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ジェンダーレスで新しい価値観を象徴する失恋ソング【EJ’s Playlist】

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「今聴いてほしいアーティスト」と関連する楽曲を音楽が伝えるメッセージや社会的・音楽的文脈などと合わせて高橋芳朗さんが解説します。

今月のアルバム

Conan Grayの『Kid Krow』を紹介します。

Kid Krow [Explicit]

Kid Krow [Explicit]

  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

アイルランド人の父親と日本人の母親を持ち、歌手を始める前はYouTuberとして活動。2018年にデビューEP『Sunset Season』をリリースし、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ、BTSなど大物アーティストからも注目、絶賛される期待の新人アーティスト。

TikTokでバズったコナンのシンボルともいえる楽曲「Heather」

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写真:ロイター

1990年代中盤以降に生まれたデジタルネイティブの世代、いわゆる「Z世代」。そのアイコンとしてビリー・アイリッシュに次ぐ存在と目されているのがカリフォルニア出身の22歳、コナン・グレイだ。2018年にEP*1 『Sunset Season』でデビューした彼は、2019年のシングル「Maniac」で一躍ブレーク。続く2020年3月発表のファーストアルバム『Kid Krow』も全米チャート初登場で5位にランクインするヒットを記録している。

そんなコナンのシンボルともいえる楽曲が、TikTokでバズったことで現地の若者たちの間で流行語になりつつあるという『Kid Krow』収録の「Heather」だ。コナン自ら「今の自分の恋愛観について正直に語っている」と説明するこの曲は、報われない愛の行方を赤裸々につづった悲恋のラブソング。意中の相手の完璧なガールフレンド「ヘザー」に嫉妬しながらも、自分が彼女だったらよかったのに、と吐露する主人公のやりきれない思いに胸を締め付けられる。

Why would you ever kiss me? / I’m not even half as pretty / You gave her your sweater, it’s just polyester / But you like her better / Wish I were Heather

なんで僕にキスしたの?/僕は半分も美しくないのに/彼女にセーターをあげたんだね、ただのポリエステルだけど/でも君は彼女の方が好きみたい/僕がヘザーだったらよかったのにな

主人公が思いを寄せる相手の性別が特定されていないことから、ジェンダーレスな時代の新しい価値観を象徴するラブソングとして注目を集める「Heather」。この曲のヒットをきっかけに「誰かに憧れられるようなすてきな人物」を指すようになった「Heather」は、今では相手を称賛する意味で使われることも多いのだとか。この楽曲が巻き起こした現象について、コナンは「誰にでもこの歌に出てくるヘザーのような存在がいるってことなんだと思う」と話している。

Z世代(ジェネレーションZ)を代表する曲5選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。

  1. everything i wanted by Billy Eilish
  2. Supalonely feat. Gus Dapperton by BENEE
  3. Care by Beabadoobee
  4. Bags by Clairo
  5. i wanna be your girlfriend by girl in red

 

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年3月号に掲載した記事を再編集したものです。

*1:EP:Extended Playの略。シングルよりは長く、アルバムよりは短い収録時間の作品。

高橋芳朗音楽ジャーナリスト、ラジオパーソナリティ、選曲家。TBSラジオ「ジェーン・スー生活は踊る」にレギュラー出演中。著書に『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』(スモール出版)、『生活が踊る歌』(駒草出版)など。