世界中の人が聞き取りやすい「無国籍英語」とは?【桂三輝の英語落語】

桂三輝の世界が笑う!英語落語

写真:田村 充

落語家の桂三輝(かつら・さんしゃいん)さんはカナダ出身のネイティブスピーカーですが、今では私たち日本人よりも日本の文化や作法に詳しいかもしれません。もちろん日本語も流ちょうで、「サンシャインさんって英語が上手なんですね」と母語が日本語だと勘違いされるほど!今回は、語学の達人でもある桂三輝さんに、世界各国の人が聞きとりやすい「無国籍英語」について教えていただきます。

▼過去の連載はこちら

英語落語は英語を勉強する日本人にピッタリ

今までにアメリカ、カナダやイギリスなどの英語圏はもちろん、スリランカ、香港、タイ、ネパール、ガーナ、セネガル、ガボンなど五大陸15カ国で英語落語を演じてきましたが、私の英語落語は、英語を勉強中のさまざまな国の人から「聞きやすい」「理解しやすい」とよく言われます

でも、英語にある程度詳しくなると、きれいな文章を作って話したくなるんですよね。これは僕も同じで、以前はいちばん丁寧な日本語の文章で話そうと考えていました。後からわかったことなんですが、これってなかなかスムーズに言葉としてでてこないし、文章が長くなるし、聞き取りにくいんです。

コメディアンとしては、芸は伝わってなんぼ、笑ってもらってなんぼな世界なので、笑わせるため、伝えるためには、お客さんに僕が話している内容を「理解してもらうこと」がいちばん大切なんですよ。

だから僕の英語落語は無意識のうちに、「わかりやすい英語」「よく使う表現」を心掛けているんだと思います。

僕が作ったのは「無国籍英語」

英語落語を演じていく中で、どうすれば「日本の雰囲気」「大阪の雰囲気」を聞いている人に伝えられるかについて、すごく長い間考えて悩んでいました。日本の文化であり大阪の文化である上方落語の背景やよさをしっかりと伝えるためには、ただ落語を英語に訳して演じるだけじゃダメだったんです。

そこで僕が考えて作ったのが「無国籍英語」なんです。

シンプルでちょっと大げさにクリアに話すんです。教科書英語に近いような感じで、例えば、こんな感じです。

I’m sorry.

じゃなくて

I am sorry.

I can’t see you tonight.

じゃなくて

I can not see you tonight.

って感じです。

文法や表現の仕方とかも、なるべく日常でよく使い皆に伝わるようなものを選んでね

僕の母国のカナダの英語でネイティブに落語をすると上手く表現できないものも無国籍英語を使えば、こんなふうにクリアに話すネイティブはいないから、聞いてる人は、「あ、これはどこか違う国のものだな」って感じてくれるみたいです。

だから、大阪弁がわかる人に「サンシャインの英語、大阪弁にしか聞こえなかった」って言ってもらえるとすごいうれしい(笑)。

無国籍英語は、英語がわからない人にも聞きやすいようにと思って作ったわけではないんですが、結果として英語が母国語じゃない国の人たちに聞きとりやすく、わかりやすいものとなっているようです。

日本での実体験を基にした創作小噺は、楽しくて英語の勉強にぴったり

「創作小噺」はどうやって考えるの?ということをよく聞かれるのですが、僕は世の中で起こっていることは、全部面白いと思っています。例えばコンビニにコーヒーを買いに行くだけでも面白いことに出合えます。

落語家とか芸人はいつも面白いことを考えてると思っている人も多いかもしれないけど、実は、そんなことはないんです。

ゼロから話を作るんじゃなくて、本当にあったことを落語家として学んだ話し方やテクニックで伝えて皆さんを楽しませるのが落語家。だから、常に面白いことをキャッチするためのアンテナを張ってる状態かな。

僕の英語落語も僕が実際に日本で体験したことを小噺にしているから、日本の皆さんにとっては身近に感じて楽しめるテーマかもしれないね。

僕の英語落語が、皆さんの勉強の参考になればうれしいです。

桂三輝さんの落語で楽しく英語学習

今回の英語落語は「カタカナ」。これは、一生懸命日本語を勉強しているのに、結局みんなに通じるのは英語だったっていうオチの小噺です。

仕事で日本に行ったことのある外国人とか、ご主人や奥さんが日本人っていう外国人だったら絶対わかってくれる、外国人あるあるなんですよね。ニューヨークでやると、日本に行ったことのある人は「そうそう!」「あるある!」って共感してくれてめっちゃウケてくれます。

小噺:日本語のカタカナは簡単なようで難しい(再生時間:2分44秒)

「無国籍英語」で話すコツ

さて、ここで英語を母国語じゃない国の人たちに聞きとりやすく話すコツをご紹介します。

例えば、こう言いたいとき。

 When I came to Japan 17 years ago, I spoke no Japanese.
17年前日本に来たとき、私はまだ日本語が話せなかった。

話せる、話せないといった言葉を英語で表現するときに多く使われるのが“can”や“do”ですよね。そのため、話せなかったと言いたいときは次のように表現されることが多いでしょう。

I couldn’t speak any English.
She couldn’t understand English at all.
I didn’t speak English very well.

誰でも聞き取りやすい「無国籍英語」で話すときは、次のように表現します。

I spoke no English. 
I speak no English.

speak no ○○で、「○○がまったく話せない」となどと、省略形を使わない英語で話します。

ほかにも、人に発音を尋ねたいときは次のように言いますよね。

I want to know proper pronunciation for this item in Japanese.
私は、このアイテムの日本語の正しい発音が知りたい。

pronunciationだけでも発音を教えてくれますが、自分では発音できていると思っていても、伝わらないときなどがあります。そんなときは名詞のpronunciationをより具体的に説明する形容詞、properを付けて、よりしっかりと教えてほしいというニュアンスも添えて言ってみると、もっと伝わりやすい英語になります。

ちなみに、「単語の発音を知りたい」と言いたいときは、簡単に次のように質問してもOKです。

How do I pronounce this word?
How do I say this word?

早いもので、連載「英語落語」も今回が最終回。

最後に僕にとって、落語とは何か?と聞かれたら、ベタな答えだけど、RAKUGO is LIFE!です。これからも落語のすばらしさを世界中に届けていけるように頑張ります。ブロードウェイの公演も見に来てくださいね。

皆さま、今後ともよろしくご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます!

Thank you so much for reading‼

桂三輝さんの本

笑いながら、楽しみながら、聞いたり読んだりして英語を身に付ける本、発売中! 各噺の中のビジネスや日常で役立つ「表現」「文法」「話術」を例文付きで、丁寧に解説しています。

【音声DL】桂三輝の英語落語

【音声DL】桂三輝の英語落語

 

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桂三輝(かつら・さんしゃいん)

桂三輝(かつら・さんしゃいん)プロフィール
能と歌舞伎に興味を抱き、1999年に来日。2003年からアコーディオン漫談や英語落語の活動を始める。’07年に大阪芸術大学大学院芸術研究科に入学し、落語を研究。’08年、桂三枝(現・六代目桂文枝)に弟子入りし桂三輝と命名される。’13年、在日本カナダ商工会議所文化大使に就任し、北米ツアーを開催。’14年からワールド・ツアーを開始、13カ国を巡る。アフリカツアーも果たし、世界5大陸を制覇。’15年、日本スロべニア親善大使に就任。’19年にはニューヨークの歴史あるオフ・ブロードウェイにある劇場、ニュー・ワールド・ステージにて初めてとなる落語のロングラン公演。さらに、英語、フランス語を使ったワールドツアーを開始し、これまで5大陸15カ国で講演を行い、日本の伝統文化を世界に発信している。YouTubeチャンネル

写真:田村 充、取材・文:塚原 朋子