※写真は女優でプロのナレーターの宮本和歌子さんです。
「発音がきれいだね」って言われたい。帰国子女じゃなくても、留学経験がなくても、英語に自信が持てるようになれるんです!女優でプロのナレーターの宮本和歌子さんが発音の磨き方を教える連載。4回目の今回は、発音記号を味方にするトレーニング方法です。
こんにちは、宮本和歌子です。大学卒業後、中学・高校の英語教員を経て、現在は舞台を中心に女優として活動しています。以前、NHKワールドの番組に出演し、同時に番組のナレーションも担当させていただきました。NHKワールドは海外向けの放送局なので、番組はすべて英語です。そのような番組で、帰国子女でもなく、海外居住経験もなく、ただただ日本で英語を勉強してきただけの私のような人間が、どうしてナレーションまで担当することになったのか、そのトレーニング法を書いていきたいと思います。
正しく英語を発音するなら、発音記号を調べるのはマスト
日本語だと、文字を見ただけで発音が分かりますが、英語は文字を見ただけでは発音は分かりません。つづりと発音に明確な規則性がないからです。そこで、頼りになるのが発音記号です。
発音記号をすべて書き込むのが面倒なときは、「ストレス(強勢)」がある部分の発音記号だけでもチェックすればいいと思います。最低でも強く読む部分の発音が正しくできれば、それっぽく聞こえます。
すでに知っている単語こそ調べてみる価値がある
突然ですが、「狼男」は英語でなんて言うか知っていますか?発音は?
正解は werewolf ですが、以前この werewolf(狼男)についてアメリカ人と話していたときに、私は自分の発音が、ネイティブの発音とまったく違っていたことに気付かされました。
私は、werewolf の were を、be 動詞 are の過去形と同じつづりだから、発音も同じだろうと思い込んでいたために、「ワーウルフ」のように発音していました。ところが、相手のアメリカ人に「ウェアウルフ?」と聞き返されたのです。辞書で発音記号を調べてみたら、 / wέərwùlf / 。ショック!
were も wolf も知っている単語だったため、これまで辞書で調べたことはありませんでしたが、思い込みで間違った発音をしていたことを自覚した瞬間でした。
英語のナレーションの仕事のときは、発音が少しでも違うと伝わらないですし、残ってしまうものなので、きちんと発音記号で確認してから臨んでいます。
すでに知っている単語でも、読み方に不安があるときはすぐに辞書で発音記号を確認します。そうすれば、自信を持って発音することができます。
母音の発音記号 /ɑ/、/ʌ/、/ǝ/、/ɔː/ を覚えよう
私は新しい単語を覚える場合、必ず発音記号を書きます。特に母音は要チェック!英語の母音は日本語よりも多いので、区別するのが難しいのです。私が特に注意している、次の母音の発音記号を一緒に見ていきましょう。
/ ɑ / 口を大きく開いて、喉の奥の方から「ア」と発音しよう
スペリングが「o」なので、「オ」と発音したくなるから、注意して!
- concert(コンサート)
- popular(人気)
- not(~ではない)
- box(箱)
- office(事務所)
A: Do you think this concert will be popular ?
このコンサートは人気なの?
B: Yes. There might not be any tickets left. Let me call the box office and ask.
/ ʌ / あまり口を開けずに、短くハッキリ「ア」と発音しよう
- just(ちょうど)
- lunch(昼食)
- hungry(お腹がすいた)
- come(来る)
A: Peter! You called at just the right time. How about lunch together?
ピーター!いいタイミングで電話くれたね。お昼一緒に食べない?
B: Sounds great! I'm so hungry.
最高!お腹すいてたんだよ。
A: Can you come over?
来られる?
/ ǝ / 軽く曖昧に、どこにも力を入れずに、発音しよう
- tomorrow(明日)
- at(~で)
- the(その)
- theater
- across(~を横断して)
- o’clock(~時)
A: Let’s meet tomorrow at ABC Theater.
明日、劇場でお会いしましょう。
A: It’s across the street from the station.
駅から見て通りの向かい側にあります。
B: Let's make it eleven o’clock.
それでは11時にしましょう。
/ ɔː / あごを下げて、喉の奥に力を入れて「オー」と発音しよう
- ought(~するのが当然である)
- all(全ての)
- caught(catchの過去形)
A: You ought not to go too fast.
スピード上げちゃだめだよ。
B: It’s all right, I’m under the speed limit.
制限速度を超えてないから大丈夫だよ。
A: Good, we don't want to get caught speeding.
よかった。スピード違反で捕まりたくないからね。
発音は「耳」だけでなく「目」でも確認する方が身に付く
電子辞書などで単語を調べると、音声が聞けると思うのですが、その場合でも発音記号をチェックした方が正確に発音を確認できます。ですので、正確に発音したい場合は、発音記号を見て、目で見て認識することが有効だと思います。
音だけですと、なんとなくは分かるのですが、自分で音を再現するには、発音記号を見るのが一番だと思います。音声と発音記号と両方、活用すれば、記号と音を同時に、すぐに覚えられると思います。
そして、実際に自分で発音できるようにするには、何度も練習するしかないですね。発音は、口の形、舌の位置、喉の開け具合などで決まってくるので、それが正しくできれば正確な音が出てきます。
辞書の最初の方のページに発音記号表というのがあります。不安なときはそこを確認します。私は、発音記号とは長い付き合いです。これからも発音記号なしでは、英語を話せません。それぐらい頼りにしているものです。
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宮本和歌子さんがナレーターを担当した、「Green and Sustainable Chemistry: Dyeing Systems(人と環境に優しい化学:染色システム)」の動画です。ネイティブスピーカーのような発音を、ぜひ聞いてくださいね。
文:宮本和歌子
早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、中学・高校の英語科教員を経て、現在女優。2017年にはNHKワールド『Japan Railway Journal』に出演(ナレーションも担当)。所属している劇団「狼少年」が、2020年2月第30回下北沢演劇祭に参加します。(下北沢 小劇場B1)」。中外製薬のショートムービー『未来への呼び鈴 - 保健師活動啓発ムービー』に主演。公式Twitterアカウントは @wakako_miyamoto
写真:寺岡祥平/編集:増尾美恵子