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「youthquake」「dumpster fire」ってどんな意味?【2016~17年を表す英語】

「youthquake」「dumpster fire」ってどんな意味?【2016~17年を表す英語】

今では当たり前に使われている言葉も、その年の出来事や世界情勢の変化によって生まれました。本記事では、2016~2017年にアメリカとイギリスで流行した言葉やオックスフォード英語辞典に登録された言葉をご紹介します。新語と流行語ができた背景を探り、世界がどのように変わってきたのかを振り返ってみましょう。

※この特集記事では、2010~2019年にアメリカとイギリスで流行した言葉や新しくできた言葉を、2019年からさかのぼってご紹介します(6回にわたり、2020年12月11日、12月21~25日に公開)。

2017年の主な出来事

日本

  • プレミアムフライデー開始
  • 陸上の桐生祥秀選手が100m走で9秒98を記録
  • 歌手の安室奈美恵さんが引退発表
  • 北朝鮮が弾道ミサイル発射、Jアラート発令

 

海外

  • ドナルド・トランプ政権の発足
  • 金 正男氏暗殺事件
  • フランス大統領に史上最年少のエマニュエル・マクロン氏が当選
  • カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞受賞

Word of the Year【2017】

American Dialect Society (ADS)とOxford University Press (OUP)がそれぞれ選んだアメリカとイギリスの「その年を表す言葉」を紹介します。

US

fake news

アメリカでトランプ政権が発足した年の言葉に選ばれたのは、トランプ大統領がよく口にするfake newsでした。この言葉には、「真実の情報だとして流された偽のニュース」と「うそだとされた本物のニュース」という2つの意味があります。前年の候補にも入っていたのですが、その際は前者の「虚偽のニュース」という意味しかありませんでした。しかし2017年、トランプ大統領がこの言葉を繰り返し使ったことで、意味がどんどん広がっていきました。同大統領が、たとえそれが真実のニュースであっても、自分が同意できないものには「フェイクニュースだ」と主張していたためです。イギリスの2016年の言葉に選ばれたpost-truthと併せて考えると、背景理解が深まるかもしれません。

Fake news” is what people say when they don’t like the facts that are being presented.

「フェイクニュース」とは、提示された事実が気に入らないときに人々が使う言葉だ。

UK

youthquake

「若さ」を意味するyouthと「(地震などの)震動、揺れ」を意味するquakeを合わせた造語です。「若者の行動や影響から生まれる文化的、政治的、社会的な著しい変化」と定義されています。この単語自体は、特に新しいわけではありません。OUPによると、1965年に雑誌『Vogue』で使われたのが最初で、当時は1960年代のロンドンで花開いた若者文化を指したものでした。2017年の言葉として選ばれた背景には、同年イギリスやニュージーランドで行われた総選挙で、若年層が記録的な投票率を示したこともありました。文化のみならず、政治の世界にも若者の発言力が影響している、そんな時代を象徴する言葉です。

Millions of students around the world joined the “Fridays for Future” youthquake.

世界中の何百万人もの学生が、若者の活動である「フライデー・フォー・フューチャー」に参加した。

Short List【2017】

大賞には選ばれなかったものの、最終選考に残った単語やフレーズも、その年を表す重要なものです。その中からいくつかをピックアップしてご紹介します。

US

take a knee

黒人に対する警察の暴力的な差別への抗議として、アメリカンフットボールのコリン・キャパニック選手は2016年8月、プレシーズンマッチの国歌斉唱の際に、ベンチに座ったまま起立しませんでした。この態度には賛否両論ありましたが、後に「より礼儀正しい姿勢」として片膝をつくようになり、これがスポーツの場で人種差別に抗議する象徴的な形になりました。

The NFL initially banned athletes from taking a knee during the national anthem.

ナショナル・フットボール・リーグは当初、国歌斉唱中に選手たちが片膝をつくことを禁止していた。

alternative facts

日本語では「もう一つの事実」と表現されるこの言葉。「明らかに事実でないこと」を「もう一つの事実だ」と言って、あたかも事実であるかのように主張した、当時のアメリカのケリーアン・コンウェイ大統領顧問の発言です。この年の大賞を取った言葉、“fake news”と共に、トランプ政権を物語るフレーズです。

The TV host told Kellyanne Conway that alternative facts aren’t facts, they are falsehoods.

テレビの司会者はケリーアン・コンウェイに、もう一つの事実は事実ではなく、虚偽であると言った。

#MeToo

2018年の大賞、“toxic”でも少し触れましたが、アメリカの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクシュアルハラスメントの告発をきっかけに、主にSNS上で展開された運動です。アメリカのみならず、ヨーロッパやアジアへも広がりました。

Many people posted on Instagram about their past experiences of sexual assault using #MeToo.

多くの人が#MeTooを使って、性的暴行された過去の経験をインスタグラムに投稿した。

UK

antifa

2020年にも相変わらず話題になっていた単語です。antifascistsの略称で、「反ファシスト勢力」のこと。極右に対抗する動きで極左とされています。日本語では「アンティファ」や「アンティーファ」と表記されることが多いようです。

Protesters wearing “Trump 2020” T-shirts were confronted by others they described as being members of antifa.

「トランプ 2020」と書かれたTシャツを着たデモ参加者たちは、アンティファのメンバーだという人々と対立した。

white fragility

言葉そのものは「白人の脆弱(ぜいじゃく)性」という意味ですが、人種差別などの話題になった際に、白人が居心地悪く感じたり自己弁護したりしてしまうような状況を指します。もともとは2011年にワシントン大学のロビン・ディアンジェロ准教授が書いた論文のテーマで、2018年に同タイトルの本も出版されています。

The term “white fragility” was coined by American professor Robin DiAngelo.

「white fragility」という用語は、アメリカのロビン・ディアンジェロ教授によって作られた。

broflake

伝統的で保守的な考えを持ち、自分の考えに相反する進歩的な態度にはすぐ立腹してしまう男性を表す言葉です。2018年にsnowflakeという言葉がはやりましたが、このflakeと「男性の友達」を意味するbro-を合わせた言葉です。

The broflake CEO can’t stand people with liberal opinions, so he fired the employee.

保守的な考えを持つ最高経営責任者は、リベラルな意見を持つ人々に耐えられないため、その従業員を解雇した。

New Words【2017】

毎年、オックスフォード英語辞典(OED)に新しく掲載される単語は数え切れないほどあります。その中から、特に興味深いものを厳選してご紹介します。

hate-watch

日本語でも「ヘイト(hate)」はかなり一般的に使われるようになってきました。watchが付くhate-watchも、イメージどおりのわかりやすい言葉です。誰かを批判したり嘲笑したりすることを目的に、テレビなどを見ることを意味します。

Some people hate-watch on social media because they want to argue with the person they’re watching.

誰かについていろいろ言いたいがためにソーシャルメディアを見る人もいる。

genericide

商標名が普通名称化することを指す言葉です。自社商品が社会に浸透するのはよいことに思えますが、自社ブランド名が他社製品にも使われてしまうため、商標名の所有者にしたら知的財産の面で痛手となります。そのため、「殺し」を意味する言葉「-cide」が付いています。

Well-known examples of genericide are escalators and zippers.

商標名が普通名称化された例としてよく知られているのは、エスカレーターとジッパーである。

winterval

冬はfestive season(お祝いの季節)などと呼ばれます。やはりキリスト教のクリスマスがお祝いの中心ですが、キリスト教徒以外の人たちにもお祭り気分を楽しんでもらうために、宗教色をなくしたwinterval(冬のお祭り)という言葉が使われるようになりました。

Due to the pandemic, I can’t go to my parents’ place for winterval this year.

今年はパンデミックのせいで、冬のお祭りのための帰省ができない。

2016年の主な出来事

日本

  • 北海道新幹線が開業
  • オバマ大統領(当時)が広島訪問
  • 小池百合子氏が都知事に当選
  • ポケモンGO、日本登場
  • 築地市場の豊洲移転延期を発表

 

海外

  • イギリスがEU離脱決定
  • 地球温暖化対策パリ協定発効
  • 台湾総統に初の女性、蔡 英文氏
  • テリーザ・メイ氏がイギリス首相に就任
  • ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領選で当選

Word of the Year【2016】

American Dialect Society(ADS)とOxford University Press(OUP)がそれぞれ選んだアメリカとイギリスの「その年を表す言葉」を紹介します。

US

dumpster fire

dumpsterは、ビルや庭仕事などで出たごみを、収集されるまで入れておく大きな金属製のごみ入れを指します。直訳すると「大型ごみ容器の火災」ですが、その意味するところは「大惨事」です。これまでこの言葉はスポーツに関連する文脈で使われることが多かったようですが、2016年になり、11月のアメリカ大統領選に向けた選挙キャンペーンの状況(とりわけ、これまで政界での実績がまったくなかったトランプ候補[当時]が共和党の予備選挙にまで進んだ状況)を比喩する表現として、この言葉が多く使われるようになりました。ちなみにTwitterなどのSNSでは、🗑️🔥という絵文字で表されることが多かったようです。

Thanks to his leadership, our project was rescued from becoming a dumpster fire.

彼のリーダーシップのおかげで、私たちのプロジェクトが大惨事になることは免れた。

UK

post-truth

2016年に世界であった大きな出来事といえば、イギリスの欧州連合(EU)離脱決定とアメリカ大統領選でのトランプ氏の勝利です。この2点を背景に、この年はpost-truth(日本では訳語として「ポスト真実」が定着しています)という言葉の使用が急増しました。接頭辞「post-」は通常、それ以降の時間を指します。post-truthは「真実後」となりますが、この言葉を正しく理解するには、もう少し深い解釈が必要です。OEDによるこの言葉の定義は、「世論を形成する際に、客観的な事実よりも、感情や個人の信念に訴え掛ける物事の方が影響力を持つ」という状況。つまり、フェイクニュースなどを駆使して情報戦を展開する今は、「事実よりも自分の信じたいものを信じる時代」ということのようです。

In the post-truth era, information that appeals to the emotions is used to mobilize public opinion, even if it’s not true.

ポスト真実の時代では、たとえそれが真実でなくても、感情に訴える情報は世論を動かすために使われる。

Short List【2016】

大賞には選ばれなかったものの、最終選考に残った単語やフレーズも、その年を表す重要なものです。その中からいくつかをピックアップしてご紹介します。

US

woke

「覚醒する」を意味する動詞wakeの形容詞です。社会にはびこる不平、とりわけ人種差別に対して、「目覚めている状態」を意味します。従来どおりの「起きている状態」を続けるという意味ならstay awakeになりますが、「目覚め続けていよう」「意識を高く持とう」という場合は、stay wokeとなります。

“Stay woke” is another way of saying, “Keep the faith.”

「Stay woke(高い意識を持ち続けろ)」は「Keep the faith(信念を保て)」の言い換えだ。

gaslight

1938年の舞台『ガス燈』から来た言葉で、人を混乱させ、自分の正気を疑うように追い詰めて心理的に操作する手法を指します。日本語では「ガスライティング」と表現されます。2016年には、アメリカ大統領選の最中にトランプ候補(当時)がアメリカを「ガスライティングしている」とよく報道記事に書かれていました。

Her abusive husband had been gaslighting her for years, causing her to
question her own sanity.

口の悪い夫は何年もの間、彼女にガスライティングをしていたので、彼女は自分の正気を疑っていた。

tweetstorm

Twitterで、いくつものツイートを連投すること(連ツイ)です。この言葉は当初、複数のユーザーが同じ話題について一斉にツイートすることを指したようですが、メリアム・ウェブスター英英辞典やオックスフォード辞典では、1人のユーザーが連ツイすることと定義されており、今はこちらの方が主流のようです。

Tweetstorms can be annoying for your followers, so it’s a good idea not to do them too often.

連ツイはフォロワーにうっとうしく思われることがあるので、頻繁に行わない方がよい。

UK

adulting

これまではadultというと、「成人」を指す名詞と「成熟した状態」を指す形容詞の使い方しかありませんでした。しかし近年は、adultingで「責任ある大人らしい行動を取ること」という意味で使われるようになりました。日本語で「大人」というと、成人を指すのみならず成熟した人物や行動を指すのと似ています。

“I went to the bank and city hall to do a few small tasks today. Adulting!”

「今日はいろいろな手続きをするために銀行と市役所に行ったよ。大人だ!」

alt-right

ニュースによく登場した言葉です。日本語では「オルタナ右翼」などと表現されます。英語の発音をカタカナで書くとしたら「オルト・ライト」となります。これまでの保守的な政治を拒絶し、極めて保守的なイデオロギーを持ち、主にオンラインで活動する人たちのことです。

There’s lots of evidence that alt-right beliefs have been spreading on YouTube.

オルタナ右翼の信仰がYouTube上に広まっているという証拠がたくさんある。

hygge

日本語で「ヒュッゲ」と書いた方がピンとくるかもしれません。もとはデンマーク語ですが、OEDでは「充足感や健やかさを生じさせる、居心地よい快適な感覚」と説明されています。デンマークが「世界の幸せな国ランキング」で常に上位に位置するのは、ヒュッゲの時間を大切にしているからかもしれません。

Inviting family and friends to your house and having a warm, relaxing time will give you hygge.

家族や友人を家に招待し、温かくリラックスした時間を過ごすことはあなたに充実感を与える。

New Words【2016】

毎年、オックスフォード英語辞典(OED)に新しく掲載される単語は数え切れないほどあります。その中から、特に興味深いものを厳選してご紹介します。

vlog

動画でつづるブログ、という意味のvideo blogが短くなって生まれた言葉です。日本ではVlogと書いて「ブイログ」と発音することが多いようですが、英語ではアルファベットをそのまま「ヴログ」と発音するのが一般的です。

Vlogs can show more information than blogs, but they usually take a lot longer to post.

ブイログはブログよりも多くの情報を見せることができるが、投稿にはかなり時間がかかることが多い。

tldr

「ティーエル・ディーアール」と読みます。ネットスラングで、「Too Long; Didn’t Read」の頭文字です(TLDRとも書きます)。「~まで読んだ」や、ネット用語の「長文乙」のような意味ですが、長い投稿の「要点」のような意味合いで使われることもあります。

“Did you read that document for the next meeting?” “No, tldr.”
「次の会議の資料、読んだ?」「長過ぎて読んでない」

Westminster bubble

Westminsterとは、国会議事堂やバッキンガム宮殿があるロンドンの中心地です。ウェストミンスターやその周辺で働く政治家や公務員、ジャーナリストは一般大衆の感覚から外れているという特徴を表す言葉で、軽蔑的な表現です。

The people in the Westminster bubble have no idea about what’s happening in the country at large.

ウェストミンスターで働く政治家たちは、国全体で起こっていることを知らない。

「世界の新語・流行語」特集は『ENGLISH JOURNAL』1月号で!

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年1月号に掲載した記事を再編集したものです。

松丸さとみ

松丸さとみフリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に『限界を乗り超える最強の心身』( CCC メディアハウス)、『 FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』(サンマーク出版)などがある。
Blog:https://sat-mat.blogspot.jp/
Twitter: https://twitter.com/sugarbeat_jp