※写真は女優でプロのナレーターの宮本和歌子さんです。
「発音がきれいだね」って言われたい。帰国子女じゃなくても、留学経験がなくても、英語に自信が持てるようになれるんです!女優でプロのナレーターの宮本和歌子さんが発音の磨き方を教える連載。3回目の今回は、英語が正しく伝わるように英文に印をメモするトレーニング方法です。
こんにちは、宮本和歌子です。大学卒業後、中学・高校の英語教員を経て、現在は舞台を中心に女優として活動しています。以前、NHKワールドの番組に出演し、同時に番組のナレーションも担当させていただきました。NHKワールドは海外向けの放送局なので、番組はすべて英語です。そのような番組で、帰国子女でもなく、海外居住経験もなく、ただただ日本で英語を勉強してきただけの私のような人間が、どうしてナレーションまで担当することになったのか、そのトレーニング法を書いていきたいと思います。
今回は、強調したいことを強く言ったり、文法をすっきり整理したりすることができる「印」の使い方を取り上げます。
私は、ナレーターの仕事で英文を読むときは、読みやすいように必ず印を書き入れるようにしています。強く読むところ、単語をつなげて読むところ、ひと固まりを一気に読むところに印を付けて練習します。慣れてくると、初めて読む英文でも、どこを強く読めばいいのか、どの単語同士がつながるのか、だんだん勘が働いて分かるようになってきます。
印の付け方例
- 名詞や動詞は強く読む。→〇で囲む
- 意味の固まりを一息で読む。→( )で囲む
- 単語と単語をつなげて読む。→下に線を書く
【強く】読む単語には、大事な意味がある
英文に印を付けるテクニックを知ったのは、小学校の暗唱コンテストに出場したとき。それ以来、ナレーターの仕事をする現在もずっと続けています。
暗唱コンテストでは短い童話を発表したのですが、初めてその童話の英文を見たときには、どこで切れるか、とか、どこがつながっているか、などが分からず、上手に読むことができませんでした。
当時、英語を習っていた先生に暗唱の練習を見ていただくと、「最初の1文を見て。その英文の中で一番大事だと思う単語を丸で囲んでごらん」と教えていただきました。1つの英文の中に大事な単語を見つけることは、それほど難しくありませんでした。なぜなら、その英文の中で「動詞」が特別に見えたからです。
次に続く英文も1文ずつ、一番大事な単語を探していきました。大事だと思える単語は「動詞」のときもあれば、「名詞」や「形容詞」のときもありました。
先生は、「英文を読みながら、丸で囲んだ単語のところにきたら、顔を上げて、先生を見て、その単語を言ってください」と言いました。
大切な単語が先生に伝わるように心を込めて言うと、先生は私の英語が伝わったような表情でうなずいてくれました。1文ずつ、最後までこの作業を行うと、私は、大事な単語は顔を上げて言って、私の英語が伝わっていることを確認することが楽しくなっていました。
さて、皆さんは次の英文のどの単語を強く発音しますか?この記事では、強く読むところは太字になっています。
Where am I? I think I'm lost.
ここはどこ?道に迷ってしまったみたい。
be 動詞はあまり目立たない存在ですが、1つ目の英文では be 動詞の am が一番大事です。2つ目の英文の lost は形容詞ですが、この英文では一番大事な単語であることが直感で分かると思います。
文を【意味のあるひと固まり】で区切って読むと聞きやすい
中学生になり、また暗唱大会に出場する機会をもらいました。このときは、文の構造や意味を理解しないとうまく読むことができないことに気付き、なるべく意味が通じるような読み方をするために、意味の固まりごとに印を付けるようにました。
現在、英語のナレーションの仕事のときには、収録中に必ずネイティブスピーカーのチェックがあります。そのときに文法的な解釈が間違っていて切るところが違っていたりすると、注意されることがあります。ナレーションの仕事ではミスできないので、事前に印を付けておくとスムーズに読むことができます。
次の英文を見てみましょう。ひと固まりで読むところは( )で囲んでいます。
※以降の例文は『『オーレックス英和辞典 』(旺文社)より。
There is a gift (for you) (in the box).
箱の中に君へのプレゼントが入っているよ。
for you と in the box は、ひとまとまりとして読みます。意味が通じる固まりを( )で囲むと、一息読む固まりに意味を乗せて言えるので、相手に伝えやすいです。英文の意味を自分でしっかりと理解していないと、区切り方を間違えることがあります。そうすると、ネイティブスピーカーには奇妙な英語に聞こえてしまいます。
区切り方を間違えてしまうのは、文の構造を理解していないときに起こりやすいようです。そういう場合こそ、文法をもう一度確認すれば、正しい英語が身に付くきっかけにもなります。
【つながる音】にはパターンがある
単語と単語をつなぐように発音する場合があります。それは次の2つの場合がほとんどです。つなげて読む単語と単語は下線でつなぎます。
- 子音で終わる単語のすぐ後ろに母音で始まる単語が続くとき
- 子音で終わる単語のすぐ後ろに I や you があるとき
I looked for the book for an hour.
私はその本を1時間探した。
for an hour の an は子音で終わり、続く hour は母音で始まるので、つなげて発音します。1単語ずつ読むと、「アン・アワー」のようになりますが、an の n と hour の hou をつなげると「アナワー」のように聞こえます。
All you have to do is open your eyes.
君がしなければならないことは目を開けることだけだ。
この英文で、つなげて発音する箇所は2つあります。1つ目は、open と your。2つ目は your と eyes です。子音で終わる open の後ろに your があるので open の n と your をつなげて「オープンニュア」のようになります。また、your の r(子音)と eyes の e(母音)がつながって「オープンニュアライズ」のように発音します。
声に出して発音チャレンジ!
1つの文中で最も重要な単語を見つけることを先に説明しましたが、丁寧に伝えたいと思う単語は必ずしも1つでなくて構いません。2つ、3つあっても大丈夫です。「大事な単語」「つながる発音」「意味のひとまとまり」をそれぞれ見つけてみましょう。
チャレンジ1
あなたは、次の英文をどのように読みますか?
She laughed with relief when she found her child sleeping in the closet .
わが子が押し入れの中で眠っているのを見つけて、彼女はほっとして笑った。
私は、次のように読みました。
(She laughed with relief) (when she found her child (sleeping in the closet)).
我が子が押し入れの中で眠っているのを見つけて、彼女はほっとして笑った。
まず、意味の固まりとして when の前までを1つめの固まりとして( )で囲みます。そして、when 以下を2つめの固まりとして( )で囲みます。さらに、sleeping in the closet もひと固まりに( )で囲みます。
強く発音する単語は、前半の laughed と relief。そして、後半の found、child、sleeping、closet。
チャレンジ2
あなたは、次の英文をどのように読みますか?
Call us immediately if anything goes wrong.
困ったことが起きたら、すぐに電話してください。
私は、次のように読みました。
(Call us immediately) (if anything goes wrong).
困ったことが起きたら、すぐに電話してください。
まず、Call us immediately と if anything goes wrong で2つの固まりに分けます。Call、immediately、anything、wrong を強く読みます。
Call us は、us が母音から始まりますので、call とつなげて読みます。
いかがでしたか?このように、英文を読むときは、どこを強く読むか、どこをつなげて読むかをチェックして、あらかじめ書き込んでおくと読みやすいです。一度印を書いてみて、読んで、うまく読めなかったところを原因を把握して、うまく読めるようにメモを直し、増やしていきます。皆さんも、音読の際はぜひ試してみてくださいね。会話のときにも役立ちますよ。
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宮本和歌子さんがナレーターを担当した、「Green and Sustainable Chemistry: Dyeing Systems(人と環境に優しい化学:染色システム)」の動画です。ネイティブスピーカーのような発音を、ぜひ聞いてくださいね。
文:宮本和歌子
早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、中学・高校の英語科教員を経て、現在女優。2017年にはNHKワールド『Japan Railway Journal』に出演(ナレーションも担当)。2019年7月26日~28日、「狼少年」第10回記念公演(仙台の「せんだい演劇工房10-BOX」)に出演予定。中外製薬のショートムービー『未来への呼び鈴 - 保健師活動啓発ムービー』に主演。
公式Twitterアカウントは @wakako_miyamoto
写真:寺岡祥平/編集:増尾美恵子