「TOEIC英語」を「ビジネス英語」にブラッシュアップするための3つのプロセス

TOEICスコアアップ200点請負人のJay(ジェイ)こと早川幸治さんが贈る連載「卒・TOEICの英語習得術」。第2回では、TOEICのために学んだ英語を、ビジネスで使える英語に転換させるための方法を紹介します。

第1回の記事「『TOEICハイスコアなのに英語が使えない』の真意を解き明かす」 で紹介したように、「ハイスコアを持っていても英語が使えない」の本来の意味は、「 TOEICのスコアを取るための勉強をしているだけでは、英語を使えるようにならない 」ということでした。

今回は、TOEICで身に付けた 「分かる英語」を「使える英語」へとブラッシュアップしていくためのコツ をお届けします。

そもそも 「ビジネス英語」って何?"> そもそも 「ビジネス英語」って何?

今回の記事タイトルにもある「ビジネス英語」という言葉はよく耳にしますね。NHK語学番組のタイトルにも入っていますし、書店の英語学習コーナーにも「ビジネス英語」とタイトルに付いているものが多くあります。この「ビジネス英語」という言葉に対するイメージは人それぞれですが、「ビジネス英語=難しい英語」と感じている方も少なくありません。「専門的な英語」というニュアンスで捉えている方も多いでしょう。

それでは、「ビジネス日本語」と聞いたらどんなイメージを持ちますか。あまり聞いたことがないので、はっきりとしたイメージを持ちにくいと思います。では、少し言葉を変えて、「ビジネスで使う日本語」という言い方にしたらいかがでしょうか。少し印象が変わったのではないでしょうか。でも、「ビジネス」という表現がまだ分かりづらいかもしれません。では、「ビジネス」を「仕事」と言い換えて、「仕事で使う日本語」としたらどうしょう。「会議や顧客とのやりとりで使う日本語」というように、かなり 具体的に なるはずです。

同様に 、「ビジネス英語」も実際には「仕事で使う英語」を意味しています。よって、「会議や顧客とのやりとりで使う英語」と言えます。このように定義を 明確にする ことで、「何となく難しいもの」というイメージではなくなります。そして、この 「仕事で使う英語=ビジネス英語」こそ、TOEIC L&Rテストに登場する英語 なのです。

TOEICの内容はたった2つだけ

TOEICの内容は大きく分けると2つだけ。たった2つです。それは、 「問題解決」と「情報提供」 です。なぜかと言うと、ビジネスや日常で言葉のやりとりをする場面は、この2つしかないからです。

これは、Part 1(写真描写問題)とPart 5(短文穴埋め問題)以外の全てのパートに当てはまります。Part 2(応答問題)の内容は、質問または報告とそれに対する応答です。Part 3(会話問題)の内容は、問題への対応か情報交換。Part 4(説明文問題)は、留守電、トーク、アナウンス、会議、宣伝、ニュースなどでの情報提供。Part 6(長文穴埋め問題)とPart 7(読解問題)は、本文の内容が問題解決か情報提供です。

社会人の方は、毎日の仕事を振り返ってみても、日本語でやりとりしている内容は「情報提供」と「問題解決」であることに気付くはずです。まさに、この2つのことができる英語力こそ、英語を使った仕事に求められているものであり、その理解度を確認しているのがTOEIC L&Rテストなのです。なお、TOEIC S&Wテストはさらに一歩進めて、「問題解決」と「情報提供」のために通じる英語を使えている かどうか 、活用できている かどうか を測るテストです。

ジャパネットたかたの人材育成と江戸・明治時代の語学の共通点

話は変わりますが、平成の通信販売王といえば、おそらく「ジャパネットたかた」でしょう。数年前に社長を退いた高田明さんの後任となったMCを育成する方法が、高田さんのトークを完全にコピー(完コピ)することだったそうです。

時代はさらにさかのぼって江戸時代は、英語よりもオランダ語が主流でしたが、通訳は世襲制。親から子へと外国語教育がなされていました。CDもYouTubeもない当時、身に付けるための唯一の方法が「素読」です。雑な言い方をすると、素読とは「完コピ」です。工夫すらせず、とにかくお手本をまねること。そうすることによって、お手本と同じレベルに到達できるのです。

また、武道や茶道などの世界では「守破離」という概念があり、これは戦国時代から安土桃山時代にかけての茶人、千利休から生まれたとも言われています。師匠のやり方を徹底的にまねることで基礎を身に付け、その後、応用へつなげるという上達のプロセスです。「守」で、見本をまねて、「型」を自分のものとします。まさに「完コピ」です。この時点で応用は要りません。その後、「破」で、「型」を応用します。さらに「離」では、完全に「型」から離れて自由自在となります。

だいぶ歴史をさかのぼってしまいましたが、どの時代においても、 「完コピ」こそが、実践で使える状態になるための最初のステップ であり、上達の王道なのです。よって、令和時代においても、ここに上達のコツがあります。TOEICの教材に登場する英語はどれも実際に日常的に使われている表現ばかりです。それを丸々「完コピ」できれば、「守破離」の原理で、実際に仕事でスムーズに使えるレベルに転換させられるようになります。

ゼロから生み出すよりも大切なこと

今まで使ったことのない表現をゼロから生み出そうとすれば、間違えて当然です。英会話を習うと必ず先生から言われることがあります。私もよく先生からこう言われていました。

Don’t be shy! Don’t worry about making mistakes!
私は、ほとんど英語を話せなかったころ、こう言われるたびに思っていました。

「もちろんそれが大事なのは分かる。でも、オレは間違えたくないわけではなく、 そもそも 英語で何と言えばいいのかが分からないのっ!」

本当に、声を大にして先生に言いたかった。でも、残念ながら、これ自体を英語で何と言えばいいか分からなかったのです(苦笑)。

そんな私のスピーキングが上がり始めたのは、「完コピ」をし始めてからです。

今、振り返ると、私のスピーキング力の上達の過程はまさに「守破離」でした。私が 英語を話せなかったのは、文法というルールだけで生み出そうとしていたから です。それを諦めて、まずは徹底的にまねをすることに決めました。スピーキングでもライティングでも、先生が使った表現をなるべく使うようにし、目にした表現をなるべく使うようにしました。すると、段々と応用が利くようになっていきました。言いたいことが言いやすく、書きたいことが書きやすくなっていったのです。まさに、グラスに注いでいった水が最後にはあふれるかのように、インプットしていった英語が、口からあふれるようになりました。そして、英語を使いこなすという状態へと進むことができたのです。

いよいよ「間違いを恐れるな」の段階へ

上記のような状態になりましたが、いつも正しい英語を使えるようになったわけではありません。「正しい英語を使いこなす」というのは理想ではありますが、その前に、私たちは全く間違えずに日本語を話しているかというと、おそらくそうではないでしょう。母語でも間違えているのですから、外国語ならなおさらです。いくらまねをして表現をたくさん覚えても、全く間違えないのは不可能です。

次のような場面を考えてみてください。あなたの 同僚 またはクライアントが外国人だったとします。その方と一緒に仕事をするとき、その方の正しい日本語が聞きたいと思いますか?もちろん、言っていることが全然分からない場合は問題ですが、それよりも内容の方が大切でしょう。それに、仮に日本語の使い方が間違っていても、正しい日本語を教えてあげようとはしないはずです。

私たちが英語でコミュニケーションを取る相手も同様です。相手は、私たちの「正しい英語」を聞きたいわけではありません。相手が聞きたいのは、私たちが話す内容です。絶対に間違いのない 正しい英語を話そうとするよりも、「多少、不自然でも、伝わる英語」の方が大切 です。

英語が使えるようになるためのTOEIC教材の活用法

伝わる英語が使えるようになるプロセスを、TOEIC教材を活用してつくり出すことができます。

まずは、TOEIC教材で学んだ英語を徹底的にまねすると、表現の基礎力が身に付きます。これが「守破離」の「守」です。すると、言いたいことや書きたいことへと応用が利くようになります。これが「破」ですね。

ただ、この「破」から自由自在に使いこなす「離」に移行するまでのステップでは、完全にインプットされている英語は正しく使えますが、使い方を応用する場合には、文法的な間違いがある英語や、「意味は伝わるけれどそうは言わない」という英語になるかもしれません。それでも 間違いを恐れずに使っていくことが大切 です。使えば使うほど、使うためのアンテナが張り巡らされます。そうすることで、「こういう場合にはこういう表現がよいのか」というように、 正しい表現に気付くようになり、徐々に正しく言えるものが増えていきます

実際にあったシーンを紹介します。ある日本人が、オーストラリア人と英語で打ち合わせをしました。その2人は、10年前に一緒に仕事をしたことがあったのですが、それ以来、仕事をする機会がなかったため、久々の打ち合わせでした。打ち合わせ中、オーストラリア人が日本人に言いました。

「あれ?あなたの英語、自然になったね」

実はこの日本人は、過去の私です。それまでに何をしたのかを振り返ってみると、毎日英語を使っているわけではありませんでした。それでも、表現が自然になった理由。それは、1つしか思い浮かびません。その理由こそ、TOEIC教材の音読をしたり、それを使って英語を話したり書いたりしていたことでした。

本棚で眠っている 解き終わったTOEIC教材は、「仕事で使う英語の表現集」に生まれ変わります 。「守破離」で、TOEIC英語を「仕事で使える英語」へとブラッシュアップしましょう!

早川幸治さんの本

早川幸治さんの新刊、GOTCHA!新書『TOEIC(R) L&Rテスト スコアアップの奥義』は、大好評だったGOTCHA!連載に、4章分や付録などの書き下ろしを加えて再編集した本です。TOEICから抜き出した、「仕事で使える英語表現」なども収録。読めば、TOEICとの付き合い方が(よい方向に)変わります!

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早川幸治(はやかわ こうじ)
ニックネームはJay。株式会社ラーニングコネクションズ代表取締役。企業研修講師として、英語を公用語化した企業はじめ、これまで全国の160社以上で研修を担当してきたほか、大学や高校でも教えている。セブ島留学プログラムも監修。TOEIC990点(満点)、英検1級 取得 。豊富な受験経験から 傾向 をおさえた効率的な対策法が好評。著書多数。アルクの通信講座「 TOEIC(R) LISTENING AND READING TEST 完全攻略600点コース 」監修。

編集:GOTCHA!編集部/写真:山本高裕(GOTCHA!編集部)

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