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英語と心をリズムで繋ぐ!演劇作品の「名シーン・名ゼリフ」をマネしてみよう

リズムで学ぶ英語の世界

文法、語彙、発音などの影に隠れて、英語の「リズム」を習得する大切さは、多くの英語学習者の盲点となりがちです。英語という言語にとって「リズム」がいかに大切かについて、俳優そして英語教育者として活躍されている岩崎MARK雄大さんと一緒に考えていきましょう。

「今日は、ほら、久しぶりにあれが食べたいからあそこの店に行こう。」

「ああ、良いね、そうしよう。」

付き合いの長い人同士の間でのみ成り立つ、このような会話。なぜこれだけで意思疎通ができるのでしょうか?仮に、この二言のみがセリフとして書かれた紙を渡された場合、何をしたらこの会話だけで二人が意思の疎通をできるようになれるでしょうか?

ここでするべきことは二つあります。まず、指示語が指す対象を具体的に決めます。何を食べたくて、どこの店に行くのか。そして次に、指示語だけで二人が意思疎通できるように、それぞれの過去の記憶を想像してみます。

久しぶり」と言っているので、よく行くけどおそらく最近はしばらく行っていない。「あれが食べたい」で伝わるので、何かその店にはお互いが認識している、定期的に食べたくなるような美味しい料理がある。そして「あそこの店」で伝わるような、場所の共通イメージがある。どんな雰囲気の、どんな思い出がある店なのか。

俳優の仕事と通訳の仕事を両方やらせていただいていて、「他人の心(思考、イメージ)を自分の身体を通して言葉で語る」という共通点を毎回強く感じています。心と言葉を結び付ける。改めて言葉にすると、まるで特別なことのようにも見えますが、普段母語で会話をしているときには、私たちが当たり前にしていることです。これが、自分の言葉ではなくなると、途端に難しくなるのです。

自分の言葉ではない英語を、どうやって自分の心と、イメージと結び付けていくか。これが、英語学習においても重要な鍵となります。自分の言葉ではない言語を、自分の心とつなげていく練習。

連載最終回の今回は、その練習にぴったりな、登場人物の心が大きく動いている演劇作品の名ゼリフを紹介します。ここまでの一つの集大成として、名ゼリフと共に、英語のリズムと呼吸、心を結び付ける練習をしていきましょう。

マネして覚えたい英語演劇の「名シーン・名ゼリフ」

星の数ほどある英語演劇の名シーンや名ゼリフ。その中から今回は、リズムがわかりやすく、心の動きを楽しみながら読めるセリフ。そして、なるべく今後、実際に作品を観ることもできそうな、三つのシーンを選びました。

1.  W.シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第一幕第五場より、ロミオとジュリエットの出会いのシーン

一つ目に取り上げるのは、シェイクスピアによる『ロミオとジュリエット』より、ロミオとジュリエットの出会いの場です。

実は物語のはじまりではロザラインという女性に片想いをして悩んでいるロミオ。彼女の姿を見たいがために、敵対する家、キャピュレット家で開催されている仮面舞踏会に友達と忍び込みます。そこでジュリエットに一目惚(ぼ)れ。チャンスを狙い、ジュリエットの手をさっと取り、このわずか14行の言葉を交わしたのち二人は初めてキスをします。

二人のセリフは心臓の鼓動が加速していくようなリズムで、言葉も韻を踏み、息がよく合っているのが感じ取れます。一目惚れの興奮と溢(あふ)れる恋心を呼吸に込めて、リズムに乗せて読み上げてみてください。

ROMEO AND JULIET by William Shakespeare

ROMEO(taking Juliet’s hand)

If I profane with my unworthiest hand

ターターターターター

This holy shrine, the gentle sin is this:

ターターターターター

My lips, two blushing pilgrims, ready stand

ター ターターターター

To smooth that rough touch with a tender kiss.

ターターターターター

JULIET

Good pilgrim, you do wrong your hand too much,

ターターターターター

Which mannerly devotion shows in this;

ターターターターター

For saints have hands that pilgrims’ hands do touch,

ターターター ターター

And palm to palm is holy palmers’ kiss.

ターターターターター

ROMEO

Have not saints lips, and holy palmers too?

ターターターターター

JULIET

Ay, pilgrim, lips that they must use in prayer.

ターターターターター

ROMEO

O then, dear saint, let lips do what hands do.

ターターターターター

They pray: grant thou, lest faith turn to despair.

ターターターターター

JULIET

Saints do not move, though grant for prayers’ sake.

ターターターターター

ROMEO

Then move not while my prayer’s effect I take.

ターター ターターター

(He kisses her.)

日本でも映画館での公開が予定されている、英国ナショナル・シアターの最新版『ロミオとジュリエット』より、こちらの動画も参考にしてみてください。

2.  W.シェイクスピア『ハムレット』第三幕第一場より、ハムレットの独白

二つ目は、演劇の名ゼリフといえば必ず登場するこちらのセリフ。リズムが分かりやすいシェイクスピアより、ハムレットの独白、「To be or not to be」。

先代の国王である父が亡くなってすぐ、母が父の弟である叔父と結婚し国王に。その事実を受け入れられないハムレットのもとに、父の亡霊が現れ、その叔父に毒殺された、復讐してくれ、と伝える。心を引き裂かれたハムレットは復讐を誓うが、なかなか行動に移せずに悩む。その、行動するか、しないかの大きな岐路に立ち、生き様について思考するセリフとなります。

先ほどの突っ走るようなロミオとジュリエットのセリフと比べて、リズムが不規則になっており、不安定さ、心の悩む様子が感じられるセリフです。二つの選択肢の間で引き裂かれる呼吸で、リズムのブレを感じながら読み上げてみてください。

HAMLET by William Shakespeare

HAMLET

To be or not to be—that is the Question:

ターター ターターター

Whether ’tis Nobler in the mind to suffer

ターターターターター

The Slings and Arrows of outrageous Fortune,

ターターターターター

Or to take Arms against a Sea of troubles

ターターター ターター

And, by opposing, end them. To die, to sleep

ターターター タ タ ターター

No more—and by a sleep to say we end

ターターターターター

The Heartache and the thousand Natural shocks

ターターターターター

That Flesh is heir to? ’Tis a consummation

ターター ター ターター

Devoutly to be wished. To die, to sleep

ターターターターター

To sleep, perchance to Dream. Ay, there’s the rub,

ターター ターターター

For in that sleep of death what dreams may come,

ター ターターター ター

When we have shuffled off this mortal coil,

ターター ターターター

Must give us pause.

ターター

音声のみですが、マーベル映画のロキ役で世界的にもスターとなったシェイクスピア俳優、トム・ヒドルストンによる台詞を参考にご紹介します。

3.  トニー・クシュナー『エンジェルス・イン・アメリカ』、第二部:ペレストロイカ、第6場よりロイ・コーンの長台詞

三つ目は上級者向けです。現代劇で、言葉のリズムは不規則。歌に少し近いシェイクスピアの詩のリズムと比べて、日常会話に近いリズムとなります。

『エンジェルス・イン・アメリカ』は、ピューリッツァー賞やトニー賞も受賞している名作現代戯曲。2018年にアンドリュー・ガーフィールド主演でトニー賞のリバイバル賞を受賞し、近年再び注目を集めています。感染症、政治、宗教、同性愛、人種差別など1980年代のアメリカの社会問題を、リアルとファンタジーも織り交ぜながら描きあげた、全二部合わせて7時間半にも及ぶ大作戯曲です。

その中に登場する、権力主義者で保守派有力者の弁護士、ロイ・コーン。実在の人物をモデルにした役で、1950年代のアメリカで大物政治家の右腕として「赤狩り」で大活躍した人物。社会的イメージが弱者だからと自身が同性愛者であることを最後まで認めず、最期までエイズだということも認めませんでした。

そんな彼が、病が進行し病床に伏しているとき。看護師が、コネがあるなら、エイズ治療薬を個人的に手に入れた方がいいと助言します。一人になった彼は早速知人に電話をかけて、薬を手に入れろと脅迫するわけです。

テレビドラマ版ではアル・パチーノが演じていたこの役。2018年版ではブロードウェイの名優ネイサン・レインが好演しています。トニー賞で最優秀助演男優賞を受賞した彼の演技の映像を参考に紹介します。緩急と強弱の振り幅の激しさ、勢いをマネしてリズムで遊んでみてください。

ANGELS IN AMERICA by Tony Kushner

ROY:

Yeah who is this, the operator? Give me an outside line. Well then dial for me. It’s a medical emergency, darling, dial the f------ number or I’ll strangle myself with the phone cord.

202-7(seven)33-8525.

(Little pause)

Martin Heller. Oh hi, Martin. Yeah I know what time it is, I couldn’t sleep, I’m busy dying. Listen, Martin, this drug they got me on, azido-methatalo-molamoca-whatchamacallit. Yeah. AZT.

I want my own private stash, Martin. Of serious Honest-Abe medicine. That I control, here in the room with me. No placebos, I’m no good at tests, Martin, I’d rather cheat. So send me my pills with a get-well bouquet, PRONTO, or I’ll ring up CBS and sing Mike Wallace a song: (Sotto voce, with relish) “The Ballad of Adorable Ollie North and His Secret Contra Slush Fund.”

英語で演じる際に「リズム」について意識することは?

シェイクスピアから現代劇まで、恋から脅迫まで、異なるリズムと心情のセリフを紹介しました。聴き比べて、読み比べてみると、ミュージカルのように曲はなくとも、心と連動するリズムの豊かさが感じ取れたのではないでしょうか?

英語で演じる際には、この強弱のリズムと心情のつながりを意識的にコントロールします。観客にとって一番心地よいリズムを基準に、そこからどの方向に変化させていくのか、呼吸のリズムで印象をリードしていくわけです。乗るのか、あえてずらすのか。強く刻むのか、平板にしていくのか。加速するのか、緩めるのか。リズムで言葉の届き方が大きく変わります。

そして、これは演技だけでなく、英語でのコミュニケーション全てに共通しています。文法の例文でも、リスニングのテストでも、リズムと切り離して英語の実体をとらえることはできません。リズムは心と連動しています。英語の表現で、 "Say it like you mean it!” (言葉に想いをこめて!)という言葉がありますが、今後もそれぞれの英語との付き合いの中で、言葉とリズム、そして心をつなげる習慣を作っていってください。もう少し実践してみたい方は、リズムでシェイクスピアを音読する講座もやっているので、気が向いたら遊びに来てみてくださいね!

それでは、短い間ですがどうもありがとうございました。Enjoy your English studies and enjoy the English rhythm! See you again!

岩崎MARK雄大さんご出演のコンセプトムービー『I’m Shakespeare.』のご紹介

演劇プロデュースカンパニーのカクシンハンが、CM・PV・映画などで多くの映像作品に携わってきた映像監督薮内省吾氏を迎え、演劇空間だけでも、映像空間だけでも表現のできない、実験的な作品として、コンセプトムービー『I’m Shakespeare.』をYoutubeにて公開。こちらに岩崎MARK雄大さんも出演しています。

【カクシンハン 木村 龍之介×映像監督 薮内 省吾】『I’m Shakespeare.』

岩崎MARK雄大

岩崎MARK雄大(イワサキ マーク ユウダイ)東京大学文学部(英米文学)卒業。NY出身。在学中より俳優として活動するほか、演劇や英語を利用した教育や国際的な社会活動にも意欲的に取り組み、通訳やイングリッシュコーチとしても活躍中。令和2年度神奈川県児童福祉審議会推薦図書『さくらまつ』(銀の鈴社)英訳。NODA・MAP『フェイクスピア』に出演。
https://kakushinhan.org/