写真:Sipa USA
アルクの英語学習誌『ENGLISH JOURNAL(EJ)』の読者が、EJを使った感想や自らの英語力を生かした取材など、編集部とは違った独自の視点で「おもしろ&お役立ち」英語情報をレポートする「EJ特派員」の活動。今回はEJ特派員のKazuさんが、エド・シーランのインタビュー素材を使ってスピーキング力向上を目指す学習法をご紹介します。
こんにちは、「EJ特派員」のKazuです。
新しい年を迎えて、気分一新で英語学習に取り組んでいる方も多いのではないでしょうか?
ボクはこの1年で、英語の記事やインタビューにたくさん触れる中で自分の視野を広げたいと思うと 同時に 、英語の発信力も高めていきたいと思っています。
今までさまざまなアプローチでEJを使った学習に励んできましたが、今回は「スピーキングで役立つ表現探し」をテーマに、インタビュー記事からボクがリストインした、気になる表現五つをご紹介します。
使用するのは、EJ2月号のエド・シーランさんのインタビューです。エド・シーランさんはイギリス出身のシンガーソングライターです。イギリス英語好きにはうれしい、畳みかけるような軽快なイギリス英語が聞けます!
www.instagram.com「心に残る思い出」
エド・シーランさんは2021年でデビュー10年目を迎えました。インタビューの最初の質問は「今振り返ってみてどんな思い出が心に残っているか」です。彼はキャリアのことよりも、実生活の変化に関する思い出を語っています。その締めの言葉がこちらでした。
日本語訳を 先に 引用するので、英語に自信のある方やすでに本誌を読まれた方はぜひ英訳に挑戦してみてください。
この10年で、そういったことがずっと心に残る思い出だろうと感じます。In my 10 years, I feel like they’re the memories that will stick forever.
「心に残る」ってなんて言うんだろう?と一瞬考えてしまいそうですが、ここで使われているのは動詞 stick です。 stick は自動詞で「(記憶などが)心に残る」という意味があります。他動詞では「~を突き刺す、~を貼り付ける」という意味があり、何かを突き刺したり貼り付けたりして目立たせるイメージですね。
インタビュアーの質問は以下のものでした。
今振り返ってみて、どんな思い出が心に残っていますか?
さて、皆さんならどう答えますか?スピーキングの練習になるので自分なりに質問に答えてみてくださいね。
「会話を中座する」
インタビューは、SNS(英語ではsocial media)の話からスマホの話になります。彼はスマホを持っておらず、その理由について語る中で友人たちと食事に出かけるとよく見かける光景をこのように表現しています。
友人たちが急に会話を中座するのはしょっちゅう目にします。I see my friends all the time suddenly come out of the conversation.
目に映るものを表現するのに使えるのが知覚動詞の see です。では「会話を中座する」をどう表現するのか。日本語をそのまま英語に置き換えようとすると難しくなってしまいます。「会話を中座するというのはどういうことか」を考えると、「会話から抜け出てしまう」ことですから、「~から抜け出る」という意味の come out of ~を使えば簡単に表現することができます。
文字どおりに単語を置き換えるのではなく、その言葉が言わんとしていることを捉えて、自分の中にある基本的な単語に置き換えて表現することが大切だと思わせる表現ですね。
「みんなをすっかり魅了する」
エド・シーランさんがギターを始めた きっかけ と、バンドではなくなぜシンガーソングライターという道を選んだのかという大変興味深い話の中で、 影響 を受けたロールモデルについて話しています。そのロールモデルとなった人物がギター1本で素晴らしい演奏をするのを目の当たりにしたことを、彼はこう述べています。
彼はみんなをすっかり魅了していました。He had everyone in the palm of his hand.
「~を魅了する」であれば、動詞のattractやappeal、 fascinate などが使えますが、ここでは、have somebody in the palm of one’s handという表現を使っています。名詞palmは「手のひら」という意味なので、直訳すると「人を手のひらの上に居させる」となり、そこから「~を意のままに操る、~を(魅了で)とりこにする」という意味になります。表現のレパートリーとして、使えるようになりたいですね。
「吃音(きつおん)が徐々に治っていった」
エド・シーランさんは子供の頃に吃音に悩んでいたそうです。吃音は英語ではstutterと言います。ではどう表現するかというと、
吃音が徐々に治っていきました。My stutter slowly went.
「えっと、『治る』だから、 recover を使う?get betterを使う?」と考えてしまいそうですが、ここではgoの過去形であるwentが使われています。goは何かが「中心から外側へ離れていく」イメージですね。離れて行ってしまった結果、「なくなる」という意味があるので、「病気がなくなる」→「治っていく」となります。
ちなみに ここではstutterが主語の無生物主語の文章です。こういうのをさらっと言えるようになるといいですね。
「自分を幸せにしてくれるのは?だ」
話の内容がバラエティに富んでいて、エド・シーランさんのことを知らない方々でも十分興味を持って聞けるインタビューだと感じます。
彼はしばらく曲作りを休んでいました。さまざまな思いを抱えて休養を決めたわけですが、結果的にそれはいい結果をもたらさなかったと言っています。実際に落ち込んでしまって気が付いたことについて、こう述べています。
自分を幸せにしてくれるのは、曲を作り、こうした感情をまた吐き出すことなんだ、ということに気づきました。I realised that the thing that made me happy was writing songs and getting those feelings out again.
※realisedはイギリス英語表記(アメリカ英語ではrealized)。
過去の気付きを述べているのでここでは過去形になっていますが、これを現在形に置き換えて、「The thing that makes me happy is ~」とさらっと言えるといいですね。皆さんならどう答えますか?ボクも、誰かにインタビューされたことを想像して、スピーキング練習の題材として使っていきたいと思います。
スピーキング力を磨く
ボクが英語学習にEJを使う理由はいくつかありますが、その中の一つに「生の英語を聞き取れるようになりたい!」という思いがあります。
リスニング力を鍛える際に教材として大事なのは、スクリプトがあることです。スクリプトや語注、さらには背景知識の解説等があればどこが理解できていないかが分かりやすいですし、内容もよりよく頭に残ります。スクリプトをしっかりと読み込むことで読解力もつきます。
しかしボクはEJによる学習をそこで終わりにはせず、スピーキング力を磨くための素材としても活用しています。「この表現面白い!」「この表現を自分でも言えるようになりたい!」「読めば分かるけど自分の口からは出てこない表現だから、使えるようにしたい!」という、自分の欲求を満たしてくれる表現たちを収集することができる教材であると思っています。今回はご参考に、無生物主語や関係代名詞を含む文、日本語の直訳では英語にできない文を選んでご紹介しました。
そういった表現を収集したら、ENGLISH JOURNAL ONLINEの連載でおなじみの横山カズ先生が提唱する「パワー音読」を利用して、感情を込めながら何回も音読しています、もっと流暢に話せるようになることを信じて。
2022年もそういった学習を続けようと思います。そしてEJ特派員として学習して気が付いたことや実践したことをこれからもシェアしていけたらと思っています。今年も よろしく お願いします!
Kazu 東京生まれ。首都圏で英語を教えています。外国語(英語)科教員免許保有、英検1級、TOEIC L&R980、国連英検A級取得。約9カ月のイギリス語学留学の経験から、イギリス英語とイギリス文化が好きになり、イギリス愛を貫き突き進んでいこうと決心しています。
ブログ: https://eigo-note-edu.com
Twitter: https://twitter.com/eigo_note_edu
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