今、注目の「働き方改革」。残業が無くなる、雇用形態による格差が無くなるなど、いいことがたくさんありそうですが、急激な変化に戸惑っている人も多いのでは?異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタント、ロッシェル・カップさんに、よくある悩みを相談してみました。
目次
本業に影響が出そう。副業はいいこと?
40代の管理職です。
働き方改革の流れで、わが社でも副業を認めることになりそうです。部下の中にも関心を持っている人がいますが、私は本業に集中するべきだと思います。副業のために仕事を休んだり、手を抜いたりする人が出てくると困ります。副業を認めるのはよいことなのでしょうか。
カップさんからの回答
最近、日本で副業が話題になっているということを聞いて、正直少し驚きました。日本人はすでに働きすぎているので、本業の他に別の仕事をするのはますます過労を招くのではないかと思いました。日本人は本当に仕事が好きなのだと感じた出来事でもありました。
それが私の最初の印象ではありましたが、よくよく考えてみると、副業は日本人にとっていいことだと思いました。もちろん、やりたい人とやりたくない人はいると思いますが、やりたい人にとってはさまざまなメリットがあると思います。
日本人が副業を持つメリットは?
副業を通してさまざまな発見ができる
日本企業の人事管理の特徴は、従業員がどんな仕事をするかを自分で選ぶのではなく、会社が一方的に従業員を職務に配置することです。その結果として、どんな仕事が好きなのか、どんな仕事をやりたいのかを主体的に考えることがないので、従業員は消極的になってしまいます。
その状況は企業にとって都合がよいかもしれませんが、従業員側は自分がどんな仕事が本当に好きなのかを知ることができません。
一方、副業は自分で選ぶものなので、そうすることによって自分に合う仕事を見つけるスキルを強化できます。また、自分で選べる副業であれば、もしその仕事があまり好きになれなくてもすぐやめられます。
このように、より自由に働くことによって、さまざまな発見をすることができます。
本業とは違うスキルが身に付く
副業をするもう1つの利点は、それをすることによって本業と違ったスキルを身に付けられることにあります。
例えば、副業として週末や夜に趣味に関連したレッスンを提供する人は、プレゼンテーションの技術を身に付けられます。
あるいは、副業として自分が作ったアート作品をオンラインで売る場合には、ウェブサイトの作成やデジタルマーケティングを学ぶことにもつながります。
さまざまな可能性があり、新しいことに挑戦して新しいことを学ぶのは自身の成長につながります。もしかするとその新しい学びをいつか本業にも利用できるようになるかもしれません。
そうでないにしても、学ぶこと自体に頭脳を刺激する効果があるので、その意味でも従業員にとって良いことだと言えるでしょう。
ダラダラ残業するよりずっといい
さらに副業の利点として挙げられるのは、それをすることでさらにお金を稼げることにあります。最近、日本企業は給料をあまり上げないし、もともと若い社員の給料が低いという問題があります。
仕事をダラダラこなして職場に長くいることで残業代を手に入れようという今までよくあった習慣と比べて、昼間に効率よく仕事をし、残業せずに定時に帰宅してから好きな活動(副業もを含めて)をするというのは、ずいぶんと望ましいことなのではないかと思います。
最後に、最近の日本の社会では、定年退職した人が何をすればいいのか困っているという問題がよく取り上げられています。しかし、もし副業があれば、本業を退職した後でも続けられますので、老後の生活を充実させることにつながります。
部下の副業をどう受け止める?
部下のプライベートを気にしない
こういった理由が挙げられるため、副業はとても良いことだと思います。でありながら、副業をしている部下の上司としての懸念も十分理解できます。それに対してここでお答えしたいと思います。
基本的に私がお勧めするのは、部下が副業をしていることを必要以上に意識しないことです。
どんな部下でも、仕事以外のプライベートライフがあります。
親であれば子どもがいます。独身であれば合コンや婚活があるかもしれません。何かのスポーツをしていたり、老後の親のケアをしていたりすることもあるかもしれません。
どんな従業員でも仕事以外の個人活動をする権利がありますが、同時に仕事に支障が出ないよう気を付ける責任があります。
副業はそれらと同じです。副業は従業員が自分のプライベートタイムにするもので、ほかのプライベートな活動と基本的には何ら変わりはありません。
時間ではなく成果で評価するべき
会社には、従業員の時間を100%占有する権利はありません。従業員が本業をしているときは本業に集中して、オフのときには副業を自由にすればいいのではないでしょうか。
休暇中に何をするかは従業員の自由なので、与えられた時間をどんな目的に使うのかは会社が管理する必要もないし、知るべきでもありません。
上司にとって大切なのは、従業員を働いた時間で評価するのではなく、仕事の目標を達成したかどうかによって評価することです。そのために必要とされているのは、従業員に何を期待しているかを明確にすることです。そうすることによって、もし手を抜いている人がいれば即座に把握することができます。
大切なのは、従業員に期待するアウトプットを客観的に測ることです。副業の話に関係なく、一般的にそれは必要なことだと思います。
もうサムライの時代ではない
サムライがいた時代は、サムライは殿様に人生を託して、24時間全力を尽くすことが期待されていました。
残念ながら、現在の日本の企業人の多くは、仕事に関してこのような考え方を持っています。こんな中世的な仕事の考え方から脱却して、従業員の仕事とプライベートの両立を可能にする考え方を持つようにしましょう。
ロッシェル・カップさんの本

- 作者: ロッシェル・カップ,到津守男,スティーブ・マギー
- 出版社/メーカー: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
- 発売日: 2017/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る

ロッシェル・カップが語る アメリカ人部下の人事管理法 Effective human resource management in the U.S. アルク はたらく×英語 シリーズ
- 作者: ロッシェル・カップ
- 出版社/メーカー: アルク
- 発売日: 2016/07/15
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る

反省しないアメリカ人をあつかう方法34 (アルク はたらく×英語シリーズ)
- 作者: ロッシェル・カップ
- 出版社/メーカー: アルク
- 発売日: 2015/12/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)、『英語の品格』(集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。
編集:GOTCHA!編集部