英語習得に必要な時間は1000時間。そうは言っても辛いことをそんなに長く続けたくありませんよね。通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんも「楽しくなければムリ!」と断言します。ではどうすればいいのでしょう。
1000時間達成は容易ではない
前回 、中級者の壁を乗り越えるには「1000時間の練習が不可欠」という話をしました。しかも、その1000時間には「3年以内で」という「密度」の条件もありました。
これは、毎日3時間の練習を1年間行うか、あるいは毎日2時間を2年間、あるいは毎日1時間を3年間行うかのいずれかです。まずはそうすることで、英語の「自動化」 *1 を目指しましょう、ということでした。
どうですか、その気になりました?
できれば 「毎日3時間を1年」か「毎日2時間を2年」がおススメ です。自分で進歩をはっきり感じ取れ、そのことが楽しく、 モチベーションの好循環が生まれる からです。
とは言え、1000時間の練習は容易ではありません。私なら、楽しくなければムリ。
皆さんはいかがですか。
「夢中になって気が付けば1000時間」が理想的
子どもがゲームに没頭し、毎日2時間も3時間もやる。親に叱られても、隠れてやり続ける。楽しいことはそんなふうに「やめろ」と言われても続けるものですね。
皆さんにも経験があるでしょうか。
そして、そこにはやり続ける確固とした理由や目的があります。自分の記録を 更新 する、ゲームの成果を友達に自慢する、腕前を披露する、友達と競い合う、などです。
こうした理由や目的がゲームの「練習」を継続させ、ゲームに没頭させるのです。
英語の練習もこんなふうになればしめたものです。「歯を食いしばって1000時間」ではなく、 「夢中になって気がつけば1000時間」というのが理想的 です。
3カ月後の海外赴任が決まっているとか、TOEICで730点をクリアしないと次の昇進試験が受けられないといった、「背水の陣」的な理由や目的があれば別です。
しかし、そうでなければ 自ら理由や目的を探し、夢中になれる練習方法を考え出す 必要があるでしょう。
楽しい練習(その1):自分の趣味で勉強する
楽しいから「やめろ」と言われても続ける。
つまり、「楽しい」ということが没頭するための必要条件です。楽しみ方は人それぞれですが、一般に多くの人におススメできる方法を2つ紹介しましょう。
そのひとつが「自分の趣味で勉強する」ことです。大学時代にジャズをやっていた私は、米国のバークリー音楽院が出版した本を取り寄せ、ジャズ理論を勉強した記憶があります。
大学の授業はさぼってばかりでしたが、この本は楽器を片手に一気に読みました。ページの半分ほどは楽譜でしたので、書かれていることはだいたい想像できました。
また、テニスが好きな私は、大学を卒業したばかりのころ、紀伊國屋書店の洋書売り場でHow to be a Tennis Proというペーパーバックを見つけ、これもまた一気読みしたことを覚えています。イラストがたくさんあり容易に理解できました。
当時の私の英語力はせいぜい英検2級程度でした。 ジャズが、テニスが「楽しい、好きだ」という勢いで読んだ のでしょう。その後もいろいろ読みました。
実は今でもYouTubeで週に3つ4つ、米国発のテニスレッスンの動画を見ています。コーチの早口の英語はリスニングのいい練習になるのでしょうが、そんなことは忘れ、ひたすらテニスの上達のヒントを得ようと夢中に見ています。
繰り返し見ている動画もあります。皆さんも自分の趣味で何か探してみてください。
料理でもゴルフでもガーデニングでも何でも、とにかく好きなもので英語の本や雑誌やネット上の動画などを探してください。
英語のことなど忘れるほど没頭できれば成功 です。
楽しい練習(その2):「よく分かる+1」の英語
楽しい練習にする2つ目の方法は、難易度の調整です。
難しすぎるゲームを楽しめないの と同様に 、 難しすぎる英語は楽しめません 。楽しめないどころかストレスがたまり、英語が嫌いになるかもしれません。
難易度については、あまり頑張らないことです。
自分にとって「よく分かる+1」くらいが適切 なレベルです。
「よく分かる+1」とは、リーディングであれば10行読んで分からない単語が1語程度、1ページあたり5語以内といった英文が目安です。辞書をほとんど引かず読み進められるものです。
シェイクスピアの A Midsummer Night’s Dream は最初の2ページでギブアップだけど、Penguin Readers ( Level 3)の簡単バージョン(Graded Readers と呼ばれる簡易版)なら楽しんで読了できる、といった具合です。
リスニングであれば NHK World の News がおススメです。英語のレベルが易しくコントロールされているわけではありませんが、動画の下に英文でニュースの内容が書かれており、理解の助けになります。
News | NHK World
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自分のブレンドで続けよう
楽しい練習だけで、本当に国際場面に通用する英語力はつくのだろうかと疑問に思うかもしれません。もちろんそれだけではダメです。
自分がどのような目的で英語を使おうとしているのかよって異なりますが、ときにはちょっと歯を食いしばって、あるいは 背伸びして頑張らなければならないことも当然ある でしょう。
ただ、 ポイントはバランス です。
たくさんやらなければ自動化できません。たくさんやるためには「楽しさ」がどうしても必要です。趣味と簡単なものと歯を食いしばるものを1000時間の中にどう配分するかは皆さん次第です。
私のブレンドは「楽しさ」70パーセントです。
予告:次回は「英語をものにする8つの習慣」についてお話しします。
1000時間ヒアリングマラソン
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松岡 昇(まつおかのぼる)
青山学院大学大学院国際政治経済研究科修了。専門は、国際コミュニケーション、社会言語学。現在、獨協大学、立教大学及び大手企業を中心に講義やセミナーを務める超人気講師。 NPOグローバルヒューマンイノベーション協会理事。アルクの通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ。著書も多数ある。