「復文」をという学習法をご存じですか?ちょっと地味ではありますが、どんなレベルでも始められ、着々と力が付く一生モノの学習法です。復文のやり方を、豊富な例文付きで詳しく教えてくれる書籍を紹介します。
江戸時代から存在する学習法「復文」
本書で紹介している「復文」は、なんと江戸時代から存在する学習法。
当時は英語ではなく、漢文を習得するのに使われていたそうです。漢文を書き下し文にして、また漢文に戻す練習をしていたんですね。 「原文を復元する」から「復文」 です。
とても効果の高い学習法なのに、戦後、漢文教育が衰退するとともに使われなくなってしまったとか。
方法はとてもシンプルで、英語に当てはめると次のようになります。
①英文を日本語に訳して答え合わせをする?日本語訳を見て元の英文を復元し、答え合わせをする
たったこれだけ。 スマホもパソコンも不要で、使う道具は紙と筆記用具だけ です。音声を聞いたり、声を出したりもしないので、紙を広げるスペースさえあればできますね。
①で英語から日本語、?で日本語から英語と、ふたつの言語をいったりきたりすることで、英語の語順や単語が自然と頭に入ります。
また、英文を「言う」のではなく「書く」のがポイント。漢字でも英文でも「読めるけど書けない」というケースはよくありますよね?でも、「書けるけど読めない」というケースはまずありません。
正しく「書ける」ことは「読める」ことにもつながる のです。
本書は、復文トレーニングにもってこいの例文を、見出し文だけで計160題掲載。 80の文法項目と1,500の重要単語が身に付く構成 になっています。
自分の弱点がしみじみ分かる
では、早速、復文に挑戦してみましょう。
本書に掲載している例文の英語レベルは、小学校高学年程度の基本のキから、大学入学共通テストくらいまで。
英検2級あたりまでを網羅していると考えてよさそうです。
さて、最初に 取り組む 「Chapter1‐1」では、英語の基本のキ、5文型を復習します。
Miki dances happily.Misato saw a beautiful rainbow.
Her songs make us happy.
このくらいなら、和訳するのも、それをまた英訳するのも簡単ですね。意味は分かると思いますが、日本語訳はこうなります。
実希は楽しそうに踊る。美里は美しい虹を見た。
彼女の歌は私たちを幸せにする。
これくらいならわざわざノートに書かなくても・・・とも思いますが、本書の教えを守って、しっかりノートに書きました。
最初はこんな感じでラクラクなのですが、分詞構文あたりになるとなかなか厄介に。
Acting on impulse, he abandoned his duties and responsibilities.Not knowing what to say, the lawyer remained silent.
とはいえ、この英文を和訳するのは何とかなりそうですよね。
衝動的に行動して、彼は自分の義務と責任を放棄した。何を言うべきか分からなくて、(その)弁護士は沈黙したままだった。
この日本語文を、また英語に訳します。
いきなり日本語文を見せられて「これを英語に訳して」と言われたら、「えーっと・・・」となってしまいそうですが、先ほど英文を見たばかりなので、割と楽にできます。
ただ、私の場合は、ひとつめの文を、Acting on the impulse ...と、よけいなtheを付けてしまいました。冠詞、苦手なんです・・・。つい先ほど回答となる英文を読んだばっかりなのに、我ながら情けない。
モヤモヤしている部分が、じわじわあぶり出されてくる感じです。次々と取り組んでいくうちに、 自分の苦手なところ、理解が不十分なところを再確認できました 。
苦手なところを自覚すると 同時に 復習できるのですから一石二鳥。いや、なかなかいいですよ、復文。
「Chapter2」に入ると、英文は長く複雑になります。
The police haven't found any clues. The thief seems to have worn gloves in order not to leave any fingerprints when he broke in.
意味は大体わかりますが、ちゃんとした日本語訳にしようとするとなかなか大変。
お手本はこうなっています。
警察は何も手がかりをつかんでいない。(その)泥棒は侵入する際、指紋を一切残さないように、手袋を装着していたようだ。
これを英訳すると、また、glovesにtheを付けてしまったり(theが好きなのか自分?)、fingerprintsの末尾のsを付け忘れて単数にしてしまったりしました。
細かいことではありますが、確かに自分に欠けているところ、文法的な理解があいまいなところです。でも、英文をまるっと覚えておけば、もう 安心 。
文法学習というと、解説を読んで問題を解くのがよくあるパターンですが、これだとカンやまぐれで正解できることもあり、いまひとつ「分かった!身に付いた!」という実感が得にくい気がします。
その点、復文は、最終的には自分の手で英文を書き上げるので、「分かってる!身に付いてる!」という気がして、とても達成感を得られました。
最終的には自己肯定感も上がりそう。私、英語頑張ってる!
新しい趣味としてやってみよう
本書を読んで「へえ・・・」と思ったのは、復文を「趣味」として勧めていること。いろいろな英語学習本がありますが、その学習法を趣味にすることを勧めている本は初めて見ました。
でも、復文で得られる達成感を目の当たりにすれば、それも納得です。 「できた!」という感覚がなんとも楽しく、勉強というプレッシャーを忘れるほど 。
さらに、復文なら、どんなレベルの英文にも応用が可能です。本書に掲載されている例文から始めて、いずれは自分が興味のある分野、英語ニュースや英語の小説にもチャレンジできます。 英文と和訳があれば、どんどん発展させられる のです。
もしかしたら数年後には、ナンプレパズルに次ぐ趣味として定着するかもしれません。
単語や文法をマスターしたいという人はもちろん、英会話やTOEIC向けの学習をしているという人も、新しい趣味にトライするつもりでやってみてはいかがでしょう?
尾野七青子 都内某所で働く初老のOL兼ライター。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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