ハイスクールのストレス【オレゴン12カ月】

オレゴン12カ月

渡米して20年以上がたち、現在はオレゴン州ポートランドで暮らす大石洋子さん。家族や身の回りで起こった出来事や季節のイベント、日米文化の違いなどにまつわるお話を現地からお届けします。

わが家の娘はアメリカのハイスクール1年生だ。5年制の小学校と3年制の中学校から数えて、9年生ともいう。

当地のハイスクールは4年制で、1年生から4年生までそれぞれの学年をfreshmansophomore、junior、 senior と呼ぶ。フレッシュマンとジュニアはどちらが若いの?とか、ソフォモアって何よ、などと慣れないうちは思ったものだ。数字を使った方がわかりやすそうなものだが。ちなみにソフォモアとは「たくさん本を読みあさるが読みの浅い者」という意味だそうである。

授業はすべて選択制だ。国語や数学、外国語などの必修科目はあるけれど、レベルに応じて取るので、学年が違う生徒たちが一つのクラスの中にいる。娘が通っていた中学では数学を少し先取りして勉強していたので、高校1年目の今は2年生(ソフォモア)の生徒たちに混じって図形のクラスを取っているそうだ。

理科や社会も必修だが、幾つかの選択肢から選ぶことになっているから、9 年生全員が同じクラスを取っているわけではない。

選択科目の分野は多岐にわたる。美術や音楽などのアートはその昔に私が通った日本の高校にもあったが、娘のハイスクールではさらに細かく分かれている。コーラス、オーケストラ、デザイン、グラフィックアートなどに加え、演劇や作曲、写真などもある。料理という科目もあって、これは日本の家庭科というよりは、将来プロの料理人になるとか、外食産業の仕事に就く、などの目標がある生徒向けのようである。また、出版、コミュニケーションと題した分野にはyear book(日本でいうところの卒業アルバムのようなものだが、全学年の生徒が載っている)制作というのもあるし、「アカデミック・センター」というから何かと思えば自習の時間だったり、また、先生のアシスタントとして授業に参加するという選択肢もある。これらはどれも、単位としてカウントされる。

上記のような選択肢が掲載されたコースガイドは100ページ以上にわたり、読むだけで骨が折れる。単位が足りないと卒業できないこともあるからクラス選びには慎重になり、6人ほどいるカウンセラーと呼ばれる先生に相談に行ったりもする。

オレゴン12カ月

イラスト:尾崎仁美

放課後には私が娘を車で迎えに行き、習い事であるフェンシングのクラブに連れて行く。時々、同じハイスクールに通っていて、同じクラブでフェンシングも習っている2 年先輩のジェニファーを一緒に乗せていくことがあるのだが、その時の2人の会話に耳をそばだてていると、「ストレス」という言葉が何度も出てくるのでビックリする。私が高校生だった頃、ストレスなど感じていたっけ?

彼女たちのストレスの源は、勉強だ。アメリカのハイスクールは、宿題がやたらと多い。それも数学や国語だけではなく、理科や社会の宿題も出る。数枚のレポートやプレゼンテーションの準備、おまけに小テストもしょっちゅうあるから、高校生たちは毎日勉強しなくてはならない。選択科目に「自習」があると書いたが、この時間に寝たりする子はほとんどおらず、宿題をやるための時間として使うのだそうである。

ウチの娘は毎日フェンシングの練習をして7 時半頃に帰ってくる。夕飯を終えて8時半頃から勉強を始め、宿題を終わらせてベッドに入るのは12時近く。自慢じゃないが、私は高1の時にはまるで勉強しなかった。テスト前だってそんなに勉強したかどうか。わが娘ながら頭が下がる。

そんなにムキになって勉強しているのは、ウチの娘が特別いい子だからというわけではない。アメリカでは、高校の成績がGPA(GradePoint Average)という数値で表され、大学受験に大きく関係してくるからである。オールA なら4.0となるその数値は、文系の子は文系の科目だけ、というようなことはなく、すべて加算されて平均化される。全方位的に勉強しなくてはならないアメリカの高校生は、つくづく大変である。

2学年上のジェニファーは、IBプログラムというのを取っているから、さらに大変だ。これは、International Baccalaureate( 国際バカロレア)というプログラムで、大学レベルのカリキュラム。このIBプログラムを取って最終試験にパスすると、その分野の大学レベルをクリアしたという証明になる。IBプログラムを取ると、GPAに点が加算されて大学入試に有利になるし、また、その分野の基礎コースをすでに修了していると見なされるので、大学では基礎を飛ばして、すぐに上級のクラスを取ることができるようになる(その結果、べらぼうに高い大学の学費が安く抑えられる)。

私が高校生の頃には、数学の小テストをさぼって喫茶店に行ったり、勝手に早退して映画を見に行ったりしたものよ・・・と遠い目をしながら言うと、娘は「あり得ない!」と目を丸くするのだ。娘の通う公立高校はポートランドのダウンタウンの端っこにあって、少し歩けばカフェや映画館などのお楽しみがたくさんあるのに。親として安心ではあるが、ちょっとかわいそうな気もしてくるのであった。

アメリカのオレゴン州ってどんなところ?

アメリカ北西部に位置する、全米屈指の美しい景観を誇るオレゴン州。IT、バイオテクノロジー、環境関連産業の成長目覚ましく、ナイキなどのスポーツ・アウトドア企業も多い。州都はセイラム、最大の都市は人口約60万のポートランド。

文:大石洋子
エッセイスト。1993年、夫の海外赴任でアメリカ・ニュージャージー州へ。2003年には異動のためオレゴン州に転居。現在は、日に日に生意気になる16歳の娘に手を焼く傍ら、月に2回、Boiled Eggs Onlineにオレゴンでの生活をつづっている。

本記事は『ENGLISH JOURNAL』2019年3月号に掲載された記事を再編集したものです。