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イギリス人にも難しい?!複雑すぎる「イギリス英語」の階級【ブックレビュー】

英語学習者の中には、「アメリカ英語よりイギリス英語が好き」という方もたくさんいます。イギリスの文化や風景にも憧れますよね。そしてイギリスといえば、今でも根強く残る階級文化。「英語」を通してイギリスの階級文化を解説した本を紹介します。英語好きもイギリス好きも要チェック!

イギリスでは話すだけで階級が分かる?

こんにちは!ライターの尾野です。

イギリス英語は、アメリカ英語よりもローマ字読みに近く、日本人にとってはこちらの方が聞き取りやすいとも言われていますね。私も、このちょっとカクカクした感じのイギリス英語の響きが気に入っています。

イギリス英語と言えば、気になるのが発音。

王室の人々やBBCのアナウンサーが話すRP(Received Pronunciation/容認発音)や、下町訛りのコックニー、ビートルズで知られるリヴァプール訛りなど、 イギリス人はちょっと話しただけで、相手の出身地や階級が分かってしまう とか。

もちろん、日本にも方言や訛りはありますし、言葉遣いがきれいな人を見ると「お育ちがよさそう」と思ったりしますが、そんなに細かいところまでは分かりません。

実際のところ、イギリス人は会話通して、相手の階級や立場をどこまで 把握 しているのでしょう?そんな疑問に答えてくれる本『英語の階級』を紹介します。

発音どころか語彙まで違う!

地域や階級による言葉の違いと言えば、先ほども挙げた通り「発音」が気になります。しかし、 イギリスでは階級が違えば、語彙やフレーズまで違う のだとか。

本書の冒頭では、こんな「階級クイズ」が紹介されています。

会話をしている相手の言っていることが聞こえない場合、何と言いますか?

(a)What?

(b)Say again?

(c)Pardon?

それぞれ、「アッパー・クラス」「ミドル・クラス」「ロウワー・クラス」のどれが相当すると思いますか?

私は、(b)は「もう1回言って」というのがぞんざいな感じがするのでロウワー・クラス、(a)はまあ普通かなということでミドル・クラス、消去法で(c)はアッパー・クラスかなと思いました。

答えは、(a)がアッパー・クラス。What?(なに?)と聞き返すのは結構乱暴な気がしますが・・・。

(b)はワーキング・クラス。(c)はこの3つの中では丁寧な感じがしますが、ミドル・クラス、それもロウワー・ミドル・クラスなのだそうです。

このクイズは、2007年にイギリスの保守系の全国紙『デイリー・テレグラフ』に掲載されたもの。

「半ばお遊びのクイズ」とのことですが、日本人にとっては意外なものです。

しかし、ややこしいのはここから。(a)What? がアッパー・クラスの英語だといっても、それほど親しくない人に使うのはやはり失礼で、 一般的には Sorry? がアッパー・クラスまたはアッパー・ミドル・クラスの表現 なのだそう。

(c)Pardon? はもともとはフランス語です。だったらお上品でいいではないかという気がしますが、あえて 外国語を使うという「気取り」がロウワー・クラス的 とのこと。『ドラえもん』に出てくるスネ夫のママみたいな感じでしょうか。失礼ながら、たぶんあの人はアッパー・クラスではないでしょうね・・・。

ここは、 アッパー・クラスなら、I beg your pardon.と文で使うべき だそうです。

「執事」の英語は上流か?

本書のサブタイトルにも出てくる「執事」はどの階級に属するのでしょうか?

パリッとした服装で、礼儀正しく振る舞う彼らは「アッパー・サーヴァント(上級使用人)」と呼ばれますが、アッパー・クラスではありません。

そして、アッパー・クラスでない執事こそが、「正しい英語」「洗練された英語」の使い手なのです。

英国の場合、正しい敬語を使うのは、実はアッパー・クラスの面々ではなく、むしろ彼らに使える使用人、しかもその使用人のトップに上りつめ、直接主人やその客と話すことが最も多い執事だと言えるだろう。
アッパー・クラスでない人が、婉曲表現やフランス語、ラテン語なども取り入れた上品な話し方をする。そこから、生まれる執事のイメージを本書では次のように述べています。
「あくまでも雇い主やその友人たちとは階級が違うが、努力して洗練した話し方を身に付けた」という上昇志向のイメージが背負わされているのである。
自分の地位を向上させようと努力するのは立派なことだと思いますが、一方で、がつがつした印象を与えることもあります。また、上昇志向の強い人って、何となく近くにいるとくたびれますよね。

先ほど出てきた、Pardon?を使う「気取り」がロウワー・クラス的というのも、このあたりから来ているのでしょう。

本書のサブタイトル「執事は『上流の英語』を話すのか?」の答えは、イエスでもありノーでもあるということになります。何とも複雑です。

「階級」は「発音」に現れる

どこの国でも地域ごとに方言や訛りはあるものです。

しかし、イギリスでは、話し手の出身地だけではなく、出身階級まで分かってしまいます。

多くの方言があるのは他の国と同じだが、その方言を話すのはその土地の労働者階級かロウワー・ミドル・クラスである。アッパー・ミドル・クラスとアッパー・クラスはどの土地に住んでいようと、どこの出身であろうと、地方の訛りのない、一種の「標準英語」を話すのだ。
本書の著者は、イギリスの寄宿学校で学びましたが、そこで出会ったスコットランド出身の友人にはスコットランド訛りは全くなかったそう。それどころか、その学校には英国のさまざまな地域から生徒が集まっていましたが、同じ種類の英語を話していたそうです。これがいわゆるRPですね。

この状況が定着したのは、19世紀といわれています。アッパー・ミドル・クラスとアッパー・クラスの子どもが、私立の寄宿学校に入学するようになったのです。

幼いころから学校で話される英語の発音を身に付け、卒業してもそれを使い続ける。おそらく、同じ階級どうしで交流することで、「容認発音」が上流階級の英語として定着していったのでしょう。

20世紀には訛りと階級は切り離せなくなり、それは現代でも続いています

私たち英語学習者も日々感じていることですが、語彙や文法と違って、発音を磨くのはなかなか大変なこと。それだけに、 「英国における発音は、(中略)かなり正確な階級のインジケーター」 になるそう。

イギリス英語の「訛り」とそこから判別される「階級」は、同じ英語のネイティブスピーカーであるアメリカ人にとっても分かりにくいようです。イギリスのドラマがアメリカで放映される際には、「階級」を「人種」に置き換えた「アメリカ版」が制作されることが多いとか。

同じ英語話者にとっても複雑で謎の多い英国の英語が、英語話者ではない人々にとってはいよいよ一筋縄ではいかないものであるのも無理はないのである。
全くその通り。アメリカからイギリス王室に嫁いだ(帰ってきてしまいましたが)メーガン妃も相当な苦労があったことでしょう。

英語話者ではない私たちは、コツコツ勉強を続けるしかないようです。

まとめ

英語学習者なら、語彙や文法、発音など、さまざまな面で「正しく、失礼のない英語」を学びたいと思うもの。

しかし、本書を読むと 「正しく、失礼のない英語」は、時と場合だけでなく、相手との人間関係によっても変わるもの だと分かります。

日本人がわざわざコックニーやリヴァプール訛りを身に付けるのもおかしなものですが、ばりばりの容認発音を話すのも(できたらスゴイですが)、イギリス人にとってはおかしな感じがするでしょう。

できるだけネイティブスピーカーに近づこうとするのも、もちろんいいことだと思いますが、これはもう、多少の間違いは気にしないで、どんどん話してみたらいいのではと思いました。

また、本書を読むと、イギリス国内の「英語の常識」も、時代に連れてどんどん変化していることが分かります。これについて行くには、ネイティブスピーカーでも、日々、アップデートするしかありません。私たち英語学習者なら、なおさらです。

これを大変だと捉えるか、楽しみが尽きないと捉えるかはその人次第。わくわくしながら言葉の世界の旅を続けていきたいと、 改めて 思いました。

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尾野七青子 都内某所で働く初老のOL兼ライター。

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