前置詞withの使い方をコアイメージでマスターする~break withのニュアンスを解説できますか?

英文法を支える基礎でありながらも、上級者でもマスターが難しい前置詞。 onwithalong など、基本的な前置詞のコアとなるイメージを覚えることで攻略し、苦手を得意にしていきましょう!

前置詞 withをイメージで攻略

withと聞けば「一緒に」を連想すると思います。 withの意味の理解としては、その連想でほぼ問題はありません。 しかし、この withは、簡単そうでありながら、実に多様な状況で使われる前置詞です。 ある辞書によれば「随伴・同伴」「所有・所持」「道具・手段」「材料・ 成分」「付帯状況」「様態」「対立」「混合」「比較」「 原因 ・理由」などの語義がリストされています。 一方で「随伴」があり、他方に「対立」があるのは、どういうことが納得できないですね。 これらは、コアを通してみると、スッキリしてきます。

意味のとらえ方

withのコアは 「・・・とともに」 であり、そのあり方において 「伴って」 という意味グループと 「手にして」 という意味グループに分かれます。この2つの意味グループがあるところがポイントです。「ともにある状態」が何か(誰か)を伴っているのか、何かを手にしているのかの違いですが、それぞれ、多様な意味の広がりをみせます。

with のコアイメージの「~とともに」から、「伴って」と「手にして」という2つの意味グループに派生する。

「伴って」の with

「伴って」の典型例は、 She walks in the park with her dog every morning. (彼女は毎朝犬と公園を散歩する)やI'm here with Dr. Johnson.([対談の司会で]ジョンソン博士をお連れしました)に見られます。

この「伴って」の感覚はfight with the enemy(敵と戦う)のような状況でも活躍します。この withは辞書では「対立の with」と紹介されていますが、これは間違いです。ここでは、戦いの相手を withで示しているにすぎません。

たしかにThey fought with the enemy. もThey fought against the enemy.も「破らは敵と戦った」の英訳ですが、 againstを使うほうが〈対抗して戦う〉の意が強くなります。 fight with the enemyだと「敵との戦い」というニュアンスになります。 これは、 deal with the big company (その大きな会社と 取引をする)の withと同様です。この場合、 取引の相手が withで示されていることは明白ですね。戦いも取引も「相手とともに行う行為」ということです。

では、Something is wrong with the computer. (何か問題がそのコンピュータにある)のような例の場合はどうでしょうか。これは 「何か問題がコンピュータと伴にある」 という解釈をすれば「なるほど」となると思います。Be patient with others. (他の人には我慢強くあれ)も、他者とともにいるときは我慢強くありなさい、という解釈をすることができます。以下は、同じような例です。

・What's the matter with you? 「どうかしたの?(あなたとともにあるものは何ですか)」
・She is in love with me. 「彼女は私に恋している」
・You're really gentle with me recently. 「最近私に優しいんだね」

この「伴って」の応用の範囲はさらに広がります。 A blue shirt goes with your pants. (青のシャツがあなたのズボンに合う)の withは「同調」のwithと言われますが、これも 青いシャツがズボンとともにある状態でうまく行く(だから似合う) ということです。withといえば、以下のような例が思い浮かぶ人が多いと思います。

・a boy with blonde hair「ブロンドの髪の毛の少年」
・people with nice personalities「よい性格の人たち」
・a car with four wheel drive 「四輪駆動の車」
・a 50-meter pool with a shower「シャワーの付いた50メートルのプール」

これらの例で共通しているのはA with Bで、 「AがBを伴っている」 ということです。a car with four wheel driveだと「四輪駆動を伴った車」ということです。 同様に、people with nice personalitiesは「よい性格を伴った人々」ということですね。

文法用語に「付帯状況」というものがあります。この付帯状況はwithを使って表現されます。With your children away, you must have a lot of free time. といえば「子どもが手を離れたのだから、自由な時間がたくさんあるでしょう」という意味で、with your children awayの部分が付帯状況を表すと言われています。これも、 「子供たちが離れている状態を伴って」という意味合い を読み取ることができますね。

一見、特殊と見える表現にHe has a problem with money.(彼はお金のことで問題を抱えている)があります。これも「お金を伴った問題」と解釈すれば、withの働きが理解できると思います。

withには以下のように状況や条件を表す用法もあります。しかし、これも「・・・とともに」の展開例にほかありません。

・With this in mind, I leave Japan.「このことを心にして、日本を去ります」

・With all her faults, I still love her.「彼女の欠点をもってしても、それでも彼女を愛している」

withの用例の中には、breakやpartなどの分離を表す動詞とともに用いられるものがあり、そのことから 「分離のwith」などいう言い方がされることがありますが、「・・・とともに」のwithと「分離」のwithでは明らかな論理矛盾です。 withに分離の意味があるのではなく、 「・・・と一緒にいる状態を離れる」 と解釈することができます。

例えば、The school decided to break with tradition and accepted the students' proposal.(学校は伝統を捨て学生たちの申し出を受け入れた)といった用例にどうして withが使われているのかが理解されるでしょう。

同様に、leave、stayなどの動詞とともに用いて「・・・に任せて、・・・の元に(預けて)」という意味に訳されることがありますが、これも基本的には、 「・・・と一緒の状態を残して」 ということです。例えば、I'll leave the dog with a friend.(犬は友達のところに預けるよ)は「犬が友達とともにいる状態にして去る」という見方が背後にあると言えるでしょう。

「手にして(でもって)」のwith

次に、 withの意味グループとして「手にして」があります。 これは、何か(誰か)と伴にある関係というよりも、「何かを手にして」、「何かでもって」、という部分が強調されます。そのことから、「道具(でもって)」、「原因・理由(でもって)」「素材・材料・要素(でもって)」「様子・仕方(でもって)」という意が派生するのです。以下は、すべて「手にして」「でもって」のwithの展開例です。

手にして(でもって)のパターン
・〔道具〕 He tried to open the door with a hairpin, but it didn't work . 「彼はヘアピンでドアを開けようとしたがだめだった」<ヘアピンでもって>
・〔原因・理由〕 When I found the cat, she was shivering with cold. 「その猫を見つけた時寒さで震えていた」<寒さでもって>
・〔素材・材料・要素〕 I made this stew with a variety of vegetables. 「いろんな野菜を使ってこのシチューを作った」<いろんな野菜でもって>
・〔様子・仕方〕 She fought the system with great courage. 「彼は体制に果敢に挑んだ」<果敢なる態度でもって>

「何かを手にして」といえば道具が連想されます。辞書ではよく「道具・手段」と手段を併記する場合が多く、両者が紛らわしいことがよくあります。「手段(means)」とは目的(end)を遂げるための方法で、英語では特に「交通手段」を表す際には前置詞のbyを使います。一方、「道具」(tools)は、手の補助手段として使う器具(instrument)で、英語では一般的に前置詞のwithを使います。以下がその例です。

・I’ll send this package by sea.「船でこの荷物を送ります」
・I go to school by bus.「私はバスで学校に通います」
・Eat the noodles with chopsticks.「箸でうどんを食べなさい」
・Fill in the form with a pen.「ペンでこの書類に記入しなさい」

「道具」は手にすることができる具体物(もの)であり、「手段」は「何かを実現するために講じる方法」であって手にするような具体物ではありません。

with chopsticks や with a penなどは「具体的な箸」や「具体的なペン」を思い描くことができます。一方、「手段」は方法なので手にするような物ではなく、公共手段の「バスで」はby bus、「タクシーで」はby taxiのように、冠詞のつかない不可算名詞になる傾向があります。一方、道具は手にすることができるものが多いのでa keyとかa penのように可算名詞になるのがふつうです。

理由・原因を表す場合もwithだと必ず、「・・・でもって」という意味合いがあります 。上の例のshiver with coldは、文字通り、「寒さでもって震える」ということです。「尊厳死をする」に当たるdie with dignityのdignity(尊厳)のように抽象的な名詞の場合も、比喩的に「尊厳をもって(死す)」とwithのコアが生かされています。寒さのcoldや尊厳のdignityは不可算名詞ですが、withを使う限り、「寒さでもって」「尊厳でもって(尊厳を手にして)」という解釈になります。

なお、withはwithoutとwithinの2つの前置詞を構成します。withは〈一緒の状態〉を表すとすると、withoutは〈一緒の状態の外に〉ということから「持たないで、しないで」の意となり、withinは〈一緒の状態の中に〉ということから、「内側に、以内に、範囲内に」の意となるのです。

えば、They went there without me. は、〈私と随伴の状態を外に置いて(=随伴しないで)、行った〉ということから「彼らは私なしでそこに行った」という意味になります。古くは、withoutにも〈外〉の意がありましたが、現代英語では「~なしで」の意味だけになっています。

それでは次回もお楽しみに。第3回は 2022年2月3日(木) 公開予定です!

田中茂範(たなかしげのり) 慶應大学名誉教授。現在は、PEN言語教育サービスの代表として、新指導要領に沿ったオリジナル教材を開発すると同時に、高等学校の英語教育、課題探究コースなどのプログラム開発を手掛ける。教材は50種類を超え、5領域に対応できる体制が整っている。
ブログ: penlanguage.com

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