」→「思い:意味を知る」→「思いを込めて発話」という逆のプロセスで磨いていきます。

第3回は、 ゴスペルの特徴的なスタイル「Call & Response」を用いた英語の音読トレーニング についてご紹介します。

Call& Response(コール・アンド・レスポンス)とは?

ロックコンサートで、よくこのようなシーンを見掛けます。

シンガー:Say, yeah!
観客:Yeah!
これを「Call=呼び掛け」&「Response=応答」と言い、このスタイルはゴスペルから来ていると言われています。

こちらの動画を見てみてください。2016年、私がアメリカ・ヒューストンの黒人教会に行ったときの様子です。

ロックコンサート以上の熱気で、牧師が、Say, yeah!(そうだと言おう!)と語り掛け、会衆が、Yeah!(そうだ!)と叫んでいる様子が見られます。

このCall & [Response、ゴスペルの世界では、ただ観客との一体感を作るだけでなく、信仰を互いに分かち合い、魂を鼓舞していくのに必要不可欠なスタイルなのです。

このゴスペルのCall& Responseスタイルを用いて、思いを言葉に乗せて英語で発する練習をしていきましょう! 

歌詞を音読してみよう

まずは、以下の歌詞を発音に気を付けて丁寧に音読してみましょう。patient、proud、disappears、の単語にあるpの発音は、第1回の記事で紹介した、「 発音が難しい『p』のトレーニング法   」を参考にしてください。迫力のあるpの音を出しましょう。

① 普段の2倍のテンションで音読しましょう。(×2回)

② ①をキープしつつ単語を切って発音せず、流れるように音読しましょう。(×2回)

③ ①②をキープして、第2回で紹介した チェスト・ボイスを意識して音読 してみましょう。(×2回)

④ ①?③をキープしながら、第1回で紹介した 横隔膜を使いながら、一息ですべて音読 してみましょう。(×3回)

Love is patient.

Love is kind.

Love is not jealous.

Love is not proud.

Love never fails, and never disappears.

SoLove [one another, God says,

Love one another.

歌詞の意味を確認して「愛」を感じてみよう

思いを込めて音読するために、歌詞の意味を見ていきましょう。

この歌詞は、新約聖書「コリント人への手紙第1第13章」に登場する言葉が元になっています。

Love is patient.

愛は寛容

Love is kind. 

愛は親切

Love is not jealous. 

愛はねたまない。

Love is not proud. 

愛は高慢にならない。

Love never fails, and never disappears.

愛は決して絶えることなく、決して消えることはない。

これらのフレーズ、どこかで聞いたことありませんか?

そう、 キリスト教式の結婚式の中で、牧師さんが新郎新婦に語る聖書の言葉です

「愛は寛容、愛は切、愛はねたまず、高慢にならない」

私はこの箇所を読むと、はぁ、自分にはこんな愛は無理だな・・・と思ってしまいます。自分は寛容じゃない、自分は親切じゃない、ねたむし、高慢になってしまう。それが自分です。

日本語で愛と聞くと、男女の愛、友達との愛、家族の愛など、さまざまなイメージが広がってしまい、正しい理解にならないときがあります。ここでのLoveは、「神様の愛」を意味します。完全な愛のことです。

これこれをしたから愛してくれるよね?という 見返りを求めない愛 。または、自分は愛されるにふさわしくないのに愛してくれる 無条件の愛 。そのような愛を持っていこうという歌です。そして歌詞は、こう続きます。

Love one another. 

互いに愛し合おう。

God says, 

神様がそう言われる。

Love one another. 

互いに愛し合いなさいと。

そのような愛を持って人を愛していこう。見返りを求めるのではなく、無条件の愛で人を愛していこう。そんなこと、自分一人では無理かもしれない。

そんなときは、いつでも神様に祈っていこう。そのような意味を感じながら、もう一度音読してみましょう。

音楽に合わせて、Call役にチャレンジ!

さて、ここから、実際にゴスペルのCall] & Responseにチャレンジです!

まず、この音声を聞いてください。

歌(コーラス)の前に、歌詞を前もってCallしているのが聞き取れましたか?

さっそく上記で音読した歌詞を、このCallのタイミングに合わせて発声しましょう。自分のCallによって、歌が後から付いてくる感じを確かめるようにして、 まずは発声のタイミングをつかんで ください。そしてその次に、 歌っている人を歌詞で鼓舞していくようなイメージで、自分の言葉として少しテンション高めで発声 してみてください!

(録音した際に、CallのGod saysの前に「’Cause」と言ってしまいましたが、気になさらないでください)  

暗記して一人でチャレンジ!

さて、最終段階です。次の手順でCall役を行ってみましょう。

①歌詞を暗記する(所要時間5分)
無茶ぶりですが、歌詞を暗記してください。ゴールは、思いを言葉に乗せることですから、ただ英語の音だけで暗記するのではなく、「愛とは寛容で、親切で・・・」と意味も含めて暗記してみましょう。

②一人でチャレンジ!
Call役のお手本が入っていない次の音声を聞きながら、Call役になり切って発声してみましょう!

いかがでしたか?

意外と、歌う前にCallすることは、難しいと思います。また、歌詞を暗記して、自分の言葉として話していないと出てこないことがわかると思います。

ましてやゴスペルは英語の歌なので、理解してそれを表現することは簡単なことではありません。このCallができるようになると、本当の意味で歌詞を理解し、自分の気持ちを乗せて声に出せるようになるのです。

どれだけ技術があっても、英語の発音がよくても、歌詞を理解して心から自分の言葉として歌わないと、聞く人だけでなく、自分の心にも響かない歌になります。

このように、ただ歌詞をなんとなく歌うのではなく、思いと合わさった生きた英語で歌うことが、聞き手の心に響くのです。

英会話においても、発音にとわわれたり、理解していなくてもわかったふりをして相づちを打ったりすることがあるかもしれません。そんなときには、このゴスペルのトレーニング法を思い出して、会話をリードする気持ちづくりをしていただけるとうれしいです。

次回は、リラクゼーションとコンセントレーションについて紹介します。お楽しみに!

Nobuさんのアルバム

www.nobuhisakinashi.com

 

青山学院大学が主催するゴスペルワークショップで、講師を担当するNOBUさん。

増尾美恵子
文:NOBU(のぶ)

香川県生まれ。Gospel Singer & Director、Voice Trainer、作詞・作曲・編曲家。高校生のときに初めてゴスペルを聴いて感動し、「すべての人に Gospelを」をモットーに、2003年から都内を中心に Gospel Singerとして活動。幼稚園から大学までさまざまな場所で、Gospelを通じて人権などの大切さを伝えている。天皇陛下御即位三十年奉祝 感謝の集いでは、松任谷由実、MISIA、ゆずと共演。ロサンゼルス、ヒューストン、スイス、シドニーの教会でも演奏する。
・Twitter: @NobuhisaKinashi
・Facebook: Nobuhisa Kinashi
・Website: https://www.nobuhisakinashi.com/

編集:増尾美恵子

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