英語が出て来ない!実際に体験した恥ずかしい英語の失敗談3つ【華恵の世界に出会うノート】

英語が出て来ない!実際に体験した恥ずかしい英語の失敗談3つ【華恵の世界に出会うノート】

小学生の頃からモデルやエッセイストとして活躍し、テレビやラジオでも大活躍の華恵さんに、人との出会いで心が温かくなった、ふんわり楽しい、すてきな出来事を感じたままに伝えていただく連載です。3回目は、華恵さんが体験した英語の失敗談です。

失敗談1:「ソウルフード」は和製英語だった

“What is your soul food?”

英語塾で事務のバイトしていた頃、アメリカ人講師に聞いたことがある。

講師室の奥で、イギリス人、シンガポール人、カナダ人、アメリカ人、いろんな英語圏の講師が集まって、それぞれが子どもの頃に親しんだ料理の話をしていた。近くでその会話を聞きながらパソコンを打っていたら、“How about you Hanae?”と聞かれたのだ。私はアメリカと日本のミックスなので、ニューヨークや日本で食べた料理を答えてから、聞き返した。

「あなたにとってのソウルフードはなんですか?」と。

“My soul food ...? Well, I was born in the north part and ...”

その人は戸惑いながら、自分の生まれ育ちがアメリカの北部であることを長々と話し始めた。なぜか空気が硬くなっている。なぜ・・・?

後日、母に話してみると、呆れた顔をされた。

「soul foodって、英語では、アメリカの南部の料理のことなんだよ。だから、“What is your soul food?”っていう質問は、あなたの南部の料理は何ですか?って聞いたことになるよ。まぁ質問としては変だ。そりゃ、僕は北部の出身だと説明するわ」

やってしまった。

しかも、その場で指摘を受けず、ただ相手を困惑させてしまった。できることなら、あの日に戻って、間違いを正したい。母を前に、私は頭をぽりぽりかいた。

恥はかきたくないもの。

でもそれ以上に困るシーンもある。

失敗談2:空港で搭乗ぎりぎり10分前のサバイバル英語

大学四年生のとき、私はニューオーリンズを訪れた。父と旅行し、帰りに空港まで一緒に行った。そこから父はニューヨークへ、私は東京成田へ帰るため、飛行機は別々だった。じゃあね、と空港カウンターで別れ、手荷物検査場へ行くと・・・。ものすごい長蛇の列。搭乗までは、15分しかない。どうしよう。これは、まずい。

制服を着た体の大きい黒人の女性が通りがかった。彼女を呼び止め、自分のチケットを見せる。女性は眉間にしわを寄せた。そのとき、腰のところに差さっているものが見える。銃かな?違うのかな。なんだか、怖いな。アメリカという国はどうしてこう、威圧感のある人ばかりなんだ。

女性が顔をあげた。私は、彼女の顔を食い入るように見つめる。

“OK, get in the line!”と女性は、けだるそうにでかい声を張り上げて言うと、スタスタと列の後方へ歩いて行ってしまった。

列に並んでくださいって・・・今、並んでるじゃん。でもこれじゃ間に合わないから見せたんじゃん。あー、もう!

頭に来ても、それを伝えられもしない。こういうとき、何をどう言えば、列の前に割り込みさせてくれるだろう。

えっと、時間がないのですが・・・

列があまりに混んでいて心配なのですが・・・

そんな遠回しな表現ばかりが頭を回るが、結局私は搭乗券を握り、女性の後ろ姿を見て口をパクパクさせるだけだった。

1分・・・2分・・・。ジリジリしながら時計を見て、搭乗10分前になったところで、私はしびれを切らした。

アメリカでは、きっとはっきりした方がいいのだろう。私は思い切って息を吸い込み、“Excuse me! Sorry!”と大声で言いながら手荷物検査の前の方へ、人をかき分けながら進んで行った。人々は驚きながら避けてくれる。これだ、こういうことだ。英語は、はっきりしっかりしなきゃいけない言語なのだ。

先頭まで来ると、でっぷり太った係りの黒人男性が検査機の前で、少し高めの椅子に座っていた。彼に訴えよう。

“Excuse me, I don’t have time.”

男性は、おや?という顔で見下ろしてくる。

well, I’m sorry.”

・・・え、それだけ?信じられない思いで、私は再び訴えてみる。すると、奥から別の係員の黒人男性が歩いてきた。“What's going on here?”と私たちの方を見て言う。「飛行機の時間が迫っているので通して欲しいんです!列に並んでるともう時間ないんです!お願いします!」って言いたい。けど、なぜだろう、全然単語が出てこない。焦りもあって、パニックになって、顔がカッカッ熱くなってくる。あまりにイライラして、足をどんどん、と踏んでしまう。するとそれを見た検査官が、

“I don’t know, maybe she wanna pee.”

それを聞いたもう一人の係員は、“Ahaha!”と笑う。

血がさぁっと引いていくように、顔が冷たくなっていく。おしっこをしたいのかもね、だなんて・・・いくらなんでもバカにし過ぎだ。あんた、ふざけんじゃないよ。ヤバい、切れそう。そう思ったところで、係員が“OK, you can get in the line here.”と言って私に笑いかけた。さっきのは冗談だぜ?みたいな顔。いや、許さないよ。

私は、ぐっと係員をにらみながら、列に入り、荷物を通すとダッシュで搭乗口へ向かった。なんとか飛行機には間に合い、私は英語にうんざりしながら、ニューオーリンズを離れた。

それまで、英語を使って大人の口調での文句を、つまり、ちゃんとした苦情や訴えをしたことがなかった。しかも、怒って、焦ると、全然頭は回らなくなる。

最悪のスパイラルを、学んだ。 

失敗談3:幼児言葉で体調不良を訴えた19歳の自分

そういえば、もっと困るシーンもあった。

語学ができなくて困る究極の場所。それは病院だ。

大学生の頃に、テレビ番組でガーナを訪れた。

初めてのアフリカ。出国前には黄熱病や狂犬病などの予防接種をしっかり受けた。ガーナで世界遺産を堪能し、食事どきはクスクスやプランテーンに舌鼓を打った。その帰りの飛行機で体に異変が起きた。

お腹が熱を持っている。背中がこわばる。頭が重だるい。息が苦しい。足が痛い。手も痛い。力が入らない・・・。

トランジットをするオランダのアムステルダム空港に着陸。座席を立ち上がると、足の裏が剣山で突き刺したように痛い。リュックも重くて、肩に食い込むようだ。私は、ぼうっと、歩きながら考えた。

この後すぐに成田行きに乗っちゃえば、寝て起きたら日本だもんなぁ。別に体調悪くても、わざわざ言わなくてもいいかなぁ。それにしても世界がぼやけていく。

先に飛行機を降りたスタッフが先のロビーで待ってくれていた。

「ハナエちゃん大丈夫?顔、真っ赤だよ」

ディレクターに言われ、カメラマンと音声さんにも心配され、すぐに空港内のファーストエイド(医務室)へ連れて行かれた。そこで熱を測ると40.3度。すぐに私はアムステルダム市内の病院へ送られた。

タクシーの中で運転手やディレクターが、「あそこがゴッホ美術館?こっちは飾り窓だ!」などと話しているのが聞こえる。なんでこんなに呑気なのだろう。でも私に、そんなことを言う資格、ないか・・・日本に帰る便は、もう出た頃だろうか。どうしよう。いつ、日本に帰れるのだろう。飛行機のチケット、無駄になってしまったのかな・・・。

大きな病院に着くと、私があまりにヘロヘロでまっすぐ歩けていなかったのか、看護師さんが車椅子を出してくれた。

朦朧(もうろう)としながら通された病室には、妙にセクシーな女医が待っていた。網タイツにタイトのミニスカート、その上から、白衣。後ろを振り返らなくても、付き添いで来てくれているディレクターの鼻の下が伸びていることはわかる。

ここからが、問題だった。

フラフラな状態で、自分の体調不良を具体的に、英語で説明せねばならない。

Anyway, I FEEL REAELLY BAD.”

最初はそれを何度も繰り返した記憶がある。女医は困ったように、どこがどう悪いのか、聞いてくる。私は、何をどう言ったらいいかわからない。日本語でも、果たして説明できたかわからない。頭痛・腹痛・吐き気・寒気・下痢・嘔吐(おうと)・めまい・けだるさ、そういったものはもう全部、感じているのだ。

それでも、せめて何か、具体的なことを言わないと、とは思っていた・・・。

そして私はなんと、英語で、こう言ってしまったのだ。

“My poopoo and peepee doesn't stop ...”

言ってから、子ども英語で恥ずかしいことを言ったことはわかった。そして、よくわからない涙がこみ上げそうになった。英語でちゃんと説明できない情けなさが襲ってくる。もういっそのこと、本当に子どもに戻って、わーんと泣いてしまいたい。

その後、女医は「あなたは肌が黄色い、黄熱病のチェックをしましょう」。と言ってきた。私は呆れて、「日本とアメリカの血が入っているから白人と比べたら少し黄色味がかっているが、いつもと変わらないし、黄熱病の注射もしてきた」と、パスポートに挟んでおいた、黄熱病注射済証明書のイエローカードを叩きつけるように見せた。

黄熱病の検査結果が陰性と出ると、私は病院で点滴を受け、ホテルへ移動した。栄養を取って脱水症状を治し、病院からもらった薬を飲んでから、日本に帰ることとなった。

結局、食あたりだった。

後からカメラマンから聞いたところによれば、私はガーナの空港で、かなり悪くなっていそうな牛乳をガブガブ飲んでいたらしい。そのときは私は仕事の疲れもあったのか、牛乳が悪くなっていたかどうかなんてまったく注意していなかった。でも、確かにそれ以外に食あたりするのに思い当たるものもない。

ホテルの部屋で、ガーナ仕様の薄着になっていた私に、ディレクターは、ジャンパーを買ってきてくれた。そのとき私は初めて、「極度乾燥しなさい」というブランドを知った。私は、何もできず、ただ、テレビをつけてひたすら横たわっていた。ミュージックチャンネルにすると、ブルーノマーズの「Just the Way You Are」が流れていた。海外のミュージックチャンネルのヘビーローテションは、信じられないくらい何度も何度も同じものを流す。10分に一回は流れていただろうか。私はMVを丸暗記するくらい、何度も聴き、見た。

“You're amazing just the way you are.”

下痢・嘔吐を繰り返し、英語もろくにできなかった情けない私に、ブルーノマーズは画面の向こうから歌いかけてくる。今、そんなことを言われても・・・。

幼児みたいな英語を使った19歳の自分。どこが、“just the way you are”なの?私は不思議な気持ちでラブソングを聴き続けた。

窓の外に目をやると、雪が降り始めていた。

来る予定なんかなかった国、町、そしてホテル。

頼りない自分の英語。全然動かない体。状況は最悪だ。なのに・・・。

世界は広いんだよと、妙な清しさが窓から部屋に吹き込むようだった。

華恵さん出演情報

◆TBS『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして出演。

◆「simple style ~オヒルノオト~」JFN<毎週月・火曜日担当  11:30~12:55

◆「渋谷のかきもの」 毎週月曜日 14:10~15:00  (毎月最終週はお休み)
  周波数:87.6MHz アプリ試聴可能 <渋谷のラジオ

◆「華恵の本と私の物語」 第3土曜日掲載 <毎日小学生新聞

華恵

文:華恵(はなえ)

エッセイスト/女優/ラジオパーソナリティー。TBS『世界ふしぎ発見!』にミステリーハンターとして出演など、大ブレイク中。アメリカで生まれ、6歳から日本に住む。10歳からファッション誌でモデルとして活動。小学6年生でエッセイ『小学生日記』(プレヴィジョン)を出版。中学生、高校生で多数のエッセイを執筆し、活躍の場を広げ続ける多才なアーティスト。

華恵オフィシャルサイト|ORIHIME
華恵 | アーティスト マネジメント | テレビマンユニオン | TV MAN UNION
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写真:山本高裕
編集:増尾美恵子