「英語のアウトプット力に自信がない」?それなら、日々の英語学習にスピーキングテストを取り入れるのがおすすめ!『TOEICテストスピーキング/ライティング総合対策』など数々の著作を持つ浅場眞紀子さんが、英語スピーキングテストの種類や特性、テスト対策法を紹介します。今回は、スピーキング力を上げるための学習のポイントを解説します。
目次
スピーキング力を上げるために、何を改善する?
この第5回と次の第6回では、「スピーキング学習法」というテーマに沿ってお話しいたします。まず、「スピーキングの上達」にどのような要素が含まれるのかを、皆さんと基本に立ち返って考えてみたいと思います。
皆さんは、「スピーキング力を向上させたい」「スピーキングテストのスコアを上げたい」と考えた時、何を 改善 すればよいと思うでしょうか。この先を読まれる前に、ご自分なりの答えを少し時間をかけて頭の中で(または紙に書き出して)イメージしてみましょう。
スピーキングの評価ポイント
さて、どうでしょう。どのような要素が浮かんできましたか?
個人個人で悩みや 改善 のポイントはさまざまだと思いますし、自分だけでは気付けない要素もあると思います。
具体例として、以下に私が指導の中で生徒さんのスピーキング力を測る際に 判断 のポイントにしている観点(主観も入ります)をリストアップしました。先ほどご自身で出した答えと比べてみてください。
Accuracy (正確さ) | ルールに沿って正しく英語をアウトプットする力 |
---|---|
1. 文法・構文 | 語順や品詞の使い方が正しいか |
2. 語彙選択 | 伝えたい意味を正しく伝える語彙を使えているか |
3. 発音 | 相手に伝わる発音で話せているか |
Fluency(流ちょうさ) | 一定の速さを保ちながらある程度止まらずに聞き、話す力 |
4. 流ちょうさ | 音のつながりや意味のかたまりを意識しながら話せているか |
5. スピード | 一定のスピードを保ちながら話せているか |
6. 双方向対話力 | 相手の発話を正しく理解してやり取りができているか |
Complexity (複雑さ) | 抽象的な内容をよりアドバンストな言い回しで話す力 |
7. より複雑な構文 | 関係詞や接続詞を使って複文で話せているか |
8. より複雑な言い回し | 句動詞、上級語彙、長めの修飾を使ってより自然に話せているか |
Appropriateness(適切さ) | 場面に合わせて適切な言い回しを使える力 |
9. 社会的な適切さ | 相手や自分の立場、状況を踏まえた話し方ができているか |
10. 交渉力 | 論理的に自分の意見を 主張 し交渉できているか |
11. メッセージ性 | プレゼンや意見を述べる際に印象的なメッセージを出せているか |
判断 基準 はこれに留まらないですし、何をもって発話を評価するかは、現在も第二言語習得の分野で議論が分かれているところです。また、個々の学習者の目的によっては必要のない要素も含まれるかもしれません。
ただ、多くのスピーキングテストの評価 基準 に照らしても、上記でカバーされている要素は大きく外れてはいないと思います。
「なんとなく」学習より、客観的に欠点を把握 → 改善
ここで私たち学習者が知っておくべきなのは、「 スピーキングとは非常に複雑なスキルの集合体である 」ということと、「上達するためには、 自分の欠点をなんとなくではなく客観的に 把握 し、一つずつ 改善 していく しか道は無い」ということの2点です。
はっきりとお伝えできるのは、「なんとなく」何年も練習してもあまり上達は感じられませんが、 「客観的、かつ集中的に欠点を 改善 する」アプローチなら、1年でも発話は劇的に 改善 ・向上する ということです。
スピーキングテストに対応する場合、まず公式サイトなどで自分が取りたいスコアの評価 基準 を確認します。そこで求められている能力を 具体的に 磨くことで対応能力が上がり、発話そのものの質も上がり、結果としてスコアアップが実現します。
もしあなたが「もっとペラペラ流ちょうに話したい」と考えているとしたら、その 「ペラペラ」になるために足りない要素は何かを具体化する 必要があります。
「主語を言った後に動詞がさっと出てこない」、「日本語で考えたものをそのまま英語にしようとして前に進めない」、「 そもそも 使いたい語彙(動詞)を知らない」、「英語の音声変化を知らないのでカタカナ英語で話してしまう」、「意味のかたまりを意識して話せていないので、おかしなところで文を切ってしまう」、「文を最後まで言い切る力が足りない」などなど、ペラペラになれない理由によってトレーニングの内容も方法も変わります。
まずは文法、語彙、発音を磨こう
先に 挙げた11のスピーキングの評価ポイントの中で、 まず優先しなくてはならないのは「1. 文法・構文」「2. 語彙選択」「3. 発音」 です。
基本の語順(文法)、語彙、発音がすべての土台となりますので、「最低限自分の言いたいことを伝えるのに1~3の要素が足りない」と思われるのであれば、まずはここを磨きましょう。
語彙はあればあるほどコミュニケーションが楽になるので、レベルに関係なく学習を継続します。1~3が自分の目指す発話レベルに満たなければ、当然ながら4以降の条件を満たすことは大変難しくなります。
連載の第1~3回で 「インプットなければアウトプット無し」 とお伝えしてきたのは、このような理由からです。「急がば回れ」。まずは中学英文法で習う要素を発話で躊躇(ちゅうちょ)なく使えるようになりましょう。
▼第1~3回の記事はこちら
独学で自分の欠点を知るには?
スピーキングテストのスコアは、客観的・相対的にあなたがどの程度のレベルにいるのかということを教えてくれます。ただ、スピーキングテストのスコアだけでは自分が 具体的に 何ができて何ができていないかは分かりません。
スピーキングはとても複雑なスキルなので、最も効果的なトレーニングは、きちんとした評価 基準 に基づいてあなたの発話を評価してくれる指導者からレッスンを受けることでしょう。発話中に自分が無意識に何をやっているのかは、なかなか自身では 把握 しきれないものです。
では、 先生につかずにできる限り客観的に自分の発話にフィードバックするには、どのような方法があるでしょうか 。
大事な点は、「文法力・語彙力・発音の知識」があればあるほど自分の発話へのフィードバックも客観的にできる、つまり 基礎力の高い人ほどお金も時間も最低限で効果的に上達できる ということです。
まずは1~3の力をできる限り上げることが大事 ということを、あらためて強調したいと思います。
発話を録音する
スピーキング上達のために必ずやるべきなのは、自分の発話を録音して聞くことでしょう。 自分の録音を聞くだけで、さまざまなことに気付くことができる からです。ここでの気付きが多いほどセルフフィードバック能力が高く、自己学習でも効率的に上達できる 可能性 があります。
こちらはモデルの音声があるテキストを使って、音読の録音をしてみましょう。まずできれば初見で(練習なしでいきなり)テキストを音読します。私は 初見のテキストをどれほど正確に音読できるかで、その人の発話力をある程度 判断 できる と考えています。
初見の音読でわかることには、以下のようなものがあります。
- 単語レベルでの発音が正しいか(=語彙力)
- 意味を理解した読み方になっているか(=構文理解、意味のかたまりへの意識)
- 正しいイントネーションで読めているか(=内容理解、英語の音の理解)
- 流ちょうさ(=音をつなげ、スムーズな発話を維持できるか。音の自動化のレベル)
- 三単現や複数のs、時制が正しく音声化されているか(=文法ルールへの意識)
これらは、モデルの音声とテキストがあれば、自分でもかなり正確に 判断 できるでしょう。
発話をディクテーションする
録音した音声だけで 判断する ことから一歩進んで、次は何かトピックに沿って1分程度発話し、それを録音したものをディクテーション(書き取り)しましょう。
自分が受けたいと思うスピーキングテストに Independent speech(=テーマ、トピックだけ与えられてあとは自由に時間内に話すという設問)があれば、それを利用するのがいいでしょう。例えば、英検の2次試験の最後の問題などから試してみるのはどうでしょうか。自分の持っている級より低い級から始めるのがおすすめです。
参考に、いくつかのテストの自由意見を述べるセクションでのトピックの例を挙げておきます。準備無しに1分話すとしたら、ご自分はどのようにスタートするでしょうか。
これを何回か異なるトピックでやっていくと、自分の発話の癖(語順や時制のミスがある、 so を使い過ぎるなど)に気付くでしょう。
発音 に関して はご自分で 判断する のは難しいので、Wordの「ディクテーション」(PCのマイクで話すと、音声が文字入力される機能)や、その他の無料自動文字起こしアプリなどを使って、自分がいつも通りに話した時にどれほど言葉を拾ってもらえるのか、どれほどAIに理解してもらえるのかを試してみると、自分の発音の弱点を(全てではありませんが)一部確認することができるでしょう。
次の最終回では、スピーキング力を上げるための 具体的な トレーニングについてお話ししたいと思います。
第6回記事は2021年11月17日(水)公開予定!
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浅場眞紀子 慶應義塾大学卒業。コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL)修士号取得。外資企業2社に計10年間勤務後、 ビジネス英語研修会社Q-Leap を愛場吉子と設立。企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスン、グループ研修を手掛けている。共著『TOEICテストスピーキング/ ライティング総合対策』(旺文社)、共著 『話せる英語ドリル300文』 (アルク)など著書多数。
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